第46話 動き始める世界

 ◆とある王国◆


「うふふ。この王国も終わりだね」


「ふん。ウィーク王国での失敗は何とかなりそうだな」


「仕方ないわ~あの召喚士くん強かったもの~」


「…………あいつが【壁】を越えたら大変だぞ? 本当に生かして良かったのか?」


「もちろんだよ。ねえ? 間違っても召喚士くんに手は出さないでね? 私、本気で怒るわよ?」


「心配するな。団員達にも通達しておる」


「うふふふ。強くなった召喚士くんの心を折って、私のコレクションにしたいわ~!」


「くっくっくっ。お前に目を付けられたあの男も可愛そうだな――――――絶望のルレイヤに目を付けられるとはな」


「ふふふっ。私もの壁を越えておこうかな~」


「あの召喚士と戦うなら、越えておいた方が良いだろうな。越えられるならな」


「えへへ。越えられるわ~」


「ふっ。最後・・の壁を簡単に超えられるというのは、お前くらいだよ――――――人類最強さんよ」


 男の言葉に、ルレイヤがあどけない笑みを浮かべる。


 そんな彼らの前には、多くの兵士達の亡骸が転がっていた。




 ◇




 ◆とある遺跡◆


「スキル、風神衝撃!」


 彼女が放った大きな竜巻が目の前の大型魔物に直撃する。


 巨大な身体が竜巻でボロボロになり、その場に倒れ込む。


「さすがだな。お嬢」


「ふぅ。まさかフロアボスが出るなんて、驚いたわ」


「何か良からぬ事が起きようとしているのかも知れない」


「そうね…………最近【デモンシーズン】も活発に動いているものね」


「そうだな。例の国に【デモンシーズン】が潜入しているとの連絡もある」


「え!? どうしよう…………あの子は大丈夫かしら」


「そういや、旦那さんから手紙が届いていたぞ?」


「本当!? 最近忙しくて全然帰ってないから~手紙楽しみだな~」


「悪いな。人手不足が深刻だからさ」


「知っているわよ。だから謝らなくていいわ。それにあの子ももう大人なんだもの。姫なんて言われているけど、ちゃんと実力があるから。まあ……ルレイヤに当たらないといいけど」


「ルレイヤか…………傷は大丈夫か?」


「ええ。傷はもう完全に治ったわ。それにしても、聖女様は一体どこにいらっしゃるのだろうね」


「それもそうだな。聖女様が生まれたのは間違いないんだが…………どこの教会でも【聖女】は生まれてないと言っている。生まれているなら噂になるはずだろうし」


「全く嫌になるわね~【デモンシーズン】にルレイヤが加入しちゃうし、聖女様はどこにいらっしゃるのか全く見当もつかないし~」


「ふふっ。だが悪い事ばかりではない」


「ん?」


「旦那さんから手紙が来たという事は、きっと良い知らせがあるかも知れないだろう?」


「そうね。あの人の事だもの。また弱いふり・・でもして、新人教育でもしているのかもね~」


「全くだ! 炎神王に風神姫に雷神姫が揃ったし、まもなく水神も見つかるだろうよ」


「そうだといいんだけどね~あ~帰ったら娘と一緒に紅茶が飲みたいわ~」


「はいはい。取り敢えずベヒーモスはこちらで請け負うから、ゆっくりしてくれ」


「は~い」


 彼女は軽い足取りで巨大な魔物から去って行く。


 男は周囲に合図を送ると、茂みの中から全身黒いタイツの男達が出て来て、男の指示により、巨大な魔物であるベヒーモスを解体し始めた。




 ◇




 ◆とある帝国◆


 豪華な玉座にふんぞり返る太った男は、目の前に騎士を睨んでいる。


「アーサーよ。例の剣はまだ見つからないのか?」


「申し訳ございません。父上」


「ふむ…………お前が【勇者】として成長する為には【聖剣】を手に入れなければならない! 一刻も早く剣を手に入れてこい!」


「ですが、父上。【聖剣】の行方は全く掴めません」


「くぅ…………教会はなんと?」


「それが、【聖剣】に強大な闇が取り付いており、探索が不可能だと……」


「はぁ……教会も使えないのぉ…………あれだけ大言だいげんしておいてな」


「それに聖女様も全く見つからないそうです」


「帝国内は全て調べ尽くしておる…………となると隣国なのかのう」


「例の集団に連絡は取らないのですか?」


「あ~あいつらは無理。教会よりも権力を持ってるし、わしでもそう簡単に命令は出来ん」


「さすがは【ライトニング】でございますね……」


「そういや、数日前に風神姫が回復したとの事だな。一度会って相談してみるといいだろう」


「そうしたか! それなら早速風神姫に会ってきます!」


「頑張るのじゃぞ~」


 美しい金髪をなびかせて玉座の間を後にする息子を、玉座からふんぞり返って眺める帝王は溜息を吐いた。


 もう少し育ってくれたら帝王の座を渡せるのにと思っているが、【勇者】としての試練が残っているので、それも叶わない。


 本来なら玉座に座っているだけで不安を覚えるくらい内気な性格で、たまたま先の戦いで兄が戦死してしまい、仕方なく帝王の座に座っているだけなのだ。




 ◇




 ◆とある冒険者達と魔道具師◆


「ここです!」


 急いで魔道具師を連れて来た冒険者が指を指す。


 辛そうに息を吐く魔道具師の息が整うまで待つ冒険者達。


「ふぅ……お待たせしました」


 ソワソワしている冒険者達は山の奥にある洞窟の中に魔道具師を連れて入る。


 周りには魔物の気配は全くなく、その周囲には真新しい戦いの跡がある。


「それにしても激しい戦いだったんだろうね」


「でしょうね……何分彼の召喚獣ですから」


「ふふっ。彼は元気にしているのでしょうか」


「今頃またどこかの貴族様を懲らしめているかも知れませんよ?」


「あはは~正直私もそう思ってしまいます」


 冒険者達と魔道具師は共通の知人を思い出して笑みを浮かべる。


「さて、ここです。覚悟してくださいよ」


「ええ。最初は信じられませんでしたが、みなさんの事ですから、信じております」


 洞窟の奥をゆっくり進んだ先に、とても人為的に作ったにしては信じられないほどの広い場所が出て来た。


「こ、これは!」


「どうです?」


「間違いありません! これは神々が残した遺産に違いありません!」


「おお!」


「よく見つけてくれました!」


「これも彼がこの山の魔物を一掃してくれたおかげですね」


「ですね! さっそく冒険者ギルドに報告しましょう。この場所を見張る必要も出てきますから」


「分かりました。冒険者ギルドは俺達に任せてください」


「ええ! お願いしますね!」


 魔道具師は目の前に広がっている光景に熱くなる胸を抑えるのに精一杯だった。





――――【1部終了の知らせ】――――


 いつも『チートスキル転生召喚士~召喚士はハズレだから冒険者になれないらしいので、一人で最強パーティーを組んで無双します~』を読んでくださる読者様ありがとうございます!


 ここで1部の終了になります。


 2部からはコミカルな雰囲気から少しシリアスな雰囲気が追加される予定です!


 それと投稿頻度になりますが、とあるコンテスト用作品の準備も兼ねて、少しの間だけ止めさせて頂きます。既に完結までプロットは完成しておりますので、時間が確保出来次第、もりもり書いていきます! 暫しの間、お待ちしてくださると嬉しいです。


 では暫し再開までお待ちくださいっ!




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チートスキル転生召喚士~召喚士はハズレだから冒険者になれないらしいので、一人で最強パーティーを組んで無双します~ 御峰。 @brainadvice

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