1500万PV記念SS「ユマはとってもがんばっている」
1500万PV記念遅くなりました(汗
今回は翌年の春頃までのユマをお届けします。
こんな風にユマは考えているのです。
ユマはほんの少しだけ悩んでいた。
ユマは佐野が大好きである。だからできるだけ佐野と一緒にいたい。地面をつついていて、ふと頭を上げた時に佐野の姿があると嬉しくてたまらない。
でも時には思いっきり走り回りたい。そんな時はポチやタマと出かけることもある。ポチやタマと山の中を走り回っていてもあまり疲れない。ポチはあんまり構わず枝などが密集していても突っ込んでいくことが多いので、さすがにそれは止めている。あんまり汚れて帰ると佐野が困ってしまうからだ。
そうして動き回って自分の身体が変わっていないことを確認し、毎回満足して戻るのだった。
だが、どういうわけか最近風呂に入るとはまってしまうようになった。
なんかきつい気がする。
ユマはコキャッと首を傾げた。
佐野と一緒にお風呂に入るのはユマの大事な時間である。佐野が身体を丁寧に洗ってくれて、ユマの身体におかしなところがないかチェックするのだ。
「うん、特に虫刺されとかもないな。異常なし! あー、ポチとかタマも触らせてくれればいいんだけどな……」
一緒に湯舟に浸かりながら佐野がぼやく。ユマはコキャッと首を傾げた。
ユマに触れればそれでいいではないか。
「ああ……できるだけ健康チェックしたくてさ。どっかにデキモノがないかとか、虫刺されしてないとかさ。病気になったら困るし。ユマだけじゃなくてポチもタマも大事な家族だからな」
佐野がにこにこしながら言う。
ユマは頷くように首を前に動かした。
「カゾクー?」
「大事な人……いや、人じゃないな。大事な俺のニワトリたちってことだよ」
「ダイジー?」
佐野はいろんなことを言うから、ユマは理解するのが少し難しい。
コキャッと首を傾げれば佐野の笑みが深くなった。
目なんか細くなってなくなりそうである。
「ユマはかわいいなぁ」
「カワイイー?」
「うん、いつもかわいいよ」
そう言って佐野はユマの羽を撫でた。
「カワイイー」
風呂の中で羽を動かしたら、湯がばっしゃんばっしゃんと飛んだ。
「おおーう……湯がなくなるって……」
そう言いながらもしょうがないななんて顔をして、佐野は苦笑した。
それにしても最近はその風呂に佐野とユマが同時に入るのは厳しい。佐野は足を縮めないといけないほどである。
「うーん、さすがにこれ以上大きくなったら一緒にお風呂に入れなくなるかもなー」
佐野がそう呟いたのを聞いてユマは困った。ユマは佐野と一緒にずっとお風呂に入りたいのだ。
風呂から出た後、佐野がユマの頭の上辺りに手をかざした。
「うーん……だいぶ背も高くなってきたよなー。このままだと助手席に乗るのも厳しいかもしれないぞ?」
ココッ、コココッ!
衝撃がでかすぎてユマはその場でジタジタと足踏みのようなことをした。
「成長って止まるのかな? まぁまだ大丈夫だろうけどなー」
佐野はそう言ってユマの羽を撫でた。
そんなわけで、ユマはほんの少しだけ悩んでいるのである。
さすがにうっとうしいと思ったのか、タマに軽くつつかれた。
これ以上大きくならないようにするには、小さくなればいいのだろうか。
ユマは真面目にそんなことを考えた。
でも小さくなるとはどうすればいいのだろう?
身体に力を入れてみた。
フンがしたくなったので土間の段ボールのところまで移動した。
フンをしたら小さくなるのだろうか?
でもそれ以上は出ない。
卵もせいぜい一日に一個しか産まれない。
タマを見る。小さくはない。
どうしたら小さくなれるだろうかとタマに聞いたら、何バカいってんの? というような目でユマは見られてしまった。
ちょっとタマは冷たいと思う。
ポチに聞いたらコキャッと首を傾げられた。ポチが知っているはずはなかった。
どうしたら小さくなれるのだろう。
ユマは途方に暮れた。
「ユマ、どうしたんだ? 元気ないなー。葉っぱ食べるかー?」
翌朝、佐野が近寄ってきて野菜をユマに出した。もちろんポチとタマにも渡している。
「サノー、ユマー、オッキー」
「ん?」
タマが佐野に理由を伝えた。ユマはじっと佐野を見る。
「うーんと、よくわかんないけど……もしかして俺昨日なんか言った? って、痛い痛いっ!」
タマがとぼけるんじゃないわよッと佐野をつつく。
佐野にとっては大した話ではなかったのかもしれないとユマは思った。
「なんでタマはそんなに狂暴なんだよー……全く」
トトッとユマが佐野に近づく。佐野はそっとユマにくっついた。
「あー、ユマってなんでこんなにかわいいんだろうなー……。お前らがでっかく育ってくれてよかったよ」
ユマはちょっと混乱した。
「でかいってことは強いもんなー。安心、安心」
どうやら現状維持でいいらしい。佐野はそう言いながらユマの羽を優しく撫でた。
しかしポチはそう考えなかったようで、羽をバサバサッと動かした。タマは冷たい目で佐野を見ている。
「サノー」
ユマは佐野に声をかけた。
「ん? どうした、ユマ」
佐野はいつもとろけんばかりの笑顔をユマに向ける。
この笑顔を見ると細かいことなどどうでもいいとユマは思う。
ユマはやっぱりそんな佐野が大好きなのだった。
おしまい。
あんまりおっきくなりすぎても困ってしまうけど、おっきいから他の生き物に負けないという利点もあります。
楽しんでいただけたなら幸いです。
今日はのちほどまたちょろっとお知らせあるので、お付き合いいただけると嬉しいですー。
宣伝失礼します。
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