453.隣山の神様を探しにいってみる
さすがにタマとユマは全力で走ってきたりはしなかった。
タマは俺たちをスルーして木の方へ向かった。またドラゴンさんをつつきに行くようである。ドラゴンさんも大きくなったよな。
「タマちゃん、タツキのお掃除してくれるの? ありがとう~」
「タツキさん随分育ったね」
「そうなんですよ。冬の間ほとんど寝てたのにね~」
ユマは手前で止まり、コキャッと首を傾げるような仕草をした。
「はぁ~」
「近くで見るとますます大きいな。前よりでかくなってないか?」
おじさんたちが顔を引きつらせながら呟く。
「ええ、以前より大きくなってるんですよ。いろいろ頼もしいです」
「そ、そうだな」
「うん……物は言いようだな……」
慣れていない人が至近距離で見たらこういう反応をするんだろう。
「あのー、そろそろ案内していただいてもいいですか?」
桂木さんが苦笑しておじさんたちに声をかけた。おじさんたちははっとした。
「ああ、そうだったね」
「じゃあ行こうか。こっちだ」
おじさんたちは気を取り直したようにゆっくり歩き始めた。タマはドラゴンさんとここに残るようだ。
「私は残ってるねー」
桂木妹が言い、手を振った。
「リエ、残るなら家のことやっといてよ」
「わかった~」
祠を探しに行くメンバーは、先導してくれる妻木さん、元平さん、桂木さん、俺とユマだ。桂木妹とドラゴンさん、タマは留守番である。
「そのでっかいニワトリも一緒に行くのか」
「ええ」
おじさんたちは頭を掻いた。おじさんたちはうちのニワトリたちが怖いのかもしれない。まぁ……あの時のことを思い出せばしょうがないことかもしれない。
桂木姉妹が多少手入れはしているし、おじさんたちもたまに頼まれて草刈りなどをしてはいるようだが、いかんせん山は広い。やぶを払うようにして山の東側に向かって歩くこと約30分。
「確かこの辺りじゃなかったか?」
「そうだな」
真東ではないがこの辺りにあるらしい。
「祠ってどんなかんじなんですか?」
「去年見たかんじだとけっこう朽ちてたから壊れててもおかしくはないんだよなぁ」
桂木さんが聞くと妻木さんはそう答えた。
「壊れちゃってたら、確かにわからないかもしれませんね」
桂木さんも困ったような顔をする。とりあえず朽ちていそうな木の破片なども探すことにし、手分けしてその辺りを歩き回ってみることにした。
木で作った箱のようなものが残っていれば見つけやすいだろうが、ユマには説明が難しい。だから桂木さんについていてもらうことにした。ようは桂木さんの護衛のようなものである。
「ユマ、桂木さんに付いていってもらってもいいか? 桂木さんに何かあったら守ってほしいんだ」
ユマはコキャッと首を傾げたが、ココッと返事をしてくれた。本当にうちのニワトリは優秀である。ユマがトットットッと桂木さんに近づき、軽く桂木さんをつついた。
「わっ! ユマちゃん、一緒に来てくれるの? ありがとう~」
桂木さんはにこにこになった。そして周辺を歩き回ること約30分、やっと元平さんがそれっぽいものを見つけてくれた。もう少し下の方だったようである。
「うわ……」
「壊れてますね……これが、祀られてたのかな?」
箱が壊れて石のようなものが露出している。
「多分これじゃないかと思うんだが……。何が祀られてたのかはさっぱりだな」
「去年のうちに知らせておけばよかったなぁ」
おじさんたちがすまなさそうに言う。とんでもないと桂木さんは首を降った。
「いえ、あったことがわかっただけでもよかったです。こちらがご神体だったら、納める箱があればいいんですよね。でも動かしちゃったらだめなのかな?」
桂木さんが首を傾げる。
「あんまり祀られてるものは動かさねえ方がいいかな」
「せっかく東側にあるからなぁ」
やぶを払えば確かに見晴らしもよさそうだし、太陽の光もしっかり当たりそうだ。それならここに再度祠を建てた方がいいだろう。
「そうですね。じゃあこの石が収まりそうな祠、通販しちゃいます」
「は?」
「なんだって?」
おじさんたちは目を白黒させた。まさか祠を注文するとは思わなかったようだ。でも今は通販とかでもガワだけなら普通に売ってるんだよな。だから桂木さんの考え方も間違ってはいないと思う。
「え? 通信販売で買おうかと……」
「そういうものなのかぁー」
「今はなんでも買えるんだなぁ」
おじさんたちがうんうんが頷いた。今日のところは祠があった周りの草木を軽く刈り、一旦戻ることにした。
「祠なんて作るものだとばっかり思ってたけどな」
「今は通販で買えるのか……」
おじさんたちにとってはカルチャーショックだったのかもしれない。でも今は神棚だってホームセンターで買えるしな~。
「神棚はホームセンターで買えますよね」
ぼそっと呟いたら、「それもそうか」と納得していた。神棚がホームセンターで売っているのは知っているようだ。神棚だけでなく一緒に飾るものなども売っているから買い替えとかで知ったのかもしれない。
行きは見つけるまでに一時間もかかったが、帰りは20分ぐらいで桂木さんの家に戻ることができた。
「ユマちゃん、付き添ってくれてありがとうね~」
ユマはココッと鳴くと、俺のところへ戻ってきた。羽を撫でる。ユマは心なしか嬉しそうに見えた。
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