615.今年のごみ拾いウォーク、最終日は山の麓で

 翌日はごみ拾いウォークの最終日である。

 朝が早いので目覚ましもそれぐらいの時間にセットしているというのに、今朝も目覚ましが鳴る前にタマがのしっと俺の足の上に乗った。


「……タマ、だから重いって……」


 ニワトリの体内時計ってどうなってんだいったい。

 もう目覚ましのセットを止めた方がいいんだろうか。でも目覚ましセットしとかないとタマが起こしにこなかった時起きられないしな。卵が先かニワトリが先かじゃないんだけど、自分でも何を考えているのかわからない。

 目覚まし時計は今まで通りかければいいんだ、うん。

 結論付けて起きた。

 ニワトリたちに餌をやり、俺もごはんを食べ、先にBBQ用の鉄板などを運んでいくことにした。荷台が荷物で埋まってしまうから、ポチとタマには後で迎えにくると言ったらコキャッと首を傾げられた。

 え? 俺なんかおかしなこと言ったか?


「ハシルー」

「オリルー」

「え」


 ポチとタマは先にツッタカターと道路を駆け下りて行ってしまった。メイがその後を付いていこうとしたが、それはユマが阻止した。確かにリーチが違うからポチタマと一緒には走っていけないよな。

 メイの足もそれなりに早くなってはきたけど、走って行かれたら困ってしまう。


「ユマ、ありがとうな」


 軽トラの助手席の部分にぷりぷり怒っているメイと、ふんすとしているユマに乗ってもらった。朝からかわいいなと思う。

 ポンチョを持ち、荷台に載せた荷物を確認してから麓まで下りた。


「おはようございます」

「昇平、今年もよろしくな~」


 山倉圭司さんと将悟君、そしておっちゃんとそのお孫さんたちが着いていた。相川さんと本宮さん、桂木姉妹も先に来ていたらしい。


「おはようございます。今年も参加してくれてありがとう」


 おっちゃんのお孫さんたちに挨拶をすると、一番利発そうな子がほっとしたような顔をしていた。確かおっちゃんの息子さんの光一さんの子だったと思う。確かこの子はニワトリたちのことを気にしていた。


「おはようございます。今年も参加させていただけて嬉しいです」


 ううう、いい子だ。


「ポチ、タマ、ユマ、メイ、集合~!」


 思い思いの場所にいた四羽が素直に近づいてきた。一羽一羽にポンチョを着せる。暑いかもしれないけど念の為のカモフラージュだ。メイにはファスナーはいらないけど、ポチたちは小さい子なら中に入っててもおかしくない大きさである。みんなこんなことで誤魔化されたりはしないだろうが、写真をもし撮られた時用の対策なのだった。

 あんまり対策になってないかもしれないけど、ファスナーが付いているか付いていないかで印象は違うだろう。

 うん、みんなかわいいな。

 満足して頷くと、


「本当にニワトリさんたちかわいいですよねー」


 桂木さんがにこにこして言った。


「そうだね~」


 桂木妹はなんだか上の空である。じっと本宮さんを見つめている。本宮さんは相川さんを手伝いながら、時折桂木妹を見ては狼狽えたような顔をするのが印象的だった。

 ケッ、リア充めと言いたくなる光景である。

 いいんだ、桂木妹が幸せならそれで。

 続々と車が入ってきた。今日が一番参加者は多い。おっちゃんちのお孫さんだけで六人だしな。


「あれー? もしかして山倉?」

「梶? 久しぶりだな~。今日はどうしたんだ?」

「弟がでっかいニワトリ見ようってうるさくてさ。ってマジでかいんだけど?」

「写真とか撮るなよー?」

「撮影禁止かよー。つまんねーの」


 将悟君の友達も来ていたらしい。この辺りの人たちはほぼ知り合いだろうから全然不思議ではないかな。

 揃ったみたいなので、注意事項など話すことにした。牛乳とパンを配って食べながら聞いてもらう。

 もちろん撮影は禁止だし、基本的にスマホなどはマナーモードか電源オフで。川沿いを歩くからいちいち取り出したりすると危険だ。落とされても拾ってこられないしな。

 この辺りの山から流れてきた水が集まっている川なのでいつも水が豊富に流れている。そんなわけで川底はかなり低い位置にある。

 ガードレールはあるけど、本当に川を見下ろすという表現が合っている場所なのだ。

 という言い訳はともかくとして。

 写真は撮るな。以上だ。

 相川さんの山方面と桂木さんの山方面で別れる。桂木姉妹は本宮さんと一緒に向かうらしいので、俺はおっちゃんと相川さんと共に相川さんの山方面へ向かうことにした。子どもだけで20人ぐらいいて、11人と9人に別れた。桂木姉妹の方にユマとメイには向かってもらうことにしたので、タマがなんか不機嫌そうだった。

 また後でつつかれるかなと思ったけど、


「タマちゃん一緒なの、うれしーい!」

「ポチちゃん、ごみ拾いできるのー?」


 子どもたちに構われてニワトリたちはなんだか楽しそうに見えた。

 なんだかんだ言ってけっこう面倒見がいいんだよな。でも煙草の吸い殻を嘴で拾うのは心臓に悪いから止めてほしい。


「じゃあ行きますよー。ちゃんと軍手しましたかー?」

「はーい」


 火バサミはさすがに人数分は用意できていないので、何人かに一本というかんじだが子どもたちはとても楽しそうだ。

 日が上ってきた。まだ風が吹けば少し爽やかだが、日が上るにつれてどんどん暑くなる。みんなで水分補給等気を付けながら山に沿ってごみ拾いを始めたのだった。



ーーーーー

次の更新は16日(火)です。

1500万PV記念は来週。。。には上げられるかな。

本気で忙しいのですみません(汗

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