第8話 もう一人のエピローグ

 今、私の手には冬馬からのプレゼントと手紙がある……


 私を残して一人で逝ってしまった冬馬からのプレゼント。


 亡くなる直前に美鈴さんから渡された。もし、自分が渡せるほど元気じゃなかったら、渡して欲しいって頼まれたんだって。


 冬馬、冬馬……


 何でよう、何で一人で先に逝ったの……


 私の声が届かなかった……


 一人、部屋にうずくまり、泣いては考えて、考えては泣いてを繰り返していた。


 そしたら、美鈴さんが部屋にやって来て、まだ読んでない冬馬からの手紙をみて、泣きながら私に言った。


「弥生ちゃん、読んでやって。息子の気持ちを読んでやって欲しいの…… お願い……」


 私はハッとして、美鈴さんを見た。悲しいのは私だけじゃない、美鈴さんだって、私以上に悲しい筈なのに……


 私は手紙を開いた。そこには冬馬からの愛が溢れていた。



 弥生へ


 この手紙を弥生が読んでいると言う事は、僕は負けてしまったんだね。

 ゴメンね。弥生の声はちゃんと届いてたよ。


 初めてだけど、ここに弱音を書くよ。


 本当は死にたくない。

 コレからも弥生と一緒に生きていたい。

 結婚して、子供が出来て、お互いにしわくちゃになるまでずっと一緒にいたい。


 でも、叶わなかったんだね。

 ごめん、ごめん、ごめんよ。

 弱虫な僕でゴメン。


 病気に負けてしまい、弥生を残していってゴメン。


 でも、コレだけは言わせて。

 弥生には幸せになって欲しいって思ってる。

 だから、もしも時が解決して、僕の事が思い出になった時には、ちゃんと恋をして、結婚して


 そして、お婆ちゃんになって、それから僕に会いに来てよ。自慢話を沢山聞かせてよ。


 それまで、僕は待ってるから、見えないけれども、君のそばでずっと一緒にいるから。


 ずっと、愛してます……





 私の号泣が部屋に響いた。

 何で謝るの、冬馬は何も悪くない!

 私は冬馬が幼い私にしてくれたように、手紙を優しく撫でて、涙があふれるままに泣いた。


 




 冬馬が亡くなってから、私は何十年もの間、幸せに暮らした。


 だって、約束だから。ちゃんとお婆ちゃんになってから冬馬に会いに行くって。


 冬馬はいつもそばに、一緒にいてくれた。私はもう少しで冬馬に会える喜びに、首から外して貰ったネックレスを手にしたまま、自慢話が沢山あるわよと微笑んだ。

 

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何時だって一緒だった しょうわな人 @Chou03

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