730.台風の爪痕? を片付ける

 ニワトリたちが帰宅してから、明日はおっちゃん、相川さんの他に陸奥さんたちが来てくれるということも伝えておいた。

 ポチがコキャッと首を傾げた。


「イノシシー?」

「カルー?」

「エモノー?」


 コココッとメイが鳴く。違うから。

 俺は首を振った。


「違う。墓の上の参道のところの片付けを手伝いに来てくれるんだよ。狩りじゃないから、明日はなんか狩ってくるんじゃないぞ」

「エー」

「エー」

「サノー」


 ココッとメイが鳴く。だからメイは何言ってんだかわかんねーっつーの。

 俺とおっちゃんの話は聞いてたわけだから、狩りじゃないってことはわかってるはずなんだよな。でも陸奥さんと聞くと狩りに来ると思ってしまうのか。確かに冬はずっと一緒に狩りをしていたわけだし。気持ちはわからないでもない。

 そして陸奥さんたちなら許してくれるかも? とか考えていそうだ。こわ。


「墓の上のところ、木が倒れてただろ? 危ないからどかすのの手伝いに来てくれるんだ。頼むから一緒に狩りに行くなんて勘違いはしないでくれよ」

「エー」

「エー」

「サノー」


 ココッとまたメイの鳴き声。不満なのはわかるが、その不満を俺に訴えられても困るんだっつーの。ユマの「サノー」は俺と一緒にいるという主張だな。

 翌朝、珍しくポチが残り、タマメイがツッタカターと遊びに行った。


「ポチ? どうかしたのか?」


 ポチは首をクンッと上に向けた。


「墓の上に付いてきてくれるのか?」

「サノー」


 ユマに声をかけられた。ポテポテと側に来てくれるのがかわいい。


「うんうん、ユマは俺と一緒だよなー」


 ついデレデレしてしまう。だってユマがかわいいんだからしょうがないだろ。


「サノー、ヘンー」

「えええええ?」


 ポチにそんなことを言われ、ポチの方を見た。ポチはツーンとそっぽを向いている。


「変じゃないって。全く、タマみたいなこと言うなよなー」


 絶対タマの影響は強いと思う。そんなことを家の表で言い合っていると、車の音がした。ポチ、ユマと共に軽く頷いて確認する。

 入ってきたのはおっちゃんの軽トラだった。


「おー、昇平。出迎えか?」

「おはようございます。ポチとユマと確認していただけですよ~」

「そうかそうか。今日はポチも一緒か」


 おっちゃんがガハハと笑う。

 続々と軽トラが入ってきた。相川さん、陸奥さん、戸山さんが来てくれた。


「ご無沙汰してます」


 挨拶をして、ありがとうございますと頭を下げた。


「佐野君は本当に律儀だな。気にするこたあねえよ。困った時はお互いさまだろ?」

「そうだよ~。山暮らしはたいへんだよねえ」


 陸奥さんと戸山さんが笑いながら言う。彼らにとってはなんてことないかもしれないけど、俺にとっては大事おおごとだ。してもらうことを当たり前と思わないようにいつも戒めている。


「今日はポチとユマちゃんか。墓の上だったよな?」

「はい。その前にお茶でも……」

「いいよいいよ。まずは見てからだ。チェーンソーでどうにかなるならそのままやっちまうし、だめなら重機を明日持ってくるからな」

「いつもありがとうございます」


 陸奥さんに言われ、これはこれで日当を払った方がいいのではないかと思った。

 みなで墓のところまで向かい、墓の掃除をして手を合わせた。これはここに来るたび毎回やっておかなければいけないと思う。

 そうしてから参道予定に場所へ向かった。


「ああうん、これは重機の方が危ねえな」


 陸奥さんが納得したように頷いた。斜面だから、木が落ちてきたら重機の方が壊れてしまいそうである。


「じゃあちゃっちゃとやっちまうか」


 ってことで、木を押さえる人、チェーンソーで切る人など役割分担をして作業を開始した。ポチとユマは木が転がっていかない場所にいて、地面をつついたり草をつついたりしていた。時折ポチが頭を上げて、周りを見回したりしているのがわかった。


「ポチちゃんてすごいよねぇ」


 戸山さんがポチの方を見ながら呟いた。


「ああやってさ、定期的に必ず周りを確認するんだよね。佐野君のこともそうだけど、ユマちゃんのことも心配だったんだろうねえ」

「そう、なんですね……」


 それだけこの場所を危険だとポチは判断したんだろう。メイはタマがしっかり見ているから大丈夫だろうけど、俺とユマのことは自分が見ないとって思ってくれたのかな。

 戸山さんの言で元気をもらい、どうにか三本とも短めの丸太に加工することができた。


「佐野さん、こちらの木はどうされますか?」

「うーん、今のところ薪にするぐらいしかないんですよね」


 相川さんに聞かれて考えてはみたけど、今のところどうしてもほしいというかんじじゃない。薪に加工したとしても使えるのはどんなに早くても一年後とかだし。


「じゃあうちで加工してしまってもいいですか? 必要であれば持ってきますので」

「相川さんが使ってくださってもかまいません」

「わかりました」


 ってことで丸太は全て相川さんの軽トラに積んだ。


「いやー、いい汗掻いたなー」

「筋肉痛になりそうだねー」

「そうだなー」


 陸奥さん、戸山さん、おっちゃんが笑いながら言っている。

 どうにか昼前には作業が終わったので、うちでお茶にすることにした。汗だくである。一度うちのところに戻ると、ポチが荷台から飛び降りてコキャッと首を傾げた。


「ああ、もう今日は参道のところは終わったから遊びにいっていいぞ」


 そう声をかけると、ポチはツッタカターと遊びに出かけた。


「おうおう元気だなぁ」


 それを見ておっちゃんたちはまた笑ったのだった。



次の更新は、21日(金)です。よろしくー

さすポチ!

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