582.今年のごみ拾いウォークは?

 相川さんは夏祭りの手伝いがあるから相談するには向かないだろう。

 ごみ拾いウォークに昨年関わってくれた人っていうと、後は桂木さんとおっちゃんち、それから養鶏場の松山さんか。

 今年は本当にどうしようかな。

 ごみ拾いウォークって元々お盆の時期の不法投棄対策で開催したんだった。ってことはやっぱり相川さんにも声をかけないとだめか? 負担を増やすようでどうにも悩ましい。

 考えていても話は進まないので、俺はおっちゃんに電話をかけた。他力本願ここに極まれりである。


「ああ、もうそんな時期か。不法投棄対策で昨年は開催したんだったよな」


 おっちゃんは少し何か考えているみたいだった。


人気ひとけがないところが主に狙われるんだよなぁ。ナル山の東側の山も多いとは聞いてるんだ。昇平、お前んとこはできれば一日開催して、後は神社の周りとか、養鶏場の方面でやってみねえか? お前は自分とこの開催と、あとはニワトリを貸してくれりゃあいい。そうすりゃお前らんとこの負担は一日で済むだろ?」

「ええ? それじゃ養鶏場とか神社周りは……」

「まっちゃんと稲林さんに聞いてみるよ。村全体で不法投棄対策を考えてるとわかれば、そういった不審者が減るかもしれねえだろ?」


 稲林さんというと、あの胡散臭い神主? さんだろうか。そもそも神主さんかどうかもわからない。そういえばまだお礼に行ってなかったことを思い出した。ちょっと行ってくるか。


「確かにうちの回数が減ったら助かるけど……おっちゃんの負担が大きすぎない?」

「みんな巻き込むから問題ねえよ。うちもなー、孫たちが今年もごみ広いウォークってあるの? とか聞いてきてんだよ。ニワトリたちを貸し出してくれりゃあ派遣代も払うぞ」


 それは願ってもない申し出だけど、ニワトリはただそこにいるだけだ。


「ニワトリたちには聞いてみるけど……派遣代はいらないよ」

「そう言うなって」


 おっちゃんはガハハと笑って電話を切った。だからどうしておっちゃんたちは俺に金だの労力だの出したがるんだろう。

 そんなに俺って頼りないのかな。そう思って勝手に自分で落ち込んだ。

 なんか俺ってかまってオーラみたいなのが出てるんだろうか。

 明日とりあえずおっちゃんちにお邪魔して話をつめることにした。他に聞きたいこともあるし。

 すっかり夏である。プランターに植えた分のシロツメクサを日陰に置いた。そうするとユマとメイがそこから啄んでくれるのだ。

 ポチとタマはこの暑さなのに相変わらずツッタカターと出かけていった。


「今月はみんな忙しいから何も狩ってくるなよ」


 と言ったら、


「エー」

「エー」

「ンー?」

「ピヨピヨ」


 と返事された。ユマは基本メイと一緒にいるから、狩りにそれほど執着はないらしいが、ポチとタマは何かを狩る気満々である。そのでっかい姿を見ていると、ニワトリって何だろう? と首を傾げてしまうのだ。

 ユマとメイが俺を見て首をコキャッと傾げる。ああもうかわいいな。やっぱりニワトリとは(略)

 おっちゃんちに行くのは明日だから、今日のうちにやれることをやってしまおう。決してそこら中に繁茂している雑草の刈り込みを嫌がったわけではない。うんそう、決してそうではないのだ。(ちょっと現実逃避したい)


「ユマ、メイ、ちょっと神社に行こうと思うんだけど付き合ってもらっていいか?」

「イイヨー」

「ピヨピヨ」


 メイもいちいち返事してくれるのがかわいい。


「よーし、じゃあ行くか」


 行くのはいいけどなんか菓子折りとか持ってった方がいいんだろうか。稲林さんの顔を思い浮かべようとして、顔がしっかり思い出せないことに気づいた。俺は元々人の観察力には長けてないから、ほんの少し会っただけの稲林さんの顔は忘れてしまったのだろう。


「お礼って何がいいんだろうな」


 山唐さんの関係の方だと生肉か? だからって豚肉の冷凍ブロックを持って行くのは違うだろう。

 稲荷神社って神様は狐じゃないんだよな。そしたらお揚げを持ってってもしょうがない。でもなんか稲林さんは狐っぽいような……。

 まさかな。

 ちょっと豆腐屋に行って相談してみよう。もしかしたら神社にお揚げとか卸してるかもしれないし。ってのは冗談だけど。


「先に豆腐屋へ行くぞー」


 メイにはユマと共に助手席のところに座ってもらった。だっこして乗せてみると、普通のニワトリより小さめ程度のサイズであることがわかった。俺が過保護だっただけのようだ。持ってみないとわからないものである。

 つーかうちのニワトリたちがでかすぎるんだっつーの。

 ま、でかいからとても頼もしいけどな。ちょっとやそっとのことじゃびくともしなさそうだ。だから山の中を一日中駆け回ってても気にならないのだ。

 そう考えた時、なんか一瞬頭が痛くなった。何か忘れているような、そんなかんじがした。


「サノー?」


 なかなか軽トラを出さない俺を不信に思ったのか、ユマに声をかけられてはっとした。何か浮かびそうだったものが霧散した。


「ああごめん、なんでもない。じゃ、行くか。しゅっぱーつ!」

「シュッパーツ!」

「ピヨピヨ」


 付き合って言ってくれるのがかわいいよな。ほっこりしてしまう。

 そういえばメイもいずれ話すようになるのかな。

 そんなことを考えながら村に向かったのだった。



ーーーーー

次の更新は24日(火)です。

本日中にまた、佐野君にお知らせしてもらいます。twitter確認してくださっている方はご存知かとは思いますが、またのちほど~♪

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