604.あらゆることに対して準備を怠ってはいけない

 神社や相川さんちからもらってきたものの片付けをしたり、明日以降の予定を確認したりしていた。

 日中は暑いから家の中で作業をするのが一番だ。

 養鶏場に電話して、足りないものがないか確認した方がいいだろう。松山さん夫妻が主催と言っても養鶏場からはなかなか離れられないだろうから、買い出しなどできることは俺たちがすることになっていた。

 パンと牛乳の注文は相川さんがしておいてくれたというから、明後日雑貨屋へ取りに行けばいい。大量に必要であれば早めに言っておけば手配してくれると聞いたらしく、相川さんが話しておいてくれたのだ。牛乳とパンぐらいなら余ったらみんなで食べてしまえばいい。参加者にその分のお金をもらっているわけじゃないから気楽なもんだ。

 目当てにされても困るけど、せいぜい年に一回だしな。

 養鶏場に電話した。


「もしもし、佐野です」

「ああ、佐野君か。準備とか任せてしまって悪いね」


 松山のおじさんが出た。


「いえいえ。大丈夫ですよ。足りない物とかあれば買ってきますけど、どうですか?」

「そうだなぁ。鶏肉はこっちで用意できるけど豚肉のブロックとかはあった方がいいかもな。一応買ってはあるんだが、どれだけ必要かわからなくてね」

「じゃあ念の為買っていきましょうか」

「悪いね。お代は払うから頼むよ。それから、明後日には息子の家族が来るんだ。多分12日は参加すると思うから、そのつもりでいてくれるかい?」

「わかりました」


 昨年は会わなかったけど、今年は松山さんのお子さん家族にも会えるみたいだ。えーと、おっちゃんちにも顔を出してほしいようなこと言われてるんだよな。おっちゃんちの息子さんたちがこっちに来るのが12日だっけ? スマホのメモに入れておかないと混乱しそうである。

 12日はごみ拾いウォーク当日だし、と。12日っていっても、いつ頃到着するんだろうな?

 13日は山倉さんたちが来るんだよな。圭司さんと将悟君がどうするかの連絡はまだ来ていない。

 とりあえず紙に書いたりして整理することにした。

 ピコッ、コココッ

 メイが土間に入ってきた。なんか鳴き声面白いな。

 普通のニワトリはしゃべれないと思うけど、いろんな音は出せるということは知っている。一時期Yout〇beとかでニワトリを飼ってる人の動画とか見て、ニワトリが出す音が多彩なのだということを学んだ。たまにキョエエ~! とか鳴いてる時あるしな。何やってんだろ。

 ……うちのは規格外だけど。

 メイもしゃべるようになんのかな。

 成長速度は一般的なニワトリと変わらない気はするけど、尾はアイツらと一緒だし。しかもギザギザの歯もあるし。声帯? とかよくわかんないけどあるんだろうか。そこもネットで調べろって? そうだよなー。自分で調べた方が早いだろ。(情報精査は必要である)


「メイ、どうした?」


 土間から俺がいる居間の方にメイが近づいてきた。もしかしたら腹が減ったのかもしれない。手を伸ばして羽を撫でたら気持ちよさそうに目を細める。けっこうわがままな子だけどすんごくかわいいと思う。


「あー、昼か……」


 つっかけを履いて表を見ればユマが草をつついているのが見えた。


「ユマ、ごはんにしよう」

「ゴハンー」


 ユマは頭を上げて嬉しそうに言った。やっぱユマのかわいさは天元突破してるよな。ニワトリバカの自覚は大いにある。

 養鶏場から買ってきた餌と野菜をボウルに入れてユマとメイに出した。

 俺はもらってきた豚肉を焼いて豚丼にした。タマネギと炒めるのがうまい。タマかユマの卵ででっかい目玉焼きを作って乗せればもう完璧だった。


「これがうまいんだよなー。タマにもユマにもありがとうだよな」


 タマは出かけてるけどさ。

 今週のスケジュールを確認してから家の掃除などをした。どうしてもニワトリがいるから土間が汚れるし。

 そういえば、とふと思い出す。もう遅いかもしれないけど稲の花が見られる時期じゃないかな。


「午前中だけなんだっけ」


 昨年は全然意識していなくて見られなかったけど、今年はどうだろう。まぁ見られなくても焦ることはない。俺はずっとここにいるんだし。

 翌日の朝、相川さんからLINEが入った。


「今日従弟がN町の方に到着するんです。申し訳ないのですが、付き合っていただいてもいいですか?」

「ええええ?」


 どういうことなんだろう。

 そんなにフットワークが軽い人なんだろうか。

 昨日相川さんが本人やその家族と話をするようなことを言っていたから、それで触発されてこっちまで来るとか? でもチェーン店とはいえ店長ってそんなに長く休めるもん?

 よくわからなかったが、どちらにせよ今日はN町へ買物に行く予定だったので付き合うことにした。

 問題はユマである。相川さんの従弟に会うというならリンさんも一緒ではないだろうし……。


「弱ったな……」


 今日ユマが遊びに行ってくれればいいのだが、今日も俺の側に付いているつもりみたいだし。


「付き合うのはかまいませんが、ユマを説得するの手伝ってください」


 俺は相川さんにそう返事をしたのだった。

 ユマに拗ねられるのつらいんだよー。



次の更新は6日(木)または7日(金)の予定です。

その前にできれば1300万PV記念SSが書きたい。何がいいかしらー?


コミカライズスタートしましたよー!

読んでいただけると嬉しい。近況ノートにurl貼ってあります。

ポチ、タマ、ユマの尾の動きが素晴らしいのですー♪ タマさんがデレてる!?

https://kakuyomu.jp/users/asagi/news/16817330655216826092


どうぞよろしくお願いします。

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