491.1年経ってようやく知ったものもある
リンさんは帰りに川に寄り、いくらかザリガニを獲っていってくれた。ありがたいことである。
「やっぱり昨年よりは少ないですね。魚の姿が見えましたよ」
俺はユマの側にいたかったので自由に川を見てもらったのだ。
「釣りとかそのうちしたいですね。でもザリガニが多いうちは無理かな」
「また来させていただければザリガニ掃除だけはしますので」
「よろしくお願いします」
生き物に罪はないが、こればっかりはしょうがないと思う。生態系に影響を及ぼさない程度であればいいが、アメリカザリガニは相当増えたようだった。でもうちの川でこんなに増えたということを考えると、他の山に影響はないのだろうか。うちの山の脇を流れる川は確か、相川さんの山にも繋がっているはずである。それを今更ながら聞いたら、
「ザリガニ、タベル」
リンさんから返事があった。
あ、そうですよね。夜のうちに麓の方の川へ向かい、テンさんも一緒にそういったものを見つけてはバリバリ食べているらしい。絶対夜間は麓の方へ行かないようにします。
「そっかー、そうなるとうちの山だけがたいへんなことになってたんですかね」
「サワ山は川とか湧き水が特に多いですしね。ですから、台風の時期は本当に気を付けてください。何かあったらすぐに声をかけてくださいね?」
まだ台風の話をするには早い気がするが、広域で見るとこんな五月の半ばぐらいでも世界のどこかで発生していたりするから驚く。備えはしておけってことなんだろう。
リンさんはバケツいっぱいにザリガニを獲り、ご機嫌で帰っていった。だから、あんなにいっぱいどこにいたんだっつーの。こわい、うちの川がまだまだこわいです。
相川さんたちが帰ってしばらくもしないうちにポチとタマが帰ってきた。まるで見ていたかのようだったが、そこらへんツッコミはしなかった。タマにつつかれるのはごめんである。(ヘタレ)
ポチとタマの汚れをざっと落とし、家に入れた。スマホの通知が光っていた。確認するとまた桂木さんだった。
「三日後が大安なのでその日にどうですか?」
大安ておめでたい日なんだっけ? 六曜ってわかんないな。
三日後を考えてみる。特に予定はなかったはずだ。
「いいよ。時間を教えてくれ」
そう返信した。
そしたら明日明後日は参道の整備の続きだな。またどんだけ雑草は生えたんだろう。じっとその場で見ていてもわからないのだが、翌日行ったら伸びてたとか普通にあるから、雑草はいつ伸びてるんだよと聞きたい。いいかげん塩まくぞ、コラ。
三日後の11時頃に来てほしいという連絡があった。一応祠のあった場所へ向かうところも、村のおじさんたちに頼んで草木をざっと切り払ってもらったらしい。金があればそうやって頼むのもやぶさかではないが、うちはなんとなく自分でやらなければいけないような気がするのでやることにした。
で、翌日はポチに頼んで午前中付き添ってもらうことにした。タマはとっとと遊びに行っている。ユマは変わらず卵を温め中だ。朝晩はやっぱりまだ涼しいかんじだが、昼はそれなりに気温が上がってくる。玄関のガラス戸を開けるわけにはいかないけど(虫が入ってくる)、居間の窓は全開にし、水と餌は置いてきた。あと、ペットシーツも土間に敷いてきた。相川さんが気を利かせて持ってきてくれたのだ。実のところうちのニワトリたちのトイレは新聞紙を敷いたところだったのだが、夜以外は利用がなかったのだ。(ニワトリ的にも嫌だったらしい)
「これがあればユマさんも快適ですね」
相川さんがそう言って笑んだ。できるイケメンは違う。すんごく眩しいです。
ペットシーツは犬用なのだが耐久性もありのなかなかいいものだと思う。技術ってすごいなと思った。
そんなわけで午前中いっぱい作業をできるようになったのだ。
昨夜試しにペットシーツを使ったニワトリたちは俺を睨んだ。ごめんなさいごめんなさい。でも俺が見る番組のCMにはペットシーツの宣伝とかなかったんだってば。調べろって? ごめんなさい。
「サノー、コレー」
「カッテー」
「カッテー?」
「はい、わかりました。常備します」
うちのニワトリ様たちには逆らえません。
話を戻そう。参道の整備である。その前に墓参りをしたのだが、また雑草がこれでもかと生えている。
「だー! ざーけーんーなー!」
コスモスだけは抜かないようにして抜いて抜いて抜きまくった。
ポチは楽しそうにその周りをウヒョヒョヒョと鳴きながら駆け回っている。ポチ、そんな声も出たのか。びっくりだ。つか、何をやってるんだお前は。
そういえば墓から村の方向にある木、結局切ってもらってないな。今年の冬こそは切るか。杉の木、だよな。チェーンソーだけでは難しいか。栗の木は当然残しておくつもりだ。今年は薬を散布しよう。いくら栗の中にいる虫が食べられるとは聞いていてもさすがに食べたくはない。
あー、でもニワトリがつついて食べてたな。でもそもそも栗を剥いた時に虫出てきたらやだしな。悩ましい問題だ。
こっちがおいしいおいしいって食べてるものは虫だって好きだよなと変に納得したのだった。
ーーーーー
本日はもう一話上げまするー
サポーター連絡:番外編SS、上の部分が切れてました(汗) 修正しましたのでお時間ある時にでも改めて読んでやってくださいませー。ごめんなさい。
★4000ありがとうございますー! これからもがんばります!
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