600.神社周りでごみ拾いウォーク開催

とうとう600話ですってよ、奥さん!(誰

ーーーーー


 N町ではそれほど時間はかからなかったが、桂木さんちにポンチョを取りに行ったり明日の話をしたりしたから、帰宅はそれほど早くもならなかった。

 そのせいか戻ったらメイにつつかれ、ユマにしばらくツーンとされた。


「ユマ、メイ、俺が悪かったああああ!」


 切なくなってしまうから勘弁してほしい。明日のごみ拾いウォークの準備をしてるんだよ。頼むよ。

 ってそんなことニワトリたちには関係ないよな。


「メイ、痛いっつーの」


 普通のニワトリサイズになってきたせいかつつかれると普通に痛い。

 明日は神社の周りでごみ拾いである。桂木さんにも明日の時間の確認はしてある。神社にはおっちゃんが連絡してくれているそうだ。もちろん明日はおっちゃんも参加予定である。

 明日はタマとメイが山で留守番だ。

 がんばろうと思った。



 で、翌朝はタマが俺の足の上に乗った。


「……タマ、他の起こし方はないのか……」


 朝からのしっと足が重くなるのも勘弁してほしい。タマは「早く起きないお前が悪い」と言うように俺を見下ろすようにしてから土間へ駆けて行った。相変わらずである。

 まだ世界は暗い。

 どうしても不法投棄とかは暗い時間から夜明けにかけてが多い。村は外灯もそんなに数はないし、全体的に暗いから見つからないと思うのだろう。山の麓の川沿いの道の外灯、LEDとかに換えてもらえないかな。明るいと多少は心理的にも変わると思うんだが。

 そんなことを考えながらニワトリたちに餌をやり、俺も軽く食べた。


「タマ、メイのことよろしくな」

「ワカッター」


 ピヨピヨと返事をするメイはなんだか怒っているように見えた。メイは怒りんぼさんだなぁ。


「じゃあ行ってくる」


 ユマが助手席で、ポチが荷台である。荷台でお餅のようになっているニワトリって本当にかわいいよな。かなりでかいけど。

 神社の駐車場にはもう何台か車が停まっていた。昨夜のお祭りの関係の車もあっただろうと思う。


「わぁっ!?」


 ふと後ろを振り返ったら、白い物がぼうっと浮かび上がって見えて驚いた。稲林さんだった。


「ああ、すみません。驚かせてしまいましたか?」

「あ、あの……その方々って……」


 稲林さんはなんと、両脇に一人ずつ大人の男性を抱えていた。


「不法投棄をしようとしている現場を見てしまいましたので、駐在さんがいらっしゃるまで待っているのです」

「そ、そうなんですか……」


 現行犯逮捕ってやつか。しかし稲林さんてそんなにがっしりしているようには見えないのにすごい力だな。ポチがバサバサと音を立てて下り、ユマと共に俺の前に陣取った。


「そんなに警戒しなくても私は何もしませんよ?」


 稲林さんはそう言って笑った。

 言っちゃなんだけど、どうもこの人の笑みって胡散臭いんだよな。

 失礼なことを考えていたら続々と軽トラが入ってきた。


「お? 稲林さん、それはなんだ?」


 おっちゃんが軽トラから下りてきた。


「不法投棄の現行犯です。今駐在さんがいらっしゃるのを待っています」

「そっかそっか。お疲れ様だなぁ」


 相川さんと桂木姉妹も軽トラから下りてきた。


「え?」

「わぁ……」

「なになにー?」


 稲林さんに抱えられている人たちは苦しそうである。おなかを相当な力で圧迫されているのではないだろうか。自業自得とはいえなんだかなぁと思った。


「昇平、そろそろ集まってくるだろ。準備始めるぞ」

「あ、はい。そうですね。じゃあ、稲林さんまた」

「はい、また」


 みなで気を取り直して準備を始めた。


「相川さん、お疲れ様です」

「え? 大丈夫ですよ」


 お祭りの準備から始めて、今日で何日目になるんだろう。いつものハイスペックな相川さんでも横顔が疲れているように見えた。


「無理はしないでくださいね」


 と声をかけたら目を丸くされた。そんなおかしなことは言ってないと思うんだが。


「もー、佐野さんはそういうとこですよぉ」

「おにーさんはそういうとこだよねー」


 桂木姉妹にわけがわからないことを言われて茶化された。稲林さんは両脇に成人男性を抱えたままにこにこしている。疲れないんだろうかと慄いた。

 参加者が全員集まる前に駐在さんが来て不法投棄の現行犯二人を連行していった。

 BBQなどは神社の方で準備してくれるというから、まずみんなにパンと牛乳を渡してから今日の説明をした。(パンと牛乳も神社で準備してくれた)

 神社のある丘の麓を起点として、右回りと左回りに分かれて周辺のごみ拾いをする。去年も言ったが、スマホや携帯は絶対に取り出さないし、写真も勝手に撮ったりしないよう頼んだ。

 子どもたちは去年も参加した子たちで、ポンチョを身につけたポチとユマに興味津々である。


「なーなーにーちゃん。ポチちゃんとユマちゃん、去年よりでっかくなってねえ?」

「うん、まぁなってるな」


 子どもたちに聞かれて苦笑しながら答えた。


「タマちゃんはー?」

「今回は山で留守番なんだ。ごめんな。14日のうちの山のごみ拾いには全員来るよ」

「養鶏場はー?」

「ポチは参加しないかな」

「そうなんだー」


 子どもたちは残念そうである。そんなにうちのニワトリたちを好きになってくれているのが嬉しいなと思った。


「メインはごみ拾いだよ」

「わかってるけどー」


 ニワトリたちとごみ拾いをするというのが楽しいみたいだ。拾ってるのは各自なんだけどなぁ。

 そんなかんじで、俺はユマと桂木姉妹と共に回り、ポチと相川さん、おっちゃんで回ることになった。子どもたちはキレイに5人5人で別れた。大人たちは丘の周りに立つのと一緒にごみ拾いをする人たちに分かれ、それなりに時間をかけて丁寧にごみを拾った。

 太陽が昇ってくると暑い。やっぱ太陽の光ってすごいんだな。

 終わる頃にはみんな汗だくだった。

 終わってから神社の階段を上るのがきついと思ったけど、子どもたちはポチとユマと共に駆け上っていた。元気だなぁと笑んだ。


「お疲れ様でした」


 稲林さんたちがBBQの準備をしていてくれた。いい匂いがしてきて、みなでとにかく肉を食った。

 自分たちで準備しなくていいのサイコーだなと思ったのだった。



次の更新は28日(火)の予定ですが、前倒しできそうならしますねー。


レビューいただきました。ありがとうございます!


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さあみんなでニワトリ愛を叫ぶんだっ! 〆切は3/27ですよー。

よろしくですー!

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