549.でっかい工作はそんなに好きじゃなくてもいいと思う

 桂木姉妹が着いた。

 今日はタツキさんはお留守番らしい。


「こんにちは~、またお世話になります」

「こんにちはー! ニワトリちゃんたちはあっちー?」

「こんにちは、そうだよ」


 桂木姉妹は挨拶をすると家の中へ入っていった。おばさんの手伝いをするのだろう。桂木さんはそういうものだと思っているみたいだが、妹の方は言いたいことがありそうだとは思う。

 陸奥さんと秋本さんたちも着いた。


「佐野君も相川君も早いな」


 ぺこりと頭を下げた。


「秋本さん。はい、これ」


 相川さんに解体費用などを聞いて多めに入れておいた封筒を渡した。秋本さんはバツが悪そうに頭を掻いた。


「あんまり佐野君からは受け取りたくないんだけどなぁ」

「なんでですか」

「ほら、この時期はあんまりジビエ系の解体もないから、させてもらえるだけでいいんだよ。一部はうちももらってるしな」

「それは当たり前なんで」

「佐野君は無欲だなぁ」


 無欲なんかじゃない。正直そろそろ働きに出た方がいいんじゃないかって思ってるぐらいだ。まぁでも姉からのLINEで収入の目途がつきそうなのは確認したからそこらへんはいいけど。


「もらいすぎだよ。こんなにくれちゃ次はできないから」

「そんな~」


 余分に入れた一枚を丸々返されてしまった。だからみんな俺を甘やかしすぎだと思うのだ。

 相川さんも封筒を渡していたが、秋本さんは中身を改めもしなかった。差別だ。

 そのままおっちゃんと相川さん、陸奥さんはうちの風呂の話を始めてしまった。もうどうとでもしてくれと思う。


「ヒノキ風呂を素人が作るのは難しいぞ? 一本の木から作らねえといけねえしな。素人が作ると水漏れするんじゃねえか?」


 陸奥さんがもっともなことを言った。そうだ、頼むから止めてくれ。


「確かに素人が手を出す分野じゃないかもしれませんね。陸奥さん、職人さんとかに知り合いはいないんですか?」

「それなりに金はかかるだろうが聞いてみるよ。確かにユマちゃんと風呂に入ろうっつったら特注じゃねえともう無理だろうしなぁ」

「……そんなに払えませんて」


 でかい浴槽を設置しようってなったら風呂場の壁も壊さないといけないだろうし、増築なんてなったら百万単位で飛んでいきそうだ。しかしさすがに百万以上は払えない。


「で、予算は?」

「もー……」


 なんでみんなそんなにわくわくしてるのかな。どんだけでっかい工作好きなんだか。


「いくらなんでも百万以上は無理ですよ……」


 仮想通貨でかなり儲かったのは否定しない。みんな、お? という顔になった。


「なんですか?」

「それだけ出せりゃ十分だろ?」


 おっちゃんがにこにこしながら言う。


「資材とかも全部合わせてですよ? 風呂だけで百万は払えません。壁とかも壊すことになるでしょう? その壁の建築費とかも含めてですよ。百万じゃ無理でしょ?」

「……風呂さえどうにかなりゃ問題ないだろ? 資材なんざいくらでもあるんだから」


 陸奥さんが当たり前のように言う。だから、どんだけいろんな物を溜め込んでるんだっつーの。


「風呂の見積もり、聞いてもらっていいですか? それで後は考えましょう」


 相川さんが引き取る。どこの話なんだろう。って、うちか。ちょっと遠い目をしながらそろそろかなと縁側から庭に下りてビニールシートを広げることにした。相川さんと結城さんが手伝ってくれた。ありがたいことである。


「テーブル拭いてちょうだい! 昇ちゃん、準備できたわよー!」

「はーい!」


 おばさんの声が聞こえた。忙しいらしくバタバタしている。おっちゃんが「しょうがねえなぁ」と言って持ってこられた台拭きでテーブルを拭いていた。そう、別に男連中が何もやらないわけではないのだ。台所はおばさんの城だってだけである。

 相川さんと台所へ肉とか野菜がてんこ盛りになったボウルを受け取りに向かい、結城さんは倉庫から飲み物を運んでいく。

 ビニールシートにニワトリたち用の内臓とか野菜をいろいろ広げ、畑の方へ向かった。今日はメイもよく歩いたらしく、畑の真ん中らへんでユマと一緒にいた。


「おーい! 飯だぞー!」


 叫んでからメイはどうしようと思った。ポチとタマがいつもの調子でドドドドドと駆けてくる。さすがに俺は畑の端に避けた。そしてメイを回収し、ユマと共に庭へ移動した。メイはピイピイうるさかったが、メイの歩みに合わせていたらユマがごはんを食べそこなってしまうからしょうがない。


「しょうがないだろー」


 と苦笑してビニールシートの側で下ろした。えらいことに、ポチとタマは待っていた。ユマも揃ったところで「食べていいぞー」と言い、急いで縁側に上がった。血とか飛んでくるのは勘弁である。


「足りなくなったら言えよー!」


 と縁側から声をかける。ココッ! とポチが返事してくれたから大丈夫だろうと思った。

 俺の席は相川さんが確保してくれていて、小皿にはもういろいろな料理を取り分けてもらえていた。相川さんには本当に頭が上がらない。


「ありがとうございます」

「いえいえ、お疲れ様です」


 笑顔のイケメン。その笑顔は俺にじゃなくてもっと他に……と思ったけど今は食べる方が忙しかった。新たなメニューも加わり、またいっぱい食べすぎてしまったのだった。



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今日明日のどちらかでSSを上げる予定ですのでお待ちを~(汗

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