第七話 汚い女と言ったのをお忘れですか?

 ザックとの婚約の話を報告するために、カミラは数日ぶりに屋敷に戻った。


「おぁ、カミラ! いいところに帰ってきた! 実はバルナーツ君がカミラに会いにきているのだ。大事な用らしく、昨日の晩からずっと待っていたんだ」


「バルナーツ様ですか? なぜ急に……」


 カミラは父親から元婚約者の名前を聞いて険しい顔になった。


「直接話したいとのことで私も要件を聞いていないんだ」


 カミラは仕方がなく元婚約者バルナーツと話すこととなった。


「お久しぶりです、バルナーツ様。本日はどのようなご用件でしょう?」


「久しぶりだな。元気だったか?」


「おかげ様で元気ですわ。それでどのようなご用件でしょうか?」


 カミラは冷めた顔で再度要件を聞いた。


「いや、なに、最近商人としてかなり稼いでいるそうじゃないか」


「はい。それでご用件は?」


 お金の話が出たことでカミラは要件の察しがついていた。


「実はこの地方で歴史的な不作が続いているのは知っているだろう? そんなのは関係ないから税を納めろと言っていたのだが領地から逃げ出す愚か者が相次いでな……」


(愚か者はお前だよ)


「それでカミラが商人としてかなり稼いでるという話を聞いて父上がお金を援助してもらえと。もちろんタダではないぞ! また私と婚約してやってもいい! どうだ嬉しいだろ?」


(あぁ、なんて可愛そうな人……きっと頭にウジ虫が湧いてるんだ)


「もちろんお断りさせていただきますわ。わたくしのことを汚い女と言ったのをお忘れですか? 汚い女から援助されたなどと家名に傷がつくではありませんか」


「なんだと!? お前なんかを貰ってやろうと言っているのだぞ!」


「ええ、結構です。商人の基本は需要と供給です。わたくしが欲する見返りがないのでしたら援助は出来ませんので、どうかお引き取りください」


「なんだと!! 貴様!!」


 バルナーツはその後も騒いでいたが、カミラは耳を傾けるのをやめていた。


 諦めて家に帰ったバルナーツが再度父親と共に屋敷に来たそうだがカミラが会うことはなかった。

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【完結】お金持ちになりましたがあなたに援助なんてしませんから! ~婚約パーティー中の失敗で婚約破棄された私は商人として大成功する~ 新川ねこ @n_e_ko_

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