574.とにかく慌ただしくて困る

 相川さんもポチも余程慌てて向かったのか、落ち着いてみるとところどころ草やごみが付いていた。

 ユマが相川さんを、タマがポチをつついてごみなどを取っていた。メイも真似をしたいのか、俺の足をつついたりしてうろうろしていた。地味に痛い。


「メイ……やめなさい。痛いから……」


 タマとユマは遊んでるんじゃないぞ? まぁでもこういうのも見て覚えるんだろう。

 相川さんはユマにつつかれて少し困ったような顔をしていたが、タマがポチをつついているのを見て合点がいったようだった。


「本当にニワトリさんたちは優秀ですね」


 にこにこしながら言う。そうしてタマとユマチェックを経て、相川さんはうちに入ることができた。俺はポチとタマを急いで洗う。さすがにもう表は暗いが、四阿の灯りのおかげでキレイにしてやることができた。

 ほっとしてあくびが出た。

 しっかり昨夜寝たんだけどな。


「ハクビシンて、どうしたらいいんでしょう……」

「そうですね。以前陸奥さんのお宅で食べさせてもらった時と同じように、鍋にしてもらうのが一番かと思いますよ。また湯本さんに頼むことにはなってしまいますが」

「あ、とりあえず秋本さんに状態だけ確認してからにします」


 確かにあの時食べたハクビシン鍋はなかなかおいしかった。でもあれは確か寒い時期だったような気がする。今の時期のハクビシンってどうなんだろうな?

 ニワトリたちに餌をやっている間に、相川さんが手際よく夕飯を作ってくれた。


「何も持ってこなかったので、すみません」

「いえいえ、十分ですよ! ありがたいです!」


 スープは明日の朝も飲む為に多めに作っていただけると……と言ったらポトフになった。それを煮ている間にごはんを炊いて、ナスとピーマンの甘味噌炒めを作ってもらったらもうごちそうである。漬物も出したから完璧だ。


「なんという贅沢……」

「野菜がいっぱいあるからいいですよね。簡単で本当に……」


 何故相川さんはここで謝ろうとするのか。


「簡単じゃないですよ!」


 鶏肉があってよかった。もらってきたキャベツとタマネギ、ニンジン、ジャガイモを大きめに切って、ぶつ切りの鶏肉とコンソメで煮ただけだというのだがなんでこんなにおいしいのだろう。野菜の甘味がたまりません。

 食べている間に秋本さんから電話がかかってきた。


「佐野君、病変とかは全くなかったし、首から下は全然外傷がないんだがどうする?」

「あー……できればみなさんと食べたいので、おっちゃんちに電話してから返事してもいいですか?」

「わかった。今夜中に頼むな」


 ということでまずは夕飯をしっかり食べた。

 ……それにしても首から下はって……うん、考えたら負けだ。ニワトリたちの方をつい見てしまうけど。

 ポチが俺の視線に気づいたのかコキャッと首を傾げた。でかいのにこういう仕草は本当にかわいい。くそう、ポチのくせに。(意味不明)


「なんでもないよ」


 と答えた。


「そういえば……どこで見つけたんでしょう」

「この山の少し下の方に木のうろがあったんですよ。そこに住みついてたみたいです」

「へえ」


 うちの屋根裏とかにまさか住んでないよな。


「うちの屋根裏も確認した方がいいんですかね」

「そうですね。一応確認はした方がいいかもしれません」


 そんなことを話していたら、タマが近づいてきた。


「タマ?」

「ウチー、イナイー」

「え?」

「ウチー、タマタチー、ダケー」

「あ、そうなのか」

「ソウー」


 タマはそう言うと元いた場所にゆっくりと戻った。タマってすげーなと再認識した。


「……タマさんてすごいですね。僕たちの会話を聞いてなんのことを話してるかわかるなんて、普通は無理ですよ……」


 相川さんがひどく興奮していた。そういえば相川さんもそういう普通じゃないのが好きだったよな。


「確かにすごいですよね」


 洗い物をしてから思い出した。布団とか全然干してないからもしかしたら湿っぽいかもしれない。俺の布団で寝てもらう方がいいかも。そう言ったら、


「布団乾燥機ありますか?」


 と聞かれた。そういえばそんな便利なものがあった。さっそく押し入れに入れてあった布団を出して使ってみた。梅雨対策で除湿器だのそういうのは買ってあるのである。もちろん相川さんからもらった炭もかなり活躍している。


「そういえば、例の件どうなりました?」

「あ……ええと……一応伯父からは手を引かせることはできました。弁護士さんの名刺とか、見せる必要もありませんでしたよ。その節はありがとうございました」

「それならよかったです」


 相川さんもほっとしたみたいだった。心配をさせてしまって申し訳ない。俺から話さなければいけないことだった。

 忘れないうちにおっちゃんちに電話した。


「今度はハクビシンだぁ?」

「はい。俺では調理できないのでもしおばさんができれば、と……」


 おっちゃんがおばさんに聞いてくれて、OKが出た。明日でも明後日でもいいらしい。


「ありがとうございます!」


 そうして秋本さんに無事連絡ができたのだった。

 なんとも慌ただしくて、その夜はユマとメイをお風呂に入れてからすぐに眠ってしまったのだった。



ーーーーー

ポトフにはローリエを入れたい。


850万PVですってよ、奥さん!(誰

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