635.参道の整備もしていきたい
さすがにまだ暑いので午後は日陰で少し作業をするに留めた。
一休み中に相川さんにLINEを入れた。参道の作り方についてである。山倉の圭司さんにも聞こうかと思ったのだが、そうすると費用とかもろもろを出してくれてしまいそうなので遠慮した形だ。圭司さんは9月の連休に息子の将悟君と共に手伝いに来てくれるらしい。連休中なのに家族サービスはいいのかなと心配になってしまうが、うちのことではないので口には出さなかった。(今年の連休は18日~20日である)
「参道作りですね。一度見に行かせてください」
相川さんからはすぐに返信があった。
正直草むしりぐらいしかやってなくて恥ずかしいのだが、方向性を決めれば進むのではないかと思うのだ。
「あれじゃあ今年の冬に完成させるのは無理かもしれないな……」
思わず弱音を吐いてしまう。
ただ、よく考えれば急ぐことでもないのだ。どちらにせよ冬は危ないからお参りは無理だし。焦ってもしかたない。
明日には相川さんが来てくれることになった。本当にフットワークが軽いよな。
夜はもらってきたシカ肉を解凍したのを薄切りにしてニワトリたちに出した。メイもとても嬉しそうに食べている。生肉を食べるニワトリ……。うん、うちの子はかわいい。(思考放棄)
「明日は相川さんが山の上を見に来てくれるからなー」
「ワカッター」
「ヤダー」
「ワカッター」
ココッとメイの返事。タマは相変わらず相川さんが嫌なんだな。実際嫌っているのはリンさんテンさんの大蛇組みたいだけど。
「タマ、相川さんまで嫌がらなくてもいいじゃんかー」
「リンー、テンー」
「あー……と聞いてないな。でも今年もザリガニ増えてそうだよなー」
なんだったら俺たちが山頂の方に行ってる間川を見てもらった方がいいのか? でもやっぱりそんなに離れているのはよくないよな。
いろいろ考えてしまう。
つーか、聞けばいーんじゃ?
「明日はリンさんたちはいらっしゃいますか?」
「今回は参道とのことですので連れてはいきません。川の確認だけさせて下さい」
「よろしくお願いします」
LINEしたらすぐに返事がきた。リンさんテンさんは来ないらしい。
「タマ、明日はリンさんとテンさんは来ないってさ」
「……ワカッター」
しぶしぶというかんじでタマが返事をした。メイもコッとか返事をしていた。そんなところがかわいい。
お風呂に入ってユマとメイを洗う。やっぱ外でもシャワーがあると洗いやすいよな。シャワーヘッドをホースに付けて夏はポチタマを洗う時に運用してるんだが、冬はお湯で洗ってやりたい。でも外の水道じゃお湯は出ないし……。なかなか悩ましい問題だ。いっそ給湯器から……いやいやガス代が、とか考えてしまう。やっぱなんか収入があった方がいいよなーとか思いながら寝た。
翌朝、タマが俺の足の上にのしっと乗った。
「うおっ!? タマ? おーもーいーぞー!」
タマは俺が起きたことを確認するとパッとどき、ツッタカターと居間の方へ戻って行った。
なんなんだよいったい。
あ、そっか。相川さんが来るからか。
そういえばここのところN町へ行っていないことを思い出した。そろそろ通帳に記帳とかしてきた方がいいよな。この村ではカード決済とかしないから、一応現金は多めに下ろしてある。(カード決済は雑貨屋で一応できるらしいけどしないようにしている。対応はしてるけどおじさんおばさんが慣れないそうだ)
支度をして居間に向かえばいつも通り卵が転がっていた。
「おはよう、ポチ、タマ、ユマ、メイ。タマ、ユマ、今日もありがとうなー」
卵を拾って軽く拭き、台所の籠に入れる。そういえば相川さんて何時頃来るんだろうな?
「オハヨー」
「オハヨー」
「オハヨー」
ココッと挨拶が返ってくるのがたまらなく嬉しい。毎朝ジーンとしているわけではないが、これが当たり前の日常ってのが愛しいのだ。(意味ワカンネ
ニワトリたちの餌をいつも通り用意し、俺の朝飯を作っている時に相川さんからLINEが入った。9時頃に来るとのこと。OKですと打ち返して時計を見る。まだ7時だ。田舎の朝は早い。
正直隠遁生活だったらもっと朝はのんびりしていてもいいはずなんだが……ニワトリを飼った時点で無理だって? そうだよなぁ。朝4時ぐらいにはポチが鳴いてるみたいだもんな。(俺はもう慣れててポチの鳴き声では起きない)そういう意味ではよく7時前まで起こすのを我慢してくれたってのもあるかも。明るくなったら起きるよな、ニワトリだったら。
ポチとタマは餌を食べてすぐに出かけようとする。そういえば言っておかないとな。
「ポチー、相川さんは来るけど獲物は取ってくるなよ~?」
「エー」
えーって言ったよこの暴れん坊。
「相川さんは獲物運搬の手伝いで来るんじゃないんだぞ……山の神様のところの参道の手入れの相談に乗ってくれるんだ! 獲物狩ってきても俺は絶対嫌だからな!」
「エー」
タマがポチをつつく。
「ポチ、だめだからな」
「……ワカッター」
ポチはしぶしぶ返事をした。
最近うちのニワトリたちが言うことを聞いてくれない。
「……木本さんに来てもらうようかな……」
ポチはビクッとすると、ツッタカターと逃げて行った。タマが俺を軽くつついてからポチを追う。
なんだかんだいってタマが一番苦労性かもしれないと思う。
見送る俺の横にメイがトトッと近寄った。
「メイはまた今度な」
ココッとメイが鳴く。羽を撫でたら気持ちよさそうにしてくれて、メイもかわいいなと思ったのだった。(その後ろにユマが控えていた)
次の更新は25日(火)です。よろしくー
レビューいただきました! ありがとうございます。
3巻の感想などもいただけると嬉しいです! ファンレターもお待ちしております~(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます