600万PV記念SS「よその家のニワトリ、ユマに出会う」

600万PVありがとうございます。今回は1万フォロワー記念SSの続きのようなものになります。楽しんでいただけると幸いです。

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 毒蛇騒動で村のあちこちへ派遣されているニワトリは、だいたい同じところを二日続けて回ることになっている。

 本日おっちゃんちに来たのはポチとユマだった。

 おっちゃんは苦笑した。


「なぁ、ポチ。今日回るのは昨日と同じところなんだが、大丈夫か?」


 ポチが何か問題でも? と言うように首をコキャッと傾げた。ユマもそれに倣い、同じように傾げる。それだけ見るととてもかわいい光景である。

 相手が身長1m以上もあるニワトリでなければ。


「ま、ポチなら問題ないだろ。ユマもあんなの相手にしないだろうしなー」


 おっちゃんはガハハと笑って軽トラの荷台にポチとユマを乗せ、昨日と同じところへ彼らを運んだ。

 果たして、その辺りの田畑の主人―おじさんが待っていた。


「よう、今日もよろしくなー。あれ? こっちのニワトリは昨日の子とは違うのか? なんかふっくらしててかわいいな」

「比べて見ると特徴あるよなー」


 おじさんはすぐにユマをタマとは違うと気づいたらしい。さすがはニワトリを飼っているおじさんである。

 おじさんはポチに話しかけた。


「ポチ君、昨日君に突っかかってきたニワトリがまた突っかかってくるかもしれないんだが、適当に相手をしてやってくれるかい?」


 ココッとポチは返事をした。かまわないらしい。


「やっぱ昨日のオンドリは今日も放し飼いか」

「ああ、出さないとうるさくてよ。だから絞めるなんて話も出てたんだが……」


 おっちゃんとおじさんがそんな話をしていたら、家の裏手からニワトリの姿が覗いた。どうやら昨日の雄のニワトリらしい。

 ニワトリはポチの姿を見つけたらしく、ドッドッドッドッ! と駆けてきた。

 そしてポチに飛びかかろうとして、また尾でスパーンと叩かれて転がった。


「あははははは! いい根性してるだろ?」


 おじさんが笑う。


「ああ、闘争心は一人前だな」


 おっちゃんは苦笑した。ポチはまだやるのー? と言うように首をコキャッと傾げた。いくらこの雄のニワトリがでかいとは言っても、ポチから見たら子どものようである。それでも雄はバッと立ち上がると、ポチの周りをうろうろし始めた。今度は隙を窺おうとしているらしい。なかなかに見どころがある雄だった。

 そんなニワトリだったが、立ち止まっているポチの周りをうろうろしながらユマを認めた。

 ユマはなんだろうというように雄のニワトリを観察していた。普段は佐野の側にいることが多いので、よそのニワトリを見る機会はほとんどない。

 雄のニワトリはゆっくりとユマに近づいた。

 ユマはそんな雄にコキャッと首を傾げる。

 珍しくポチが動き、雄とユマの間に入ったからさあたいへん。ニワトリは邪魔をするなとばかりにポチに襲いかかろうとして、またスパーンと叩かれてこけた。


「俺の雌にくっつくなってことか?」


 おじさんがのん気に呟く。


「いや……どう考えてもユマの方が強いしな……」


 おっちゃんはいぶかしげな顔をした。佐野のところのニワトリの挙動は、時に予測ができないのである。


「ま、いいか。ポチ、ユマ、そろそろ行くぞ~」


 ココッとポチが返事をする。そしておじさんとおっちゃんの後にポチとユマが続いた。

 その後ろから、昨日のように雄のニワトリもついていく。一緒に田畑の見回りをすることにしたらしかった。

 昨日見なかったようなところをポチが進み、ユマはいるとしたら見つかりそうな場所をつついたりして確認する。雄のニワトリもさすがにパトロールしているポチとユマの邪魔をしたりはしなかった。

 今日は雄のニワトリが得意そうにアオダイショウを捕まえた。


「おお、やっぱニワトリって普通に蛇取るんだな。でもこれはいても困らないヤツだから放してやってくれ」


 おっちゃんがニワトリに言ったが、ニワトリはアオダイショウを咥えたままユマのところへトットットッと向かった。


「求愛か?」


 おじさんが首を傾げた。

 ニワトリは自分よりも大きいユマの前にアオダイショウを落としたが、ユマはアオダイショウに見向きもしなかった。ユマはアオダイショウが捕るべき蛇ではないことを理解していた。

 その後もニワトリはユマに近づこうとしていたが、ポチが間に入ったりしてユマには近づかせなかった。

 おっちゃんはそんな光景を見て、珍しいなと思った。

 本日のパトロールを終えておっちゃんは自分の家に戻った。雄のニワトリは暴れん坊らしいが、飼主のおじさんは「名前どーすっかな」と言っていたから潰されることはないだろう。

 佐野が先に着いていた。


「迎えにきました。ポチ、ユマ、どうだった?」

「ユマはモテモテだったぞ」

「はい?」


 おっちゃんはガハハと笑いながら、目を丸くした佐野に事実だけ教えてあげたのだった。



おしまい。



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これからも「山暮らし~」をよろしくお願いします。


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