一年経ってからの八月

581.8月も忙しそうだ

 8月になった。

 山唐さんに桂木姉妹を連れて行きたいということを連絡したら、お盆以降にしてほしいと言われた。桂木姉妹もそれで了承した。


「中華料理楽しみー!」


 桂木妹がウキウキしているらしい。それなりに価格はするので一部は出すけどおごらないよと桂木さんに伝えたら、


「もー、いくらお兄ちゃんだからって佐野さんにたかったりしませんよー」


 と言われた。あんまり女の子にお金は出させたくないのだがしかたない。残念ながらそこまで甲斐性はないのだ。(情けない)

 そんなわけで隣村に行くのはしばらくお預けである。

 今年はお盆が微妙だ。夏祭りは7日、8日の土日でやるらしい。役割分担などは決まったらしく、相川さんたちは6日から準備をして7日の夜は陸奥さんちに泊まるそうだ。ってことは今年の夏祭りは陸奥さんちの辺りが当番なのか。いろいろ忙しそうである。

 メイが生まれて二月経った。

 ひよこの毛は白っぽくなってきたし、首も伸びてきたけどまだまだ頼りない。つーかうちのニワトリたちがでかすぎるんだっつーの。これじゃいつまで経ってもひよこのように思えてしまう。

 ユマはすっかり体型が戻った。夏毛だからそんなに膨らんでは見えないけど、冬になったらまたもっふもふになるんだろうな。

 そんなわけで湯舟には一緒に浸かれない。ユマが湯舟に浸かっていて、


「サノー」


 と呼ぶのだが、「狭いから一緒に入れないよ」と答えるのは毎度のことだ。その度に首をフイとつまらなそうに振られてしまう。そんな姿を見ると、お風呂の増築はいつ頃頼んだらいいだろうかと真面目に考える。

 だってユマかわいい。

 ちなみにメイはまだタライの中でばっしゃんばっしゃんしている。お風呂というより水浴びというかお湯浴びが楽しいみたいだ。

 昼、暑い時期だから今はニワトリたちにもあまりくっつきたくはないけど、触れ合いたくはなる。


「ユマ、ちょっと触っていいか?」

「イイヨー」


 羽を優しく撫でさせてもらった。やっぱりユマさんは天使です。メイがピヨピヨいいながらお尻をフリフリして近づいてきた。自分も撫でろということだろうか。メイにも撫でさせてもらった。幸せだと思う。


「今年はごみ拾いウォークはやらないのかい?」


 雑貨屋へ買物に行ったら聞かれてしまった。


「うーん……ちょっと今年は忙しいので、やってもせいぜい一日ですかね。考えてはみます」

「そうしておくれよ。なんだか知らないけど子どもたちがうるさいんだよ。うちが窓口になったことなんかないのにねぇ」


 雑貨屋のおばさんにぼやかれてしまった。きっとここに俺が買物に来たりするから情報源になっているのかもしれない。

「わかり次第お知らせしますね。申し訳ないです」

 そう言って豚肉と卵だけでなく割れせんも買った。これ硬くてけっこううまいんだよな。

 野菜については先日おっちゃんちで泊まった時にいっぱいもらってしまったのでまだ大丈夫だ。

 ごみ拾いウォークかぁ……と考える。

 お盆の頃の不法投棄対策は今年もどうするか相談するしかないんだよな。

 それも確かに大事なのだが、駐車場とマンションの管理会社が決まりそうなのだ。契約は今月中で、できれば早めに締結させてもらいたい。今は姉ちゃんが窓口になっていていくれるけどたいへんだろう。

 一応苦情の電話は全てこちらへかけるように姉ちゃんも言ってはくれているみたいだが、今のところの窓口は姉ちゃんなので文句を言われることもままあるそうだ。本当に申し訳ないと思う。

 そんなわけで苦情の電話は俺が受けている。


「たいへん申し訳ありません。差額は返金します」

「当たり前だ! もうアンタんとこは使わないからな!」

「はい。本当に申し訳ありませんでした」


 どういうわけか昔からうちの駐車場を利用している人は文句を言ってもそのまま継続して利用してくれるらしい。もちろん差額の返金もするし、菓子折りなども持って謝罪行脚はする予定である。

 反対に最近になって駐車場を借りたという人ほど「もう利用しない!」という人が多い。最近になって借りた人って、元々伯父さんが値上げした状態の金額を見て申し込んできたんだよな? 確か月極で7000円だっけ? 確かに高いけど、それをわかってて申し込んできたのに「高すぎると思ってたんだよ!」とか怒鳴ってくるのはなんでだろう。

 まぁ返金もするし嫌なら利用も止めてくれてかまわないと思う。元々税金対策で貸してるだけだし。

 そんな話を姉ちゃんとしたら、


「あー……そういう人ってさ、性質たちが悪いっていうか。返金だけじゃなくてもっと引き出せないかって思っちゃう人なのかもしれないわ。止めるなら止めてもらってかまわないでしょ」

「うん」

「きっとそういうのわかってないのよね。こっちが毅然とした態度でいれば舐められたりしないから」

「ありがとう」


 実家から足が遠のいていた自分のせいなんだけど、やらなきゃいけないことを考えたら頭が痛くなってきた。


「あー、やってらんねー!」

「ヤッテランネー」

「ヤッテランネー」

「ヤッテランネー」

「ピヨピヨピー」


 思わず笑ってしまった。うちのニワトリたちとひよこがかわいすぎる。つか、こういうことって前にもなかったっけ?


「みんな、ありがとな。和んだよ」


 冷蔵庫を漁る。今日は豚肉があったから夕飯時に出してやった。ホント、肉食のニワトリってなんなんだろうな。


「ごみかぁ……」


 イベントをやる余裕なんてあるかな?


ーーーーー

1000万PVありがとうございますー! 記念SSは週末にでも上げたいと思います。

沢山の方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。

これからも「山暮らし~」をよろしくお願いします。


次の更新は1/20(金)を予定しています。その前になにかお知らせできたらいいなぁ。

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