486.養鶏場でまたごちそうになる

 サラダチキンはそれなりの大きさのが一パック200円だった。


「こんな値段で本当にいいんですか?」

「店に売られてるのはもっと高いはずよ~」

「手間だってかかってるのに……安く売ってくれる必要はないですからね」


 松山のおばさんに釘を刺す。おばさんは苦笑した。


「佐野君は手厳しいわねぇ。いいからごはんを食べてってちょうだい」

「ありがとうございます。いただきます」


 相川さんと一緒にごちそうになった。


「しっかしそんなにシイタケの原木を並べちまったのか。少なくとも三年はできるだろう?」


 松山さんが呆れたように言う。


「そうなんですよね。通常五年ぐらいとは聞いていますけど、五年間もあの量のシイタケを採るのかと思ったら眩暈がしてきました」


 相川さんが苦笑した。


「うちの飼料で使わせてくれるならありがたいな。でも道の駅とかには出さないのかい?」

「ははは……いやあ……」


 相川さんは目を反らしてあさっての方向を見た。


「アンタ、人には事情ってものがあるでしょうがっ!」


 おばさんが料理を運んできた。サラダチキンを使ったサラダ、ほうれん草の胡麻和え、人参の胡麻をかけたサラダのようなものが出てきた。


「あ、ああそうだな。相川君、すまんな」

「いえ。……人見知りが激しいのでそういうのは難しいんですよ。松山さんがもらってくださるなら助かります」

「さすがにただでもらうってわけにはいかないよ。確か大蛇を飼ってるんだったよな?」

「はい」

「じゃあ現物支給でいいかい?」

「はい、そうしていただけると助かります」

「冷凍でもいいのかな?」

「はい、出していただける分で構いません。元々ヒマにあかせて並べたものなので……」

「いやいや、助かるよ」


 おじさんは笑った。おばさんに声をかけられた。


「佐野君、ニワトリに野菜とか食べさせる?」

「あ、野菜くずとかあれば助かります」

「こういうのはどうかしら?」


 ボウルに野菜くずだけでなく普通に食べられるような野菜も入っている。こういうのは突っ込まないものだ。


「ありがとうございます、助かります。ちょっと見てきますね」


 ボウルを持ったまま縁側から下り、駐車場の方へ歩いていく。駐車場から北の方を眺める。南側には養鶏場があるからそっちには行ってないはずだ。タマはどこまで行ったんだろうか。呼ぶほどではないから、戻ってきたらあげればいいだろう。

 そのまま居間に戻り、縁側にボウルを置いた。


「すみません、おばさん。タマが見つからないので戻ってきたらあげてもいいですか?」

「全然かまわないわよー」


 ちょうどおばさんが次の料理を持ってきてくれていた。シイタケの肉詰めが出てきた。シイタケは大きいものを選んでくれたみたいで、詰まっている肉がハンバーグみたいだった。とてもおいしそうである。シイタケも含めた山菜の天ぷらが出てきた。鶏天も出てきた。野菜炒めが出てきたと思ったらそこに豆腐干も使われていた。野菜炒めに使われていた肉は鶏肉である。その他に宮爆鶏丁(鶏肉とピーナッツの炒め)も出てきた。これおいしいんだよな。


「とてもおいしいです……」


 しみじみ呟いた。おばさんたちの料理ってどれもおいしいよな。これで他にごはんがてんこ盛りとみそ汁も出てくるんだぜ。最高だろ。


「たーんとお食べ。今回は品数が少なくてごめんね。ごはんはたけのこごはんだからいっぱい食べてってくれるかい」

「ありがとうございます!」


 筍をお土産に持ってこなくてよかったと思った。

 昼ご飯を食べ終わった頃にタマが戻ってきてくれたので、おばさんから預かったボウルを出した。タマは庭でおいしそうに食べた。いくらそこらじゅうつついてても野菜はあると食べるもんだな。さすがに去年とは違うよな。明らかに食べる量が増えている。ここでニワトリたちの餌を買えることになってよかった。冷蔵庫用の箱ももらってしまったし。


「佐野君は残ったの持って帰る?」

「よろしければいただいていきます!」

「相川君はいらないわよね~」

「おいしかったです。ごちそうさまでした」


 おばさんがフフと笑う。


「そういえば豆腐皮とかいうのをもらってきたんだけど、相川君調理法知らない?」

「包むのに使うといいですよ。つまようじとかで止めれば揚げ物なんかにも使えますし。細切りにして炒めてもいいですしね」

「そうねぇ、ちょっと考えてみようかしら。相川君ありがとうね~」


 シイタケの肉詰めはまだあったらしい。二個ももらってしまってにこにこだ。

 帰り際に松山さんに声をかけられた。


「佐野君、予防接種の日取りが決まったんだけど、木本先生はその日に佐野君の山に向かうから伝えといてくれと言われたんだが」

「あ、はい。ありがとうございます」

「予防接種の代金はうちのニワトリたちと頭割にしてくれるそうだから、後は出張費だけ払ってくれとさ」

「ありがとうございます。助かります!」


 本当にありがたいことだと思った。

 みなさんに助けられて生きてるよな。

 湯本のおばさんにも、相川さんにも謝ろう。もちろんうちのニワトリたちにも。


ーーーーー

精神力の限界がきまして一日一話更新になります~(へろへろ

週末は二話上げられるといいなぁ。。。

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