601.なんかまた起こるのかもしれない?

 相川さんはさすがに疲れた様子だった。

 珍しく顔に皺が見えたような気がする。

 連日だもんな。

 屋台などはまだ神社の隅の方に残っている。これは後で村の人たちが来て片付けるらしい。

 ポチとユマは肉と野菜を食べた後、子どもたちと遊び始めた。ポチは鬼ごっこの鬼役らしく次々と子どもたちを捕まえてふんすとしていた。


「ポチちゃん強すぎー」

「捕まっちゃったー」


 子どもたちはあははははと笑っていた。ユマには女の子たちがくっついて、自分のパーカーをユマに着せ掛けたりしている。去年も似たようなことやってたな。ちなみにポチとユマのポンチョはすでに回収済みである。肉とか食べて汚れたら困るし。


「ニワトリちゃんたち大人気だねー」


 桂木妹がにこにこしながら近づいてきた。


「ああ、子どもに好かれてるな」

「みんなに好かれてるよね~。優しいし強いもんね!」

「強い、よなぁ……」


 俺、絶対勝てないってわかってるし。

 ふと視線を感じてそちらを見ると、相川さんが少し困ったような顔をしていた。どうしたのだろうか。


「ちょっとごめん」


 桂木妹の腕を取って桂木さんのところへ連れて行く。


「え? なに?」

「できるだけ一人にならない方がいいだろ?」


 桂木姉妹はかわいいから、いくら相川さんのところに行くと言っても置き去りにしてはいけないと思ったのだ。


「……だからそーゆーとこ……」

「リエ、諦めなさいよ~」

「そーゆーんじゃないってば。ホント、おにーさんて罪なオトコだよね~」


 何を言っているんだかさっぱりわからなかったが、桂木妹は桂木さんに預けて相川さんの方へ向かった。相川さんは女性が苦手だから連れて行くわけにはいかなかったのだ。


「相川さん、どうかしましたか?」


 疲れているなら早めに帰ってもらってもいいしと思ったけど、そういうわけでもないらしい。


「佐野さん」


 相川さんは俺を見るとほっとした表情を見せた。あれ? これもしかして、なんか問題でも起きたのかな。


「実は従弟がいるんですが……ごみ拾いウォークに参加したいと言っていまして……」

「え? 従弟さん?」


 兄弟がいるとは聞いていたけど、こちらに来たいのは従弟って?


「どうやら昨年何かあったらしいんですよ。それで気分転換がしたいと言い出して……」

「そうなんですか」


 それでごみ拾いウォークに参加かぁ。なんか世捨て人っぽくなりたくなったんだろうか。こんな田舎に来ても出会いなんてないから、出会いを求めているなら合コンとかに行ってほしいけど。

 相川さんは話を聞いてほしそうだったので、片付けが終わってから相川さんちに向かうことにした。タマはいないから大丈夫だろう。

 おっちゃんはどうするのかと思ったら神社に誘われているのだそうだ。


「12日はもしかしたら参加できねえかもしれねえな。明日連絡するよ」

「よろしくお願いします」


 桂木姉妹も楽しく過ごせたようでよかった。


「佐野さん、次は12日ですよね? 養鶏場でしたっけ」

「うん」


 大体肉も野菜も食べ尽くしたところで稲林さんがお開きを宣言してくれた。その後で俺が次回のアナウンスをする。稲林さんの側に向かおうとしたら、ポチとユマが何故か稲林さんとの間に入った。まだ警戒してんのかな?


「今日は参加していただきありがとうございました。次は十二日に養鶏場の側でごみ拾いをします。参加される場合は前日の午前中に俺か、相川さん、もしくは湯本さんにご連絡ください。それから、今回は去年と違って参加するごとに保険料がかかります。今日みたいに徴収させていただきますので、参加される方は一人300円ご用意ください。今日は本当にありがとうございました!」


 みなパチパチと拍手してくれて、どうにか第一回のごみ拾いウォークが終わったのだった。

 さすがに緊張した。片付けをざっとする。この後の片づけは稲林さんたちがしてくれるらしい。


「佐野さん、ありがとうございました」


 稲林さんに礼を言われて戸惑った。


「礼を言われるようなことはしていませんよ。こちらの方がお礼を言わなきゃいけない立場です。いろいろ用意してもらってしまって……」

「こちらが開催していただきたいと言いましたから、それは当たり前です。もしまた機会がありましたらよろしくお願いします」


 深々と頭を下げられてしまい、俺は苦笑した。

 稲林さんが一歩近づく。すると俺の横にいたユマが俺と稲林さんの間に入った。

 やっぱりなんか警戒してるみたいなんだよな。


「ユマ」


 失礼だろうと窘めようとしたら、稲林さんは首を振った。


「いえ、彼らの対応は間違っていませんからいいのですが……お肉が少し余っているので持っていきませんか?」

「え? いいんですか?」

「この日の為に張り切って用意してしまったので、余っても困るのです。よろしければ、ですが……」


 稲林さんは言いづらそうだった。最初会った時は不気味なかんじがしたけど、こうしてみると親しみがある。


「ありがとうございます、いただいていきます!」


 喜んでもらい受けた。豚肉の塊だったので、相川さんと分けることにする。

 稲林さんいい人じゃないか!(俺が単純なのは認める)



次の更新は28日(火)です。


宮爆鶏丁作ってくれましたー?


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