649.魚の件から話が発展したのと、メイの成長とか

 山の上の、湧き水でできた湖のようなでっかい池を管理しているのは山唐さんだけではないそうだ。

 昨日はちょうど南側の山に住む夫婦が船を動かしていて、ついでに魚を釣って山唐さんに捌いてもらおうと考えていたらしい。それで池の西側で釣りをしていたところ、ハクレンを釣り上げたのはいいが勢い余って西側の木々の向こうへ飛んでいってしまったのだそうだ。

 どうせ水がないから生きられないだろうと黙っていようと思ったが、そのハクレンが運よく(?)山の西側を流れている川に入り、それをたまたまポチが捕まえたという話だった。

 偶然が偶然を重ねて捕まえたとか、面白い話である。

 当然ながらすぐに報告しなかった南側の山の夫婦には説教をしたという。ふふっと笑ってしまった。


「お騒がせしました」


 途中からLINEを電話に切り替えて話した。電話の向こうの山唐さんが小さくなっているのが見えるようだった。


「いえいえ、うちは大丈夫ですよ。ニワトリたちがおいしくいただきましたから」

「それならよかったです。今日はまだ西側の川の上流を見ていないので、明日確認しに行きます。それで、もしよかったら明後日にでも釣りをしにいらっしゃいませんか?」

「えっ、いいんですか?」


 でっかい池ってどれぐらいの規模なんだろうかと気になっていたのだ。主にいる魚は中国四大家魚と呼ばれるソウギョ・アオウオ・ハクレン・コクレンとコイやフナなのだという。どれも水がキレイなところであればとてもおいしそうだ。釣った魚は山唐さんが捌いてくれるというからわくわくしてしまう。


「じゃあ相川さんを誘ってもいいですか?」

「はい。今回は試しにお二人でいらしてください。もしよければ相川さんのところの大蛇たちも来てもらえるといいですね」

「わかりました。伝えておきます」


 釣りかー。でっかいのが釣れるといいな。

 多く釣れたとしても、ニワトリたちも食べるしな。

 相川さんにさっそくLINEを入れた。


「釣りいいですね。明後日の朝、向かいましょう。リンとテンにも聞いてみます」


 となるとうちのニワトリたちにも聞いてみないといけないだろう。


「なぁ、ポチ、タマ、ユマ、メイ」


 ナーニ? と言うようにユマとメイがコキャッと首を傾げた。かわいすぎか。

 じゃなくて。


「明後日なんだけどさ、また山唐さんの山に行く予定なんだけど一緒に行くか? でっかい池があるらしいぞー」

「イケー?」

「イケー?」

「イケー?」


 ココッとメイが鳴く。そういえば池って見たことなかったっけ。


「えーとなー。川よりも水がいっぱいあるところだよ」


 ポチが首をコキャッと傾げる。ユマとメイは傾げたままだ。


「ウミー?」


 タマだけが別の反応をした。


「海ってなんで知ってんだ? ああ、TVか。海ほどでかくはないけど、それなりに水が溜まってるところだよ。そこで今日ポチが獲った魚が釣れるんだってさ」


 ニワトリたちの目がキラーンと光ったように見えた。

 き、気のせい、だよな?


「イクー!」

「イクー!」

「イクー!」


 ココッ! とメイが鳴く。全員参加するらしい。今日のハクレンはおいしかったみたいだ。ニワトリたち、魚も好きなんだなぁ。って、シャケの中骨缶とか喜んで食うもんな。ホント、ニワトリっていろんなもの食うよなと思う。

 あ、と思い出す。


「明日じゃないからな。明後日だから明日の朝は起こすなよ?」


 つっても目覚ましが鳴る前に起こされるのはいつものことだ。タマに上に乗られるのは出かける日とかだったりするけど、そうでなくてもニワトリの鳴き声で起こされたりもする。山だからいいけど我が家は朝からなかなか騒がしい。

 ユマとメイと共に風呂へ入り、明日は何をしようかなとか思いながら寝た。

 翌朝、


「……ん?」


 何かが胸の上にのしっと乗った。


「えっ?」


 もしかして金縛りかと思って目を開けたら、目の前にメイのドアップが。


「えええええ~~~……」


 なんで俺の胸の上にメイが乗っかってるワケ?

 そんな重いわけじゃないけどびっくりしてしまう。メイはタマと違っておっとりしているのか、俺と目が合ったけどそのままだった。なのでガシッと掴み、腹筋を使って起き上がった。


「こーら、メイ。俺の上に乗っちゃだめだろーが!」


 キョアッ、キョアアーーーッ!? とメイがおかしな鳴き声を発した。悲鳴なんだろうか。


「メイ、人の上に乗るなんてこと覚えちゃだめだぞ。わかったか?」


 抱きしめて言ったら今度は俺をつつこうとする。


「サノー?」


 ユマの顔が襖の向こうから覗いた。


「ユマ、メイにちゃんと言っといてくれよー」


 ユマがお世話係ってわけじゃないけどさ。


「ほら、もうするなよ?」


 メイを放してやると一度コケた。それからバッサバッサと羽を動かして慌てたように部屋を出て行った。かわいいなー。

 ユマが代わりに部屋に入ってきた。


「ユマ、おはよう」

「オハヨー」


 ユマは近くまで来て、すりっと身体をすり寄せるとまた戻っていった。

 なんだあれ、かわいすぎだろ。

 しばらくジーンとなってしまったが、ここで起きないとタマが突撃してくるかもしれないので身体を起こしたのだった。



メイちゃんびっくりー!

次の更新は12日(火)です。よろしくー


山暮らしコミックス1巻の書影が出ました。

とってもかわいいです!

近況ノートからどうぞー

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16817330663304186545

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