342.物事はもっと丁寧にしたい

 そういえば四阿を作るという話はどこへいったんだっけか。

 いや、みんな忘れているならそれはそれでいいんだ、うん。

 その日の朝は晴天だった。庭は特に雪かきもしていないので真っ白である。でも洗濯物が干したいので物干し竿のあるところまでと、物干し竿の周りの雪はどけた。昨日のうちにやっておけばよかったと後悔した。さすがに一日ほっておくと固くなってしまった。

 手抜きをするとすぐこれだから優先順位は考えないといけないんだよな。

 今日もポチとタマが遊びに出かけた。タマは雪が嫌いみたいなのだがリンさんほどではないらしい。おかげで昨日も雪まみれになって平然と戻ってきた。もう少し身体の雪を払ってきてほしかった。ポチは雪が好きかもしれない。時々雪に向かってダーイブ! とかやっているのを見てしまった。あれ、大丈夫なんだろうかと少し心配した。やっぱり男は幼いというか歳相応と言おうか、うちの女子たちが大人びてるだけだよな、うん。でもユマは無邪気で幼いかんじだ。タマが大人びてるだけなのか。

 洗濯物を干していたら周りでユマがうろうろしていた。雪をどけたところとそうでないところがあってそれが楽しいみたいだった。いいかげんにどけたので境目で雪が盛り上がっている。それをぴょんぴょんと跳んで遊んでいた。


「ヘンー?」


 とかコキャッと首を傾げながら跳んでいるのがいちいちかわいかった。

 しかし見た目は俺の胸辺りまであるでっかいニワトリである。しかもトカゲっぽい鱗がある尾付きで口を開けたらギザギザの歯が並んでいる仕様だ。冷静に見ると怖いのかもしれないが、うちの子たちはみんなかわいい。

 洗濯物を無事干して、山の上に向かって手を合わせた。今日も見守っていただきありがとうございます。

 昼前に相川さんからLINEが入った。やっぱりうちのニワトリたちに陸奥さんの土地の見回りをしてほしいそうだ。昼食付で日当も払うと書いてある。以前蛇を捕まえた時の日当はどれぐらいだったかな。ちなみに陸奥さんたちにうちの裏山を回ってもらったのは陸奥さんたちから申し出があったからなので、こちらは特に日当などは払っていない。

 いつもお世話になっているから日当はいらないと言いたいところだけど、そういうものは受け取らないといけないらしい。


「礼ももらわずに引き受けてたら食い物にされちまうぞ。そうじゃなくたって世の中図々しい奴は多いんだ。もらえるものはもらって、ただでなんかさせようっつー輩は避けるんだぞ」


 おっちゃんや陸奥さんの弁である。そう言われると蛇退治にニワトリたちを貸し出した時を思い出した。そういえば村の年寄りが何やら言っていたっけ。俺が何かやる分にはいいけど、ニワトリにさせて当然という言い方は嫌だった。(あの後、おっちゃんが村の年寄りはああいう言い方をしているだけだと困ったように教えてくれた。おっちゃんも苦労性である)俺は周りにも恵まれてるよなとしみじみ思った。


「ニワトリたちに確認してから返事します。いつ頃からがいいですか? 期間はどれぐらいでしょう?」


 直接陸奥さんとやりとりしてもいいのだが、相川さんがそこらへんの調整はしてくれるというので甘えている。新参者にはわからない機微のようなものがあるのだろう。

 ニワトリたちにはまだはっきりしていなかったので話してはいない。ニワトリたちがその気になったとして、中止になってしまったら可哀想だからだ。全員一緒にいる時の方がいいだろうと、ユマにも特に話さなかった。

 暗くなる前にポチとタマがまた雪まみれで帰ってきた。もう少し雪を避けるということはできないのだろうか。お湯は余分に作ってあるからいいけどさ。

 二羽をよく洗い、タオルドライしてから家に入れた。その頃には相川さんから詳細の返事がきていた。

 早ければ早いほどいい。最短で明後日から一週間ほどという話だった。


「ポチ、タマ、ユマ、陸奥さんの森の見回りを頼まれてるんだがやってくれるか? 明後日からなんだけど」

「イクー」

「イクー」

「イクー」


 三羽共即答だった。


「何日も続けていくんだが、いいか?」

「イクー」

「イクー」

「……オトマリー?」


 ユマが不安そうに首をコキャッと傾げた。すっごくかわいい。じゃなくて、


「日帰りだ。泊りは……そんなにしないと思う」


 せいぜいまた宴会がある時ぐらいだろう。


「イクー」

「じゃあ返事しとくなー」


 ただの見回りだからな? 積極的になんか狩らなくていいからな? と思ったけどニワトリたちは狩りをする気満々のようだった。なんでそんなにうちのニワトリたちは血の気が多いんだよ。狩猟民族かよ。


「明後日からで問題ありません。日帰りにする予定です」


 相川さんにさっそく返事をした。いくら敷地が広いからって他の家も近くにあるのだ。ニワトリたちの鳴き声で近所迷惑をするわけにはいかない。けっこうニワトリの鳴き声って響くしな。


「わかりました。伝えておきます」


 すぐに返事がきた。それから寝るまでの間に陸奥さんとも確認は取れたということで、明後日の朝陸奥さん宅にお邪魔することになったのだった。

 ニワトリ出張再び! である。感覚的にはもしかしたら再々登場ぐらいかもしれない。


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