599.ごみ拾いウォークの準備はバタバタです

 冷めてはいたが、相川さんたちから持たされたシカ串はおっちゃんとおばさんにも好評だったらしい。


「スパイス使いもいいわね~。でも焼きたてが食べたいわ。このピリッとした味がたまらないわ~」

「こりゃあ酒が進むな!」


 おっちゃんがガハハと笑う。二串ずつもらってきたけどぺろりと食べてしまった。

 前にも似たような物をおばさんが作っていた気がするけど、あれとはなんか微妙に違うんだろうか。おいしいということ以外、俺にはよくわからなかった。

 翌朝、タマとユマが卵を産んだみたいだった。

 特に酒も飲まなかったせいか、すんなり起きておっちゃんと畑の手入れを手伝った。西側には田んぼもある。家で食べる分だけ米育ててるってすごいよな。

 作業したせいか朝飯が特にうまかった。


「言ってなかったけど、12日から14日までまた息子たちが帰ってくるの。昇ちゃんも一度ぐらい顔を出してもらえると嬉しいわ」

「わかりました」

「14日がごみ拾いだったか。そうすっと今年は息子たちは参加できないかもなぁ」

「そうですね」


 14日に帰るとなると朝早くからごみ拾いをするのはきついだろう。


「子どもたちが参加したがったら俺が連れていけばいいか」

「そうね。それでもいいかもしれないわ」

「うーん、参加される場合は13日の午前中には電話ください。あ、でもうちも山倉さんたちがいらっしゃるから、相川さんに連絡してもらうようかも……」


 なんだかんだいって忙しいな。相川さんと桂木さんにも連絡しておかないとだ。


「今年の夏も忙しいな」


 そう言うおっちゃんは嬉しそうだ。


「無理はしないでくださいよ」


 元気とは言っても六十歳は過ぎてるんだし。


「年寄り扱いすんな」

「年寄りには違いないのよね。一応気を付けるわね~」


 おばさんがうんうんと頷きながら言う。にこにこしているから気は悪くしていない……と思いたい。


「おいおい」

「若いつもりなのは自分だけなのよ。身体にがたがきているのは間違いないんだから無茶はしないようにしないと。あんまり昇ちゃんたちに迷惑かけると村のおじいさんたちみたいに煙たがられるわよ?」

「そ、それは困るな……」


 珍しくおっちゃんがしおしおとなってしまった。おばさんが一瞬ぺろりと舌を出したのを俺は見逃さなかった。

 おばさんもそれなりに苦労しているみたいである。


「いえいえ、俺はすごく助かってますよ。でも、本当に無理はしてほしくないです」


 思いは伝わったみたいだ。おっちゃんはバツが悪そうな顔をした。

 明日は神社周りのごみ拾いだからそろそろお暇しよう。


「ニワトリたち、見てきますねー」


 すでに庭だか畑の方へ遊びに行っているニワトリたちの様子を見にいった。みんな畑の方にいた。

 ポチとタマは相変わらず山の近くにいる。どうしても上りたいみたいだ。この暑いのに山登りとか勘弁してほしい。


「おーい、そろそろ帰るぞー」


 ポチとタマが振り返る。ユマとメイは俺の側にトットットッと向かってきていた。

 おっちゃんとおばさんに挨拶して、山に戻った。

 スマホを確認する。相川さんと桂木さんからLINEが入っていた。俺と違ってまめだよなと苦笑する。

 ポチとタマは山に戻るなりツッタカターと遊びにいった。なんでそんなに動かなければいられないのか理解できない。ユマとメイはそこらへんで草をつついてるぐらいなのに。


「あんまり暗くならないうちに帰ってこいよー。明日は朝早いからなー!」


 と声をかけたら、クァーッ! と返事があった。多分ポチだろう。律儀なのがいいよなと思う。

 明日の朝は早くから清掃するんだよな、確か。

 相川さんからのLINEを確認する。


「明日の申し込みが現時点で子ども十人です。大人も合わせると二十人ですね。名簿は作ってあるのですが、どうしましょうか」


 明日のBBQは神社の境内でやってくれるらしい。食材や機材なども神社の方で用意してくれると聞いた。去年は先にパンと牛乳を振舞ったという話をしたらそれも用意してくれるという。だから今回俺たちがするのは保険の申し込みぐらいである。

 相川さんは今夜も屋台でシカ串を焼くみたいだから、保険の申し込みは俺が行くことにした。


「ユマ、メイ、ちょっと俺出かけてくるから留守番頼むな」

「ヤダー」


 ピヨピヨ、とメイも鳴く。


「え」


 ちょっと動揺した。


「い、いや……そのな、ユマ。町に用事があるから、連れていけないんだよ。できるだけ早く戻ってくるからさ……」

「……ハヤクー、カエルー」


 ユマにジト目で言われて何度も頷いた。まず相川さんの山に寄らないといけないけど、できるだけ早く戻ってこようと思った。

 おかげで動揺しすぎたせいか桂木さんへの返事を忘れて、町に着いた時またLINEが入っていたのだった。


「佐野さーん。明日ってどうするんでしたっけ?」

「昨夜はお疲れ様。今出先だから戻ったら連絡するよ」


 どうにかそれだけ返した。ポンチョもそういえば受け取ってない。明日はポチとユマが一緒に参加してくれるんだよな。

 ああもう俺ってやつはああああ。

 内心頭を抱えながら、必要な物などを確認しつつ保険の申し込みに向かったのだった。



次の更新は23日(木)です。よろしくー!


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