286.年末の平和な一日

 何もない日は掃除・洗濯日和だ。寒いけど家中の窓を開けてぱたぱたとはたきをかける。なんかここにきてからいろいろやるようになったよなと思う。一人になると全て自分だけでやらざるをえなくなるから、自然とやるようになるんだろうか。料理はいつまで経っても適当だけどな。ここらへんは得手不得手があると思う。

 今日もいい天気だ。天気予報を見たら明日は曇みたいな予報になっていた。どこにも何も降らなければいいんだが、山の天気は読めないからな。

 山専用の天気予報とかないものだろうか。そんなアプリあったっけ? でもピンポイントでこの辺りの山の予報とかはなぁ……。

 今朝はいつも通りポチとタマが遊びに行った。

 いつもは全く気にならないのだが、なんだか今日は気になって行先を聞いてみた。


「今日はどこへ行くんだ? ココ? それともあっちか?」


 ココと言った時は地面を指さし、あっちと言った時は裏山を指さした。


「アッチー」

「アッチー」


 即答である。なんだか嫌な予感がした。一昨日確か、あと少しでイノシシが捕まえられそうみたいなことを陸奥さんが言っていなかっただろうか?

 もう行っていい? というように足がタシタシしている。捕まえたって持って来られないだろ? って思うんだがそんなことはうちのニワトリたちには通じない。


「イノシシ、は見つけても狩るなよ? また今度陸奥さんたちが来てからにしてくれ」

「エー」

「エー」


 やっぱり狩ってくるつもりだったらしい。


「あのなぁ……俺一人じゃ運べないだろ? あと今の時期はみんな忙しいから来られないんだよ。諦めろ」

「……ワカッター」

「……ワカッター」

「よろしくな。そのうちまた陸奥さんたちが来るはずだから、その時に狩ってくれよ?」

「ワカッター!」

「ワカッター!」


 うんうん、うちのニワトリたちはイイ子だ。わかってくれてほっとした。俺も察しがよくなったものだ。それでも行く場所は予定通り裏山らしい。偵察に行ってくるのかもしれなかった。


「明日は相川さんちに行くからほどほどになー」


 と、こんなかんじで二羽を送り出してから家事をしていたのだ。一通り家事を終えてからユマと川を見に行った。川の側にあるろ過装置には異常はない。その先にあるパイプも問題はなかった。今の時期はいつ水が凍ってもおかしくないから夕方になるとうちでは少しずつだが出しっぱなしにしている。水を動かしておかないとパイプの中が凍って水が出なくなってしまうのだ。

 川の周りは何もしていないから雪が残っていて危ない。なので少し遠目で確認するぐらいしかできなかった。異常がないということを確認するのも大事だ。ユマは平気で固まった雪の上に乗ってつついたりしている。雪、っつーか氷になったのを食べてるのかな。それとも雪の下になにかいるんだろうか。

 今日はうちの周りをゆっくり歩いて畑だの、廃屋跡だのを確認して戻った。今日はのんびりする日と決めたのだが、12月30日だと思ったらなんか落ち着かなくなった。門松も置いたし、しめ飾りも飾った。他にやることなんてないはずなのになんでなんだろう。

 昼間からなんとなくTVをつけたけど、普段から昼間なんかTVをつける習慣がないからいつもとどう違うのかわからなかった。


「やること……やること……飯食うか……」


 とりあえずユマの昼ごはんを用意する。炭焼き小屋は見に行かなくてもいいだろう。あれから雪が降ったわけでもないし。

 あ、でも。枯れ枝は集めた方がいいかもしれないなと思った。ついつい忘れてしまう。木だの枝だのを切るのは休眠期に当たる9月から3月がいいんだよな? でも間伐だけだったらいつでもいいのか? そこらへんも調べてわからなければ聞くべきだろう。

 お昼ごはんは漬物と卵炒めにした。ごはんはもりもり食べる。みそ汁はなめこ汁だ。なめこはおっちゃんちで栽培しているのでいただいてきたものである。なんだかんだいってきのこを自家栽培しているうちは多いようだ。山で直接きのこをとる人もいるが、おっちゃんはよくわからないので山では採取しないと言っていた気がする。他の山菜は採るみたいだけどな。


「なめこ汁うまいなー……」


 俺も栽培した方がいいんだろうか。

 午後は炭焼き小屋の近くで枯れ枝を拾い集めた。

 明日はとうとう大晦日だ。

 相川さんがごちそうを作って待っているようなことを言っていた。相川さんの料理もおいしいから楽しみだった。

 ポチとタマは狩りはしてこなかった。イイ子たちだ。でもどこを走ってきたのかとんでもなく汚れていた。内心ため息をつきながらいつも通りだなと二羽を洗った。

 夕飯にはシカの内臓を出したので、家の前にビニールシートを敷いて食べさせた。あまり暗くなる前に、と思ったけどこの時期なのですぐに暗くなってしまった。暗い中で嘴が赤黒くなっているニワトリってやっぱホラーだな。いや、ホラーというかパニック映画の様相だ。食べ終えてから洗えばよかったなと思った。これ、前にも思ったような気がする。

 でもニワトリたちが満足そうだったからいいことにした。


ーーーーー

近況ノートに書いた通り、「虎又さんとお嫁さん~イージーモードな山暮らし~」の連載を開始しました。

https://kakuyomu.jp/works/16817139556261771572

山暮らしのスピンオフです。

結婚して山暮らしを始めた夫婦の物語です。なんかいろいろ不思議ですが、楽しく暮らしていきます。ハッピーエンド。

すでに完結している話ですので、修正しながら毎日1話ずつ上げていきます。よろしくー!


レビューコメントもいただきました! ありがとうございます。

これからもよろしくですー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る