一年経ってからの十一月
728.なにがどうしてこうなったのか説明してほしい
というわけで墓の上の確認である。(何が、というわけでなんだ?)
桂木さんの家に行った翌々日だ。すでに11月である。
今日は墓のところから参道の様子を見に行くとニワトリたちに言ったら、
「イクー」
「イクー」
「イクー」
ココッ、と全員参加を表明してくれた。ニワトリたちもなんで登れないのか気になっていたみたいだ。そういえば、一昨日ポチタマが戻ってきた時葉っぱがものすごく付いていた。なんつーか、草木に思いっきり突っ込んだようなかんじだったのだ。
随分汚れてきたなー、どうしたんだ? と聞いたが、二羽にはプイッとそっぽを向かれてしまった。
あれが関係していると思うのは、考えすぎだろうか?
「え? 乗らないのか?」
ユマは軽トラの助手席に乗ってくれたのだが、ポチタマメイは墓のあるところまでツッタカターと自力で駆けていった。なんか、やる気満々である。
「ま、いっか」
ユマを乗せて、軽トラでニワトリたちを追いかけた。
「なんであんなにやる気なんだ?」
「ミルー」
ユマが言う。
「見る? うーん、参道の様子を確認するのかな?」
一緒にわざわざ行くとしたらそれ以外考えられない。山唐さんが様子を見てくれたけど、やっぱ自分たちの目で確認しないとな。
墓のところに着いたら、ニワトリたちが待っていた。ユマを降ろす。
「先にお墓の手入れをさせてくれなー」
墓近くの川で水を汲み、お墓の掃除をしていく。ここに来たらまずやるべきだ。
墓の数はそれなりにあるから毎日ってわけにはいかないけれど。
ニワトリたちはその間近くで草をつついたりして待っていてくれた。
「今日は参道の方を確認したいと思います」
手を合わせて挨拶をし、いつも登る場所へ向かった。
今日は草木の間隔が空いているように見えた。前回はなんというか、草木が密集しているかんじで拒絶を伝えていたが、今回は入れるらしい。ポチが俺の前を行く。その後ろに付いていこうとしたら、タマにつつかれた。
「タマ?」
そうしてタマが俺の前に出た。俺はタマの後ろじゃないといけないらしい。ユマとメイが俺のすぐ後ろにいる。
草木の間を抜けたら、参道予定の場所が見えた。
つーか、今までここが見えなかったことがおかし……。
「なんじゃああああああっっ!?」
思わず叫んでしまった。
山の上の神様のところへ向かう為に参道を整備している。その為、紐などを渡して2mの幅の範囲で草むしりや木の枝を切ったりしていた。木はあまり切ったりしたくなかったので、それは避けるようにして草むしりをしていたのだが、何故かその範囲にあった木が三本ぐらい倒れて参道予定の場所を塞いでいた。
ニワトリたちが俺の叫び声にビクッとする。
「いてっ!」
一番早く反応したのはタマだった。うるさいとばかりにつつかれてしまった。
でも今はそれどころではない。この惨状をなんとかしなければいけなかった。
俺はスマホを出した。
「いたっ、タマ、今はやめてくれ!」
強く言って、おっちゃんに電話をかけた。こんな時助けてくれるのはどら〇モンならぬおっちゃんである。
「おっちゃん、助けてー!」
「おーう、どうしたんだいったい」
フットワーク軽く見に来てくれたおっちゃんに、参道予定の場所を見せた。
おっちゃんは頭を掻いた。
ニワトリたちには倒れた木には近づかないように言ってある。みな聞き分けよく、離れたところで草や木をつついている。
「台風とはいえ、こりゃあ派手に倒れたなぁ」
「そうなんですよ……」
「参道を作るんだっけか」
「はい……」
「じゃあ重機で撤去した方がいいな」
「ですね……」
ああまた金が……懐が……と遠い目をする。でも倒れた木をこのままにしておくのは危ないからだめだ。
倒れていると言っても、途中で折れているようなかんじだ。木の皮一枚でかろうじて繋がっているような状態だから、ちょっと力を加えたら完全に折れて転がってしまうだろう。下手したら下の墓にも影響が出るかもしれない。だから倒れた木だけでもどうにかしないといけない。
「確か、陸奥さんとこにショベルカーがあったよな」
「ええまぁ……」
「重機で持ち上げられれば多少は楽に処理ができるんじゃねえか?」
「そうですね」
「しっかし昇平んとこはいろいろあるもんだな。ま、ヒマじゃなくていいけどよ」
おっちゃんがガハハと笑う。残念ながらヒマなようでヒマではないのだ。山の手入れはしてもしすぎるということはない。畑の草むしりや家の周りの草むしりだってやらないとすぐにぼうぼうになってしまう。
おっちゃんは陸奥さんに連絡をしてくれた。俺は相川さんにLINEを入れる。
「参道予定の場所で木が倒れてしまいました。お風呂はまだ先になりそうです」
すぐに既読になったかと思ったら、相川さんから電話がきた。
「佐野さん! それっておそらく神様がしたんじゃないですか!?」
「え? ええ……」
山唐さんがそういえばそんなことを言っていたな。
「わかりました、すぐに向かいます!」
「えええ?」
電話が切れる。
「ん? どうしたんだ?」
おっちゃんに声をかけられてはっとした。いつのまにかユマも近くにいて、コキャッと首を傾げた。ホント、ユマって俺のことをよく見てるよな。
「ええと……相川さんがこれから来るそうです……」
「そうか。まぁ、相川君にも見てもらった方がいいだろうな。それにしても……やらかしてくれるよなぁ」
麓の柵はおっちゃんが閉めてきたと言うので、その場をおっちゃんとポチタマメイに頼み、ユマと共に鍵を開けに向かったのだった。
次の更新は14日(金)です。よろしくー
いろいろやらかしてくれています(謎
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