642.トマトと卵の炒めの詳しい作り方はググッてください(ぉぃ
結論。
強火で、切ったトマト、味を付けた溶き卵(タマユマのである)と共にフライパンに流し込んだらあまり動かさないのがコツらしい。
「ヘラなどでも何度も動かしてしまうと、焼ける部分が多くなってしまうのでふんわりとはいかないんですよ」
「そうなんですか」
スマホにメモを取る。紙に書いてもいいんだけどなくしてしまうことが多いんだよな。
とにかく何をするのでも相川さんは丁寧だ。トマトを先に炒めて一度火から上げるなんてこと、俺は絶対にしない。タマユマの卵はかき混ぜられ、味を付けた状態である。そこにサッと炒めたトマトを足す。
そしてトマトを加えた卵をフライパンに流し込む。
ヘラを動かすのは最小限だ。
半熟の状態で火を止めて余熱で温めるなんてことも俺はしないよなぁ。
「やっぱおいしさには理由があるんですね」
「大げさですよ」
そう言いながらも相川さんは嬉しそうだ。他に漬物を用意して、簡単なお昼ご飯になった。
でも相川さんが作ってくれたトマトと卵の炒めが絶品だから幸せなんである。相川さん曰く、それなりに火は入れた方らしい。タマユマの卵はおいしいが、何を食ってるかわかったものではないのでサルモネラ菌対策である。
「おいしい……」
しみじみと呟いてしまった。
「本当にタマさんとユマさんの卵はおいしいですよね。市販の卵ではこうはいきませんよ」
そして相川さんは褒めることも忘れない。見習わないとなぁ。
うん、相川さんはイケメンだからこの気遣いがあだになってしまったわけで、俺が気遣いする分には何も起こらないだろう。なかなかうまくいかないものである。
漬物は買った物だ。みそ汁は沸騰させないようにがんばった。意外と難しかったりする。俺がいろいろ雑なせいかもしれないけど、みそ汁一つとっても作ってみないとわからないものだ。(気が付くとぐらぐら煮立っていることが多い。俺だけが食べる場合は「あーあ」で終わりだ)
「今は暑いからあまりできないんですけど、涼しくなってくると生えてくるんですよね……」
昼食後、相川さんがため息をついた。
「え? 何がですか?」
なんのことだろうか。
「……シイタケです」
「ああ!」
暑い時期はほとんど生えないらしい。だからキノコ類が出回るのって春とか秋なのかと納得した。
あまり暑すぎるのは苦手なようだ。
「また、もらっていただけますか?」
「はい! 喜んで!」
どっかの居酒屋みたいな返事になってしまった。普通に買うと高いんだよな、シイタケって。それをただでたくさんもらえるのだ。お返し、ホントどうしよう。
相川さんがクスクスと笑う。
「佐野さんて、素直ですよね。裏表とか全然なくて安心します」
それは褒められているんだろうか。まぁ、悪くとる必要もないよな。俺は頭を掻いた。
「湯本さんとか、桂木さんも裏表はない方ですけど……これからも仲良くしてくださいね」
改めて言われると照れる。
「いえいえ、それを言いたいのは俺の方ですよ! いつも気にかけていただいて……」
「シイタケのお礼とか、考えなくていいですからね?」
笑顔で釘を刺されてしまった。でもなぁ。
「タマさんのユマさんの卵をいただけるなんて、普通はありませんから。これ以上の贅沢はないんですよ」
「ううう……」
タマユマの卵がお礼になってしまった。
「浴室の増築も、参道の整備も楽しみにしてますしね」
「……それ、絶対お礼になりませんよね?」
「佐野さん、何言ってるんですか?」
きょとんとした顔で言われてしまった。絶対おかしい。相川さんの感覚はずれてると思う。俺は間違ってない。じっと見てしまった。
「佐野さんとは楽しみが多少違うんですよ。それだけの話です」
「えー……」
異論はあるが問答しててもしょうがないのでとりあえず追及は避けた。おいしそうな匂いに引かれたのか、ユマが玄関のガラス戸をカラカラと開けて入ってきた。後ろからメイがついてくる。それだけでもうかわいい。
「腹減ったのか? 今用意するなー」
もうごはんもあらかた食べ終えたので立ち上がる。この時期は青菜が普通にあるのがいい。ニワトリ用に用意しておいた青菜をざっと洗ってざくざく切る。別皿で養鶏場から買ってきている飼料も少し出した。
「アリガトー」
ココッ、とメイが後に続くのがたまらない。
「足りなかったら言えよ」
まぁ昼飯だから足りないと言われたことはないが念の為である。この時期は夜もそんなに食べないしな。シシ肉とかシカ肉を狩った後はいつだってめちゃくちゃ食べるんだけどさ。
もしかしてニワトリって食べ溜めができるのか? そんな話、聞いたことないけど。
片付けて、川をまた見に行くことにした。リンさんとテンさんはどこまで行っただろう。今日は一応下流の方を回るようなことを言っていた。ユマとメイが付いてくるそうなので、メイには絶対川に近寄らないように言った。
聞いてくれなかったら強制抱っこである。そこはユマにも伝えた。
ユマは頷くように首を動かして、
「ワカッター」
と答えてくれた。相川さんは苦笑していたが何も言わない。川の怖さはみなわかっているものである。
自覚してる。俺は過保護なんだよ。(もう開き直った)
次の更新は17日(木)または18日(金)です。よろしくー
1800万PV記念SS何書こうかなー。コメ欄見ながら考えます。
本日は11時頃コミカライズ第8話が公開されます。公開されたらまたアナウンスしますね。よろしくですー
サポーター連絡:先ほどサポーター限定記事を上げました。よろしければ読んでやってくださいませー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます