世界設定その13 猟兵の基礎的戦闘技能・装備
この物語に登場する猟兵たちは器用な行動を取ります。
ファンタジー世界の住人たちとすれば、ある意味では先進的な技術も多く持っていますが、具体的にはどんなものがあるのかをご紹介です。
・緊急医療
猟兵全員が重傷者の治療を行えます。得手不得手はありますが、戦場で負いうる外傷に対しての応急処置と、それ以上の治療も行えます。
主に先代団長であるガルフ・コルテスから伝授された治療法が大きいですが、リエルの加入により『森のエルフの秘薬』という効能の大きな治療薬を手にしたことで、『パンジャール猟兵団』全員の治療技能が向上しています。
傷口を縫うことは、ガルフが各地でお針子を教官として呼び寄せ、ソルジェたちに縫う技術を教え込んでいきました。傷口は縫えばいい。止血の基礎になります。
・『森のエルフの秘薬』
リエルが全員に持たせている装備その1になります。『止血の秘薬』と『造血の秘薬』が主にあり、これらを使いこなすことで傷を負っての失血性ショック死を遠ざけることが可能となっています。
・解剖学知識
ガルフ・コルテスは猟兵たち全員に、解剖学を学ばせました。
理由は二つあります。
一つは肉体の構造を知り尽くすことで、攻撃のさいにより殺傷能力を高められると考えたことです。猟兵たちは武術の伝統に基づく急所を狙うわけではなく、医学的な急所を把握しているため、より殺傷能力は高まっています。
もう一つの理由は外傷時の緊急措置の治療成績を向上させたいためです。有能な猟兵が育つ前に死ねば、ガルフ・コルテスにとって大きな損失であったため。とにかく生き抜いて欲しいと願っていました。
医療技術は猟兵に使われるというよりは、周囲の友軍戦士に使われることが多くあります。
ともかく人の構造を把握したことで、攻撃にも治療にも、ヒトの行動の理解力にも精通する戦士が完成していったのです。
・『エンチャント武器』
リエルが猟兵全員に持たせている装備その2になります。『雷』の魔力を帯びたナイフでは、電撃で麻痺を。『風』の魔力を込めたナイフでは脱力の麻痺を。『炎』の魔力を帯びた矢では爆破などが可能となります。
アイデア次第で様々な運用が可能となり、猟兵たちが本来は持っていない能力も使えるため重宝されるアイテムになるわけです。
・『目くらまし爆弾』
シャーロン・ドーチェが開発した爆弾です。殺傷能力を削ぎ落とし、とにかく強い音と光で威嚇と目くらましを行うだけの爆弾になります。
人を死に至らしめることは全くもってできませんが、その名にふさわしく目くらましの能力はとても高いものがあり、自分たちより多くの敵と戦うことが常である猟兵にとっては大きな切り札となっています。
・通常爆弾
爆弾作成を好む、猟兵ギンドウ・アーヴィングが作って全員に配る小型の高性能爆弾です。
恐ろしく精密な作りをしており、爆薬の質も密閉する容器の完成度も常軌を逸したものとなっています。
使用も目的は敵に向かって投げて、爆発させて死傷させます。普通の爆弾ですが、火力は十分。
・懐中時計
同じくギンドウ・アーヴィングが作成し、猟兵たち全員に持たせている装備になります。
恐ろしく精密な作りであり、時間のズレはほぼない。天才的な時計職人である養育者兼師匠から託された確かな時計技師としての技術をギンドウは持っています。
普通に時計技師として働けば、巨万の富を築けるほどの腕前を持っていますが、本人は職人的な努力を好んではおらず、好きなことをして暮らしたいと願っています。
とはいえ、面倒見の良い性格ゆえに、仲間のための懐中時計を作ることは好んでいます。
この懐中時計と爆弾を組み合わせることで、精密な時限式爆弾を組めます。
その精密に計算された爆発を、作戦に組み込むことでさらに効果を高めることが可能となるわけです。爆発に敵を誘導し、その隙に敵の基地内に忍び込むなど。
少数精鋭である『パンジャール猟兵団』において、時限式爆弾や離れていても同時に作戦を開始することが可能となるギンドウの懐中時計は、大きな戦力なのです。
・猟兵武術
ガルフ・コルテスが独自に編纂した近接格闘武術です。徒手空拳の暗殺体術と、対武器での戦いにおいての各種の小技の数々があります。
解剖学を修得したことで、ガルフは護身用の武術に殺傷能力を与えたものを開発、猟兵全員に伝授しています。
とくにミアにはその全てを継承していて、暗殺蹴り、肘や膝を使った頸椎骨折狙いの致死性カウンター、各種の締め技、ナイフを使った暗殺術等々となります。
解剖学を完璧に理解した武術の達人の徒手空拳の技術は、とても殺傷能力が高いものとして完成しました。
・臨機応変
ガルフ・コルテスは何か一つに優れているという戦闘能力ではなく、駆け引きと臨機応変な技能で勝利して来た傭兵です。
そのため、彼が猟兵たちに伝授した戦い方の多くはアイデアが多く使われたものです。
爆薬に対して『風』を合わせて使うことで、爆風の威力に指向性を持たせ威力を数倍以上にしてしまう。
閃光弾を炸裂しているうちに逃げる/もしくは攻撃してしまう。
毒薬を風に乗せて、敵集団を毒する。
相手を操る交渉術、呼吸や目の動きなどの態度から敵の思考を読む方法。
人が戦場で見せる反射的な行動のほとんど全てを予測し、逆手に取る方法。
呼吸も魔力も完全に消して、隠遁する。
正統派の武術家や魔術師では、どちらかと言えば忌避するような裏技のような行いでもありますが、戦場で生き抜くことが第一のガルフにとっては、気にすることはありません。
お針子、解剖学者、あらゆる職人、演劇の教本などなどなどなど……ガルフはその人生において、技巧や知識に対する敬意と収集を怠らず、多くの師や事柄から学び続けた猛者なのです。
その結果として誕生したユニークながら有効なスキルの数々。その多くをガルフは猟兵たちに遺し、それはソルジェたちを支え続けることになります。
怪物のような天才的な強者たちに、『雑魚が作り上げる天才をも淘汰するアイデアの冴え』を見せて継承させたことは、攻守の面で猟兵たちの財産となりました。
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