614.ご先祖様の墓参りに来てもらった

 翌日、山倉さんたちが来ることは相川さんと桂木姉妹にも伝えてあった。

 なので明日のごみ拾いウォークの参加者の情報は、相川さんに集約することになっている。昼の時間までに集めて相川さんに保険の申し込みに行ってもらうことになった。

 山倉の圭司さんと将悟君はごみ拾いウォークに参加してくれるらしい。だから今夜は山倉さんちに泊まるそうだ。

 朝、日が出た頃からですよとは伝えたのだけど、「たまには動かないとなんで」とか圭司さんからLINEが返ってきた。普段動かないからそういう機会にでも、ということらしい。

 確かに、町で仕事していたらあんまり動くことってないかもな。うちはちょっとサボッたら雑草がこれでもかと繁茂するから嫌でも動かなきゃいけないんだけど。


「今日は山倉さんたちが来るからな~」


 ニワトリたちに伝えておく。つっても墓の方に直接行ってくれるんだろうけど。墓参りが終わったらまたうちに寄るんだろう。

 だからちょっと摘まめるような物は用意しておく予定だ。

 漬物は買ってあるし、昨日養鶏場でサラダチキンのパックをいくつもいただいてしまった。燻製したものとか、味をつけたものとかいろいろあって面白い。辛くしたものは俺用のつまみである。


「いろいろ試しに作ってみたのよ~」


 おばさんに相川さん、桂木姉妹も渡されていたから断ることはできなかった。ありがたいことである。

 次にお伺いする時は手土産を考えなければいけないだろう。なにがいいかな?

 うちの畑にはせいぜいきゅうりと小松菜、シシトウぐらいしか生っていないが、きゅうりがあればサラダぐらいにはなる。シシトウもかなり数が増えてきた。揚げびたしにするといいとは聞いたが、俺はせいぜいしょうゆと砂糖と共に軽く炒めるぐらいだ。最後にかつおぶしをかけるだけで違う。うちではかつおぶしが大活躍だ。

 シシトウはところどころが辛い。大人はいいけど将悟君に辛いところが当たるとまずいなとは思った。

 山倉さんたちが来るのは昼ぐらいだと言うと、ポチとタマはナーンダというような顔をしてツッタカターと出かけていった。

 挨拶するつもりだったのだろうか。

 洗濯、掃除、布団干しなどできることをやりながら過ごす。

 ユマとメイは洗濯物を干している間側にいてくれた。

 日中はかなり暑いのだが、それでも時折虫が飛んでくる。それを器用にぱくりと食べるのだから、ユマはすごいなと思うのだ。


「俺に付き合わなくてもいいんだぞ?」

「サノー、イッショー」


 ココッとメイも返事をする。

 一緒にいてくれようとするのが嬉しいよな。思わずにまにましてしまった。

 そんなことをしていたら墓参りが終わったらしい。軽トラを含めて車が三台入ってきた。

 山倉さんたちだった。


「こんにちは、ご無沙汰してます」

「やあ、佐野君。今年もお邪魔させてもらうよ」


 山倉さん夫妻、圭司さんと将悟君、そして麓に住むご夫婦が車から下りた。山倉さん夫妻と麓のご夫婦は久しぶりに会うかんじだ。たった一年ぐらいだけど、年を取ったなという印象である。

 家に案内する時にユマとメイも近づいてきた。


「あら? ちょっと大きいけど、この子は普通のニワトリっぽいわね?」


 麓に住んでいる奥さんが反応した。


「メイちゃん? 大きくなったなー」


 ユマに触る許可を求めていた将悟君が、メイの方を見て感心して言った。確かに生まれてすぐぐらいしか会ってないから、ひよこが大人になったみたいな印象なんだろう。


「うん、大分大きくなったよ」


 また今回も奥さんたちから大きなおにぎりをいただいてしまった。一個でもかなり食いでがある。そしてうまい。


「圭司さんと将悟君は明日参加されるんですよね? 本当に日が出ると同時ぐらいに始めるんですが大丈夫ですか?」

「目覚ましで起きるから大丈夫だよ。ニワトリとごみ拾いウォークなんてよく考えたなぁ」


 圭司さんが感心したように笑った。


「どうしても不法投棄が多いので……」


 山の周りを常に見ているわけにもいかないので本当に困る。こういう活動を頻繁にやってるから、見つけたら捕まえるよという意思表示だ。そういえば鳥居を作るなんて話もあったが結局立ち消えになった。効果があるかどうかわからないってのもあるけど、ごみ拾いよりもやることが地味だしなぁ。


「あ」


 ふとスマホを確認すると、おっちゃんから着信があったらしい。


「ちょっとすみません」


 断っておっちゃんに折り返し電話した。


「もしもしおっちゃん?」

「ああ、昇平か。忙しいところ悪いな。明日のごみ拾いウォークってまだ参加できるか?」

「あー……ええと、相川さんに電話してもらってもいいですか? 保険の申し込みには相川さんに行ってもらうので」

「わかった。相川君に連絡する」


 そう言って電話は切れた。昼を少し過ぎたぐらいだから大丈夫だろうとは思う。一応相川さんにLINEは入れておいた。


「すみません」

「いいよいいよ。明日のことなんだろう? 忙しい時にすまなかったね」

「いえいえ、俺は何もしてませんから」

「そんなことはないだろう。墓をキレイにしていてくれて本当にありがたいよ」


 山倉さんが言い、みなさんに頭を下げられてしまった。そんな大それたことはしていないし、昨日慌てて掃除をしたぐらいである。かえって申し訳ないと思った。


「この上にある墓には祖父さんたちとそれより前の先祖の骨が埋まっているんだ。だからこの山に住んでくれる人がいて、しかも手入れまでしてくれるなんて本当にありがたいと思っている。佐野君、礼ぐらいしか言えないが本当にありがとう」

「い、いえ……」


 そんなに感謝されるようなことをしているとは思えないんだけど、そうすることで山倉さんたちの気持ちが楽になるならいいと思う。


「それでね、墓の管理をしてもらっているから少し受け取ってほしいんだ」

「え」

「少ないけどね」

「いえいえいえいえ、もう俺が買った土地ですから!」


 管理費はさすがに受け取れないと、辞退させてもらった。だってこの先何が起こるかわからないし。


「佐野さんは本当に欲がないのねえ」


 山倉の奥さんにしみじみ言われてしまった。

 いえ、欲は一応あります。でもここの土地は俺が家屋も含めて買ったんだから、墓の管理なども含めてお金をいただくわけにはいかないのだ。

 ちなみに、シシトウの辛いのは圭司さんに当たった。唐辛子ぐらい辛かったらしい。口を押えて悶えていた。

 ごめんなさい。



ーーーーー

次の更新は5/12(金)です。よろしくー

次の更新時には修羅場ってると思うので返信等滞るかもしれません。

余裕ないんだなと思っててください(汗)

更新は予定通りします。



宣伝失礼します。

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