第3話、律動


 韻律は「周期的な音楽性」即ち「リズム」のためのものだと前話で述べました。五七五も、脚韻も、対句も、反復も、全ては周期性・リズムを生み出す技法と言えるでしょう。

 これらは「律動」と「反復」の二種類に分けられます。律動は音節数やアクセントの並び方に秩序を与えることによるものです。一方、反復は押韻や対句など「言葉や音素を繰り返す」ことによるものと言えるでしょう。

 この話ではまず「律動」について語っていきますね。

 みなさんは「どうして音数を五七五に揃えるとリズムが生まれるんだろう?」と考えたことはありませんか。――俳句だって、短歌だって、どうしてこうも中途半端な数なのか。

 そこには「休符」が大きく関わっているんです。取り敢えず下記の文を実際にでも脳内ででも構いませんので音読してください。


「夜が来て、小さな声で祈るのは」


 私が以前書いた詩の一節ですが、ちょうど五七五になっていたので引用します(注14)。これを平仮名にしつつ、実際に読むときに生まれる休符も挟んだ状態で書き直してみましょうか。


       


 傍点一つで八分音符に相当すると考えてください。つまり、


「タンタンタ(ウンウ)タンタンタンタ(ウ)タンタンタ(ウンウ)」


 と手拍子できます。――そうです。五七五は、四拍子のリズム三小節分であると考えることができるんです。前話でお話した「詩は音楽と密接に関わっている」というのはこういうことでもあるんですね。ここらへん解き明かそうとすると義務教育程度の音楽の知識はまず必要になるので。

 ともかく、律動リズムの正体はそのまんま拍節リズムだった、というわけですね。これを応用すると色んな律動を自分で導き出せるようになります。

 例えば、三拍子の律動を作りたい、となれば


「燃え盛る/熾の火が/喉元を/蝕めば/地獄へと/落ちて行く」(注15)


 と書けます。休符は一小節につき八分休符一つくらいが妥当でしょう。「タンタンタ(ウ)タンタンタ(ウ)……」というわけですね。「タンタンタ(ウンウ)」とも読めてしまうのですが、これは読み方の問題なので、説明や朗読音声を添えることで解決すべきです。

 他にも様々な律動を作れます。組み替えられるのはまず「タン」の部分――つまり最小単位である八分音符の集合です。八分の六拍子は、ここを「タンタ」に変えて六四調を作ることで表現できます。次に変えられるのは「タン」を何度繰り返すか――つまり何拍子にするか。五拍子のリズムを作りたいなら「タンタンタンタンタ(ウ)」と九音を基調にすればいいわけですね。

 では、そもそも「リズム」とは何でしょうか? 辞書(注17)を引くと「(1)音楽で、一定の規則をもって繰り返される、音の長短・強弱・速度などの組み合わせ」「(2)物事が規則的にくり返されるときの、周期的な動き」「(3)詩の韻律」とあります。また「周期的」とは「ほぼ一定の時間をおいて同じことがくり返されるさま」であると出てきました。五音と七音による四拍子の音楽はまさにそれであると言えましょう。


(注14)藤田桜「夢路のおそれ - 抒情小曲集」カクヨム

https://kakuyomu.jp/works/16816700428723200791/episodes/16816700428723382090 (2022年3月7日 参照)

(注15)藤田桜「かえる姫 Corderia の物語詩」小説家になろう

https://ncode.syosetu.com/n0057hj/ (2022年3月7日 参照)

(注17)「明鏡国語辞典MX」(大修館書店 (C)KITAHARA Yasuo and Taishukan,2008-2011)

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