アイドルだって恋愛したい!
折上莢
第1話 出会いは唐突に
「は〜〜〜〜〜〜〜! 夕陽くんかっこいい〜〜〜〜〜〜!」
「はいはい」
スマホの画面を見ながら恍惚の息を漏らす陽菜に、私はもう慣れたようにあしらう。
陽菜が夕陽という男性アイドルにハマったのは先月。今ではもう立派な夕陽オタクだ。CDにライブDVDにアクリルスタンドに缶バッジにタペストリー。陽菜がこの一ヶ月間で集めたグッズである。昨日陽菜の部屋に行ったが、四方壁がタペストリーとポスターで埋め尽くされていた。カラーボックスの中にはアクリルスタンドや缶バッジが綺麗にディスプレイされて飾られていて、ザ・オタク部屋という感じ。正直ちょっと引いた。
「それにしてもなんで急にアイドルに? この前までそんなことなかったじゃない」
「私は夕陽くんと運命的な出会いをした」
「はいはい運命ね。具体的にはどういう?」
スマホから顔を上げた陽菜はにこりと笑う。
「実はねー…夕陽くんに会ったんだ!」
「…会った?」
「そう。道で迷子になってたからスタジオまで案内したの! そしたら手握られて、『好きです!』ってファンサもらっちゃって! もう運命だよね!」
私は自分の眉間に皺が寄るのを感じる。
それは果たして、本当にファンサか? どちらかというとそれはナンパだ。まごうことなきナンパだ。
「…ん?」
「どうしたの? 明穂」
いやいや待て。仮にもアイドルがナンパなどするか? 下手をすればイメージダウンにも繋がりかねない。テレビで見る夕陽くんは清純派で正統派なアイドル。問題を起こすようには見えない。
その夕陽くんは、本当にアイドルの夕陽くんか?
「…連絡先とか、交換してないよね?」
「え? したよ」
「したの⁉︎」
「あ、でも私からは連絡してない! っていうかできてない! 恐れ多くて!」
天然なのか、アホなのか。どこか抜けてる陽菜に頭を抱える。
「それ…本物なの…?」
「そりゃあ! あんなにイケメン、そうそういないでしょ」
からりと笑う。私は机に突っ伏した。
アイドルだって恋愛したい! 折上莢 @o_ri_ga_mi_
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