611.養鶏場周辺でごみ拾いウォーク開催
翌朝は本当に早かった。うちの麓に集合ってわけじゃないから本当にまだ暗いうちに起きることになった。
タマが相変わらず足の上にのしっと乗っかった。目覚ましはセットしてるんだけど、その十分前ぐらいに起こしにくるんだよな。何時に起きるとか伝えてないんだが。(早く起きるとは言ってある)
あんまり早くて眠いせいか、タマに怒ることもできなかった。
「あー、ねみい……」
あくびをしながら朝食の準備をし、ニワトリたちに食べさせる。今日はポチが留守番だ。ポチはもう足をたしたししている。どこまで行くつもりなんだコラ。
「ポチは来ないのか。寂しいなー」
と言いながら、タマ、ユマ、メイと共に養鶏場へ向かった。ユマとメイには先にポンチョを被せた。なかなかかわいい。タマは荷台に乗っているので着いてから着せるのだ。
服とか動物に着せるって意味がわからなかったが、この姿はこの姿でありだなと思う。ただし暑いだろうから終ったらすぐに脱がせるけど。
「おはようございます、佐野です」
「ああ、おはよう佐野君。今日は孫二人と息子が参加するからよろしくな」
松山のおじさんがそう言って息子さんとお孫さんたちを紹介してくれた。
「いつも両親がお世話になっているそうで、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらがお世話になっていますから」
ぺこぺこと頭を下げ合った。
一応車組は養鶏場の駐車場に停めさせてもらうことになっているので、続々と車が入ってきた。
その中には桂木姉妹が乗ってきたのと、相川さんが乗ってきた軽トラがあった。相川さんの軽トラの助手席には誰かが乗っていた。
従弟の本宮さんだった。わざわざN町まで迎えに行ったらしい。
大体集まったところで松山さんに断って山を下りた。麓で待っていた人たちと合流する。
「おはようございます。今日のコースはこの山の周りを掃除していきます。川が側にあったりしますので、危険ですからスマホは電源を切り、終わるまで操作はしないようにしてください」
何よりうちのニワトリたちを勝手に撮るのは許さん。
松山さんのお孫さんが手を挙げた。
「写真とか撮っちゃだめですか?」
「ごみ拾いウォーク中はだめかな。終わって安全なところに移動してからにしてください。それから、でっかいニワトリたちが同行しますが決して写真に撮ったりしないでくださいねー」
「はーい」
村の子たちは心得たもので、いい返事をしてくれた。松山さんのお孫さんたちは首を傾げていた。なんで撮ったらいけないのかわからないのだろう。
「松山さん、すみません。お子さんからカメラやスマホは預かってください。万が一インターネット上に上げられたりしたら危険ですので」
「あっ、はい。そうですね」
松山さんの息子さんにこっそり伝えると、息子さんははっとしたような顔をした。ちょっと頼りないけどここは任せるしかなかった。
今回も子どもたちの数は半分に分かれた。俺と桂木姉妹とユマメイ、相川さんと本宮さんとタマ側で別れ、山の麓の南側と北側に向かってごみ拾いをし、最後に山を登って養鶏場でゴールという形にした。つまりどちらも麓の道を往復してから養鶏場へ向かうことになる。
暑いは暑いけど、早朝はやっぱり空気が澄んでいるような気がする。
タマは相川さんたちと一緒に行ってもらったけど大丈夫だろうか。帰ってから思いっきりつつかれるかもしれないが、それは甘んじて受けようと思った。
それにしてもなんでこんなに煙草の吸殻が多いのか意味がわからん。自分が吸った分ぐらい持って帰れっての。
「おにーさん」
「んー、どうした?」
桂木妹に声をかけられた。着いた時の挨拶以外特に話してはいなかった。
「……多分だけど、知ってる人だったと思うー」
「そっか」
遠目で本宮さんを確認したんだろう。ってことは本宮さんもわかったんだろうな。
相川さんと本宮さんは並ぶと血縁関係があるってことはわかるが、そうでないとわからない。なんとなく雰囲気は似たイケメンなんだけど。あー、やっぱイケメンむかつくなー。
そうしてみんなでビニール袋にごみを拾い、養鶏場まで上った。最後に上りってきついなー。俺が運動不足なだけか? 夏は暑いからあんまり動かないしなぁ。涼しい時間を狙ってまた墓の上からの参道作りを再開しようと思った。
「ゴール! お疲れ様~」
松山さん夫妻と、息子さんの奥さんがBBQの用意をしてくれていた。急いで汗を拭く。
「ありがとうございます。手伝います」
「あらあら、いいのよ。佐野君も相川君も疲れたでしょう?」
おばさんがにこやかに言う。
「いえいえ、人数が人数ですから、やれることはやりますよ」
汗を拭いてニワトリたちからポンチョを回収し、養鶏場には近寄らないよう伝えた。勢いでポンチョを作ってもらったのはいいけど、よく考えたらメイの分はいらなかったよな。でもかわいいからいいだろう。(メイにファスナーはさすがに付けなかった)
桂木姉妹や子どもたちにも手伝ってもらって肉を焼いたり、焼けた肉を運んでもらったりした。本宮さんも最初は戸惑っていたようだが、相川さんが普通に手伝っているので、飲み物など運んだりするのを手伝ってくれた。
タマ、ユマ、メイは子どもたちに捕まってかるーく追っかけっこなんかをしていた。
平和な光景だ。
面倒なことなんて本当に起きないでほしいと思った。
鶏肉がとにかくおいしくて、みんなおなかぽんぽこりんになるまで食べたと思う。これじゃごみ拾いとかしてもらっても赤字なのではないかと思う程だった。
でも不法投棄の処理に金を払うよりはいいよな。
「次回は明後日の14日です。うちの山の麓に今日と同じぐらいの時間に集合してください。保険を申し込むので、参加者は前日昼12時までに俺か、相川さん、湯本さんに連絡をお願いします。お疲れ様でしたー」
みんなでBBQのごみも片付けてお開きになった。
「えー、もっと遊ぶー」
「メイちゃん、帰ろー」
こらこら、うちのメイを連れて帰ろうとするのは止めなさい。子どもたちは人懐っこくて、ちょっと危ない。
「お疲れ様でした」
松山さんご家族にも挨拶をした。息子さんの奥さんはBBQの準備をしていてくれたらしい。ありがたいことである。
「お盆が終ったらまた来てね。打ち上げしましょ」
おばさんに言われて「是非」と即答してしまった。
ニワトリたちを軽トラに乗せようとしたら、桂木さんに呼び止められた。
「……うちの山でもいいんですけど……できれば佐野さんち、お借りできますか?」
目が笑っていない笑顔で言われて、「はい……」と俺は観念したのだった。
ーーーーー
桂木さんの追及が怖い。
次の更新は5/2(火)の予定です。その前にフォロワー20000人記念SSを上げられたら上げますー。
5月はめちゃくちゃ忙しくなるので、予定などよろしければご確認くださいませー
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