世界設定その14 『文字』
この物語には数多くの国や地域、種族が存在します。
もちろん物語は日本語で記されていますが、それぞれの種族や地域で使用されている言語は異なっているわけです!
話し言葉は数多くの場合で現地に留まっていますが、文字は商業的な理由も伴い大陸各地に伝搬しています。
商売の取り引きで使うため、多くの地域で使える文字が発達していったわけです。
今回は、この物語の大陸で使われている文字についてご紹介していきます!
・大陸文字ファルジャド
表音文字であり、アルファベットのように音素表記の文字です。
発祥は1300年ほど前になり、大陸の中海地域で発達しました。
文字の『形』としては、表記の画数が少な目で、線により記されます。
文字の数がアルファベットのように少なく、簡易で使用・学習に適していたところから文化的にも経済的にも大陸古代世界の中心であり頂点であった『古王朝』で公式文字として認定されました。
多くの亜流文字を生み出していますが、基本的にファルジャドを学んでいれば大陸で使用されている文字は読めるようになるほど、支配的な文字として千年以上をかけて大陸に君臨していきました。
『古王朝』は学問と知性を尊ぶ傾向があり、亜人種を含み多くの知識人を遠方からも好待遇で招いていました。
共通の文字があれば彼らの知識人の間で研究やコミュニケーションも進みやすいということで、商業的な理由で発明された以後は、より言語体系として整備されていきます。
ファルジャドは『古王朝』で学んだ知識人がそれぞれの地元に戻り伝えていったことで、経済的に重要ではない土地でも広まるようになりました。
また、ファルジャドを普及するための大きな力となったものが、『古王朝』で盛んだった演劇です。
『古王朝』では多くの物語を大陸各地から集めていましたが、演劇は基本的にセリフで物語を説明する娯楽であるため、精密にセリフを伝えることも重要視されました。
ファルジャドが使われたのは、『古王朝』からすれば異国的で不思議な響きのある単語を音として楽しむことに適した記述であり、音を保存することに長けた文字であるファルジャドが愛用されていきます。
『この言葉はこう話す』というものが文字としてのテーマです。
ファルジャドでは言葉を精確に保存しようという試みが学者たちにより研究されていて、口の動き、呼吸の量、歯の開閉具合、などなど、発声のための技術的な特徴が反映されています。
役者たちにとっては、未知の単語もある程度の完成度をもって発音することが可能となるため、演劇においては練習方法としても優れた文字だったのです。
こうしてファルジャドは娯楽物語の表記としても主要な地位を占めるようになったため、商業、学問、そして娯楽という三層に渡り伝搬能力があったため大陸全土に広まっていきました。
・古代ドワーフ文字
おもにドワーフたちが使用する文字です。大陸中央部を走る山脈で使用されていたものが最古のもので、表記は楔形文字になります。力強さがあり、岩や金属に刻まれることが好まれました。
ドワーフたちの王国はいずれもガンコであり、独自性が強いものが多く、時代と共に数多くの亜種が誕生していきましたが、古代ドワーフ語はそれらの元祖とも言われるものです。
楔形ではありますが、象形文字であり、複数の切れ込みのような字画の連なりで自然現象や人の行動が表現されているものです。
とても精密な表記が求められているため、ドワーフの手先の器用さや職人的な気質には適していました。
また、装飾のスタイルが各王国により異なり、競い合い、差別化したいという願望も叶えていき、画数の多い複雑な形式の文字へと、ドワーフ語は変わっていきます。
簡単に言えば、書くために必要とされる文字数が多くなっていきました!
その結果、他国との文化交流が妨げられる一方で、独自の文化の保全に役立ちはしました。
無数のドワーフ王国が誕生する結果に寄与しています。
『何をどう行えば我々なのか』というテーマを表現しようと、細かく長い描写を用いることが敬愛されている文字です。
なお金属加工についての秘伝の多くが古代ドワーフ語で記される傾向があるため、鍛冶に対する研究が盛んな国や、武器を多く作る土地では今もって保全・研究されています。
古代ドワーフ語を読み解ければ、往古の時代の職人たちの失われた金属加工の技術や奥義を獲得できるかもしれませんが、その修得は複雑であり、いくつかの口伝が補強する形で伝わってもいるため技術の再現は難しくはあります。
とはいえ鍛冶、製鉄の研究を伝える本では、古代ドワーフ語が好まれて使われています。
また岩に記されたものも多いため、比較的、古い文章自体を見つけることが容易かったのです。力強く無理やり保全されていく文章でもあります。
・古代エルフ文字
エルフが使用していたとされる文字。発祥は大陸の北西部になります。
狩猟を好んだエルフたちが大陸の森を伝って、東部に広まっていくのと同時に古代エルフ文字も広まっていきました。
文字の表記は象形文字であり、狩猟と農耕で得た知識と伝統を表そうという試みにあふれた文字体系です。
『この場所はどんなところなのか』という空間描写を強く表現しようとした文字になります。
動物や自然現象をモチーフにした文字が多く使われて、季節や気象など自然における変化の探究に対して繊細な感度を有しています。
動物や花の絵を崩して作った文字であるため、多くの曲線や絵画的な表記が好まれています。漢字のように、象徴的な文字を組み合わせて、異常なほどに多くの文字で自然を表現し尽くそうという文字であり、結果として修得が困難です。
ただし、いくつかの特徴的な形を覚えておけば、何となく意味が通じなくもない、という文字でもありますが、農耕技術や文化の伝承を、異文化圏に対して情報として広める能力は高くはありません。
とはいえ、優れた農業技術を伝える文字であったため、また自然との対話を極めた結果に生まれた詩的な美しさも文学として評価されもしたため、古代エルフ語は研究され保全されている文字にもなっています。
文字数を少なく記し、なおかつ美しい表現であれば好まれるという評価がされています。
・鳥文字
大陸北部、北の海に触れる地域の全体に伝わる古い文字です。
鳥のくちばし、翼、羽根、尾、飛行の仕方、風や雲の形などの気象現象などの表現を好む象形文字であり、空との対話が不可欠な荒々しい気候の地域で発達して、今でもこっそりと伝わる文字です。
他の古代からの言語に比べて、実に感覚的であり、各地の文化的・伝統的な価値観がなければ把握することが困難なほど、分化が多くなされているものになります。
公用語として用いられることは、他国との貿易で絶望的な不利に直結、もはや経済的な没落も意味するものです。
シャーマンなどの祭祀を行う者や、伝統の継承者、あるいは竜騎士のように空と対話することが必須なものでもなければ好んで使用することはありません。
またソルジェのように無学な者は鳥文字の存在も理解していません。
社会的には無くても困らない文字とされていて、知識人が小ネタとして聞いたことがあるレベルの存在感と実用性しか一般的には持っていません。
ソルジェの使用している竜騎士の暗号の基礎となっているものは、ガルーナ式の分化を果たしたうえに、ストラウス家が竜騎士としての価値観を伝えようと独自に改造した鳥文字です。
さらにはソルジェ本人の価値観や経験も反映されてバリエーションが個性化して、竜騎士の価値観でなければ読み解けないような暗号として使われました。
『空とはこうである』が、文字としてのテーマです。
なお、より海に触れ合うことの多い地域では『海とはこうである』というテーマになり、波浪などの情報や死生観の置き場所が変化します。
職業的にそれらと対話することが必須となる者にとっては、一定の経験値を獲得していれば、多くの知識を引き出せる文字になりえるものです。
また意識しなくても潜在的な文化として、各地でこっそりと精神・宗教・文学的な支配を発揮してもいます。
設定資料集 元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。 よしふみ @yosinofumi
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