341.雪が止むと寒いのはお約束なのか

 労働の後の飯はうまい。

 今夜は味噌漬けにしてあったシシ肉を焼いてシシ肉丼にした。たまらん。漬物もいただいてきたので食べた。うまい。

 ニワトリたちの夕飯は松山さんのところで買ってきた餌にシカ肉を足したものだ。みんな喜んで食べている。よかったよかった。

 雪は夜になっても止まなかった。ニュースをつけて雨雲レーダーみたいなのを見たらうちの辺りは真っ白だった。村もまだ降っているのかもしれない。一応予報では明日の朝までには止むらしい。あくまで予報だから参考程度にしかならないけど。

 降り方が変わらなければそれほど心配もないだろうと、ユマと風呂に入ってから寝た。

 ユマはやっぱり他の家だと風呂に入れないのが不満のようだ。洗ってから入るとはいえ羽が抜けないわけじゃないし、やっぱり足元に砂のようなものは溜まる。ほんの少しだからうちでは気にはならないけど、他の人のうちで風呂に入れろとは絶対に言えない。そう考えるとよく相川さんは入れさせてくれたなーと思ったのだが、あそこの風呂は下にすのこを敷いている。また砂だか土が~と気になるような状態ではなかった。

 翌朝、更に世界は白かった。

 昨夜は雨戸を閉めていた。雨戸を開けると、銀世界が広がっていた。

 わあ、キレイだなー……。

 遠い目をしたくなる。また雪かき決定だった。

 幸い雪は止んでいたのでニワトリたちに頼んで麓までの道の雪かきをしてもらった。往復すれば雪も大体なくなるだろう。途中折れて道を塞いでいるような木などはなかったようだ。もちろん俺も軽トラで付いていった。

 俺はまた屋根の雪下ろしを慎重にした。身体がけっこう痛い。多分筋肉痛だろう。

 そんな風に過ごして昼になった。

 桂木さんからLINEが入ってきた。


「実家に帰ろうと思ったのに雪ー!」


 絶望したような絵のスタンプもついていた。どこで見つけるんだろうこういうの。


「急がなくていいんじゃないかな。帰る時は気をつけて帰りなよ~」


 そう返事をした。そういえば実家から戻ったらまた山の上に戻るんだろうか。それとも春になるまではN町で過ごすのだろうか。これから更に雪が降るって聞いているから、山の上に戻るというのはないだろう。


「妹が免許を無事取れたら会いに行きます」


 なにしに? と返しそうになった。いかんいかん。挨拶に、だろう。気にすることないのになと思った。


「無理はしなくていいよ。あんまり急がない方がいいんじゃないかな」


 春はまだ遠いんだし。


「あーもう……早く村に戻りたいですー」


 雪深いのに奇特だなと思う。知り合いがいるところの方が安心するってやつなのか。ドラゴンさんに会いたいのかもしれない。


「焦りは禁物だよ」


 そう返したら既読だけついた。余計なことを書いたかもしれない。ま、いっかと思ってニワトリたちに昼食をあげた後は自由時間にした。

 寒すぎて洗濯物を外に干せない。何も考えないで干したらカチンコチンになりそうだ。

 あれ? でもバナナはそう簡単に凍らないんじゃなかったかな。

 その日はもう雪は降らなかった。

 その翌朝は晴天だった。相川さんからLINEが入った。近々天気を見ながら炭を作ると書いてあった。枯れ枝を拾わないとと思った。

 炭にする木はコナラやクヌギを使うそうだ。スマホで確認する。けっこううちの山にも生えている木だった。


「炭作りは佐野さんも参加されるんですよね?」

「はい、お願いします」


 火の状態を見ながら約一週間ぐらいかけて作るそうだ。以前おっちゃんと短期集中で作ったことがあったが、ああいうやり方でもできないことはないけど、それほどいいものはできないという話だった。二人しかいなかったんだからしょうがない。後は材によります、と相川さんは言っていた。ホント、そこらへんは全くわからない。

 炭を作るなら何人かで交替して作ることになるので、一週間ずっと詰めている必要はないらしい。それならば付き合えるだろうと思われた。うちも炭ほしいしな。

 すでに炭用の木材は伐採してあるそうだ。いつ作業をしていたのか本当に謎である。すでに二週間ぐらい経っているのでそろそろ炭焼きを始めたいと言っていた。


「そういえば、雪大丈夫でしたか?」


 今更な質問をすると、


「リンがとてもがんばっていました」


 と返ってきた。

 うん、とってもとってもがんばったんだろうな。尾で雪を勢いよく払っていたリンさんの姿が思い出された。あれはすごかった。


「佐野さんちは大丈夫だったんですよね?」

「はい。うちはニワトリたちががんばってくれました」


 また連絡をくれるということでLINEのやり取りは終わったが、夜になって今度は電話がかかってきた。


「もしもし、相川さん?」

「お伝えし忘れていました。陸奥さんの北側にある森というか雑木林ですか、あそこをニワトリさんたちに巡回してほしいような話がありましたよ」

「あー、そういえばそんなこと言ってましたね……」


 また明日連絡をくれるということだったのでそこで話は終わった。

 ニワトリたちはまた出張だろうか。明日連絡が来て詳しい話を聞いてから、ニワトリたちに聞いてみようと思った。

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