509.おっちゃん夫婦が来た
畑の周りにコンパニオンプランツ(野菜や花と一緒に植えることでよい影響をあたえる植物)として今年はマリーゴールドを植えている。
そのマリーゴールドが色鮮やかに咲いている。これを切って墓に供えてもいいかなーと思っていたんだが、気が付くとニワトリがつついていた。水仙とかと違って毒性はないからいいんだけど、ニワトリが直接食ってもいいのかと思ってしまう。(そんなの植えるなよ、俺)パウダーとかは飼料に混ぜられることもあるらしい。
今日はおっちゃんとおばさんが来るということを、昨日ニワトリたちに伝えたら「ナンデー?」と首を傾げて聞かれた。
「メイが見たいんだってさ」
「ワカッター」
「ワカッター」
「ワカッター」
自分たちに用がないことがわかったせいか、今朝は餌を食べた後ポチとタマはいつも通りツッタカターと遊びに出かけた。ユマはメイの面倒を看てくれるらしい。ユマさんの母性がすごくて頭が下がります。
畑の手入れをしたり、川を見に行ったりとやることは山ほどあるのだ。今のうちに布団を干したりもしておいた方がいいし、除湿器やエアコンの調子を確認した方がいい。家の周りの雑草もできるだけ抜かなくては。ああ忙しい。
そんなことをやっている間に車の音が聞こえてきた。おっちゃんが来たようである。雑草を一か所にまとめてから立ち上がった。
「おう、昇平。調子はどうだ?」
「まあまあってとこですね」
帽子が必須な時期だ。陽射しを遮るのもそうだが、ちょっと涼しい日が続くと虫がよく飛ぶ。畑作業をしているとその虫がよくぶつかってきて、大きいものに関してはけっこう痛いのだ。そんなわけで帽子は必須である。(なんで頭にぶつかってくるんだろーな?)
「ひよこは家か」
「はい」
「昇ちゃん、わがままを言ってごめんなさいね~」
おばさんもにこにこしながらやってきた。
「いえいえ。見に来てもらえるのは嬉しいです」
家に二人を案内した。
「ユマー、メイー、おっちゃんとおばさん来たぞー」
声をかけて家のガラス戸を開けたら、またユマが居間の端っこにおなかをつけていた。
ココッとユマが返事をする。
「またメイが土間に下りようとしてたのか。ユマ、ありがとうな~」
ユマに礼を言い、おなかの辺りに埋もれている黄色い羽を見てにまにましてしまった。
「ピィピィピィ」
なんかじたばたしているのがわかる。しかもトカゲっぽい尾も見えてるし。両手でそっと抱えた。
「うちのひよこです」
「おお、かわいいなぁ!」
「まぁ~やっぱりひよこはかわいいわねぇ!」
おっちゃんとおばさんがにこにこしている。
「しっかしこのひよこにもトカゲっぽい尾があるんだな」
「そうねえ。やっぱりユマちゃんかタマちゃんの子なのねえ。すごいわねえ」
おっちゃんとおばさんはしきりにかわいいとすごいを連呼して、そっとひよこを両手で包んだ。
「ピヨピヨピヨ」
「よく鳴いてるわね」
「あっ」
もしかしたらおなかがすいていたりするのかもしれないことに思い至り、一度回収して段ボール箱の中に入れた。いっけね、水も餌も取り替えないと。朝一度替えてはいるのだが、できるだけ新鮮なものの方がいいわけで。飲んでいる横から水を替えたり餌を替えたりしていた。
「いいものを見せてもらったわ。ごはんの準備しちゃっていいのよね?」
「あ、はい。ありがとうございます!」
勝手知ったる他人の台所で、おばさんは持ってきてくれた料理なども含めて手際よく昼飯の準備をしてくれた。
小さめの新じゃがを素揚げしてひき肉と合わせたあんをかけたもの、スナップエンドウと鰹節の炒め、シシ肉の五香などのスパイスをきかせた角煮もある(一緒に煮卵も入っていた)。漬物。うちで小松菜と油揚げの煮浸しも作ってくれた。
「あんまりお肉がなくてごめんね」
「いえいえ。角煮だけでも十分です」
「冷凍でまだシシ肉はそれなりにあるからねぇ。角煮、気に入ってくれるといいんだけど」
けっこうな量を作って持ってきてくれた。
「とってもおいしいです!」
みそ汁は俺が自分で作ったものである。キャベツがすごく食べたくなってキャベツとえのきが入ったみそ汁だ。もう少しキャベツは小さく切った方がよかったかもしれない。
「卵はもちろんタマちゃんやユマちゃんが産んでくれたのが一番だけどね。こういうのもおいしいでしょう?」
「俺、卵ならなんでも好きなので!」
タマとユマの卵が特に好きなだけで、普通の卵だって大好きだ。
「そう? ならいいんだけどね」
どれも冷めててもおいしかった。さすがに角煮は油が固まっていたから少し温めたけどな。
おっちゃんとおばさんは飽きずにメイを観察し、居間をトテトテ歩いてるのを見ればかわいいといい、ポテッと転べば慌てたりもした。普通農家にとってのニワトリとかひよこの扱いってもっと雑だと思う。でもうちのニワトリの子ってだけでこんなにかわいがってもらえるのだから、メイは果報者だと思った。
梅雨前に山の手入れはしっかりしておかないとなんて話をして、おっちゃんとおばさんを見送った。今度訪ねる時は手土産を必ず持って行こうと思うのだった。
ーーーーー
コンパニオンプランツについては興味あれば調べてみてください~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます