273.いつも通りに行動したらそうなってもしかたない
みそ汁にみそ汁を足すみたいな作り方になったしまったが、少ないよりはいいだろう。だし入りみそもいいと思うし、だしパックも素晴らしい。おかげで毎日おいしいみそ汁が飲めるのだから幸せだと思う。
今日のみそ汁の具はわかめとキャベツだ。ニワトリたちにはキャベツはあげられないけど(諸説あります)、こっちが食べる分にはいいだろう。意外とあげちゃいけないものって多いんだよな。こっちが気をつけていればいいだけだ。
せっかく晴れたので物干し竿を拭いて布団を干した。でも寒いは寒いからすぐ取り込むことにする。洗濯もやってしまおうか。
寒いから温かい食べ物があった方がいいだろうと、白菜のくたくた煮を作ってみる。生姜とバラ肉を炒めたら白菜をてんこ盛りに詰めてほんの少しだけ水を入れ、コンソメと塩胡椒で味付けをしたら蓋をして煮るだけだ。後で味をみて、薄かったら追加すればいいだろう。白菜ってすんごく水が出るんだよな。前に知らなくて、他の煮物を作る時みたいに水を入れたら鍋から溢れてたいへんなことになった。それもまた勉強なんだろうな。
ユマと畑の様子を見たりしていたら、陸奥さんたちが戻ってきた。
「いやー、さすがに寒いな~」
「しばれるね~」
陸奥さんと戸山さんがそう言いながら歩いてきたが、笑顔である。本当に動くのが好きなんだなと感心した。ポチとタマは相変わらず元気だ。雪まみれになっている。いったいどこにどう突っ込むとああなるんだろうか。相川さんも楽しそうだった。
「おかえりなさい、どうでしたか?」
「ああ、一二本木が倒れてるぐらいで影響はねえよ。ただ……まぁとにかく歩きづれえな」
「ですよね」
さすがに山の中で雪かきはしないし、ましてや陸奥さんたちが行っているのは裏の山だ。俺が足を踏み入れたのも一回きりというほぼ手付かずの山である。
「……ところで、なんでポチとタマはあんなに……」
「いやー、佐野君ちのニワトリは面白いね。いつも通りに走ろうとして何度もこけてあの通りだよ」
「……えええ」
もしかしてうちのニワトリは学習しない子たちなのか? ちょっとそれは問題だぞ。
「ポチ、タマ……足とか痛くないか?」
もし無理がたたって足をくじいていたりしたらたいへんだ。でも足を引きずっている様子もないから大丈夫だろうか。
ポチとタマが何言ってんの? というようにコキャッと首を傾げた。一応心配してるんだけどな。二羽はそのまま少しうちから離れたところまでタッタッタッと走って行ったかと思うと、ステーンとこけた。
「ポ、ポチ~、タマああああ~~~~っっ!!」
「ぶははははははっっ!!」
「あははははははっっ!!」
「ぶっ……!」
慌てて駆け寄ったが、その時にはすでに二羽はむっくし起きていた。そして俺を睨む。
「ポチ、タマ、大丈夫か?」
二羽がフイッとそっぽを向いてトットットッと離れていった。
……うん、まぁ多分恥ずかしかったんだろうな。
「ポチー、タマー、昼飯用意しておくからなー!」
クァーッ! っと返事があったから大丈夫だろう。家の方に戻るとまだみんな笑っていた。気持ちはよくわかるけど、うちの大事なニワトリたちなんで。
「すっげえな……ニワトリおもしれー……」
「ステーンって、ステーンって……マンガじゃないんだからっ……」
「くっ、くくっ……!」
三者三様である。あれは笑ってもしょうがない。俺も人様のペットだったら超笑ってると思う。
「昼飯にしませんか」
「ああ、そうだな」
「そ、そうだねー」
「そう、ですね……」
ユマも促して家の中に入った。その後はいつも通りである。みそ汁と漬物の他にくたくた煮を足しただけだ。
「おー、佐野君。いつもありがとうなー」
「白菜おいしいねぇ」
「温かいものは嬉しいですね」
「白菜はまだあるので、よかったら食べていってください」
みんなにこにこである。おにぎりが冷たいのが気になったのでレンジでチンして渡した。ただレンジだと熱が均一に伝わらなかったりするので注意が必要ではある。そこらへんは伝えて、みんなでお昼にした。その頃にはポチとタマもこそっと戻ってきたので、(でかいから全然こっそりになっていない)お昼ごはんを出してあげたりした。
「今日も裏山まで行かれたんですか?」
「ああ、ほんの少しだけだがな。やっぱ雪のおかげで足を取られることが多い。まぁまたのんびり調査するさ」
「歩くのはたいへんだけど、雪の中ってのもまた風情があっていいよね~」
「背景が白いですから、イノシシとか見つかるといいですよね」
「そりゃあもう少し奥まで行かないと無理だろ」
そんなことを言い合いながらもみな笑顔だ。ただ思った通りやはりあまり捗らなかったようだ。晴れるは晴れるけど気温が低いからなかなか溶けないんだろうな。
午後もまた調査に行くらしい。元気だなと思った。もちろん少し見回ったら戻ってくるらしい。日が落ちたら今以上に寒くなるからね。みんなを送り出してから布団でも取り込むかと踵を返したところでLINEが入った。桂木さんだった。そういうば桂木さんの山はどうなっているだろうと今頃になって考えた。俺も大概薄情だよな。
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