247.うちの山の周辺状況について聞いてみる

 ハンターマップというのがあるらしい。それを見ると鳥獣保護区とかがおおまかにわかるのだという。俺とか相川さん、桂木さんの山は私有地の為特に鳥獣保護区には指定はされていないようだ。鳥獣保護区だったらどうしようかと思った。つか、人んちの土地を勝手に鳥獣保護区にすんな。(してない)

 国有林だと鳥獣保護区とか特別保護地区に重なる場所もそれなりにあるらしく、ハンターマップを確認する必要があるようだ。

 翌日陸奥さんたちがうちの居間でハンターマップを確認していた。


「佐野君と相川君の裏山の奥は今年は大丈夫だ。ただ、桂木の嬢ちゃんの東側の山はだめだな」

「え? 桂木さんの東側の山って、確か人が住んでるって聞いたような気がしますけど」

「管理人がいるんじゃねえか? あそこは隣村の管轄だしな。あの山から南東に向かって斜めに位置する三座は特別保護区になってる」


 南東に向かって三座というと陸奥さんちや養鶏場がある方面だ。松山さんの山の裏の方が国有林で、更に特別保護区になっているようだ。人が住んでいるみたいだとか、噂というものがどれだけあてにならないものかということがよくわかる。


「まぁ……桂木さんの山の奥に向かう車なんて見たことないですもんね……」


 俺が言っても全然信憑性はないけど。そんなに山下りて川沿いの道を観察しているわけでもないし。桂木さんの山の麓の川には村に向かう為の橋がかかっているが、その先の道は東の山に続いているのみだ。桂木さんの山の先まで行ったことはないから知らないけど、確か東の山で行き止まりだったはずである。今度ちょっと行ってみようかなと思った。ここにきてもう十か月近く経つけど意外と知らないものだ。


「鳥獣保護区じゃねえなら特に気がねすることもないな」

「よかったね~」


 陸奥さんがそう言っているということは更に裏の山まで遠征することもあるということなんだろうか。山を二つ三つ越えて猟をするとかすごいなぁと思う。


「山によって広さってけっこう違うんですね」


 ハンターマップを見せてもらいながら、周りの山を確認する。最近はネット上でも確認ができるようだ。後でパソコンから確認してみようと思った。


「ああ、高さも規模も全然違うぞ」


 特別保護区になっている範囲は三座のようだが、広さがハンパない。下の村と隣村の境の山がそうだから、もしかしたら境界線の意味合いもあるのかなと思った。


「そういえば隣村って何かあるんですか?」

「……向かうにも遠いしな。親戚でもいなきゃ行かねえだろ。知ってるか?」

「湧き水がおいしいみたいなことは聞いたことがあるけどそれぐらいかなぁ」

「村の外れの駐在さんに聞いた方が早いかもな」


 そういえば村の東側の駐在さんは隣村と行き来しているんだっけか。なにせ範囲が広いから移動するのもたいへんそうだ。


「確か小さい蕎麦屋が一軒あるぐらいだったかな。村外れまで行くと豆腐屋があるとは教えてもらいましたが、この村にも豆腐屋はありますしね」


 相川さんが教えてくれた。隣村まで行ったことがあるらしい。


「蕎麦屋かぁ。味はどうでした」

「さすが水がおいしいだけのことはありましたね。珍しいなと思ったのは、コイの天ぷらがあることぐらいでしたか……」


 コイと聞いてみな微妙な顔をした。どうしてもコイというと泥臭いイメージがある。


「……食べました?」

「ええ、珍しいなと思って頼んでみました。全然泥臭くなくておいしかったですよ」

「へー、やっぱり水がいいんですかね」


 そうは聞いたもののわざわざ蕎麦とコイの天ぷらを食べに隣村まで行くかというと微妙だ。行くにしても早くて来年の夏頃だろう。行く行く言っておいて行く行く詐欺になりかねない。夏は夏で忙しいしな。……主に雑草刈りで。


「ここでダベッててもしょうがねえ。行くぞ」

「そうだね~」

「はい」


 家の表からニワトリたちの顔がまだー? というように覗いたところで陸奥さんたちが立ち上がった。


「じゃあ昼頃に一旦戻ってくる」

「はい。行ってらっしゃい、気をつけて」


 陸奥さんたちとポチとタマを見送った。


「ユマも出かけたかったら一緒に行ってきてもいいんだからな」


 ユマに言うと、ユマはすぐにあさっての方向を見やった。運動が足りているのかとか少し心配になってしまう。でも風呂で触った感じ、たるんでる気配は全くないんだよな。ポチはオスだから肉付きも違うだろうし、そうなるとタマに触れさせてもらうかだけど……すごい勢いでつつかれそうだ。これは春を待って獣医の木本さんに確認してもらった方がいいだろう。ユマがメタボになったら困る。え? 俺が動けって? そうとも言うな。


「さー、今日は障子を張り替えるかー」


 障子を全部外し、刷毛で障子の桟に水を塗り少し放置。(半分はガラス障子なのでその部分は変えなくて大丈夫だ)それからびりびり破いて剥がしていった。ユマもつんつんつついて手伝ってくれた。桟に残った紙などをキレイに剥がし、天日で少し乾かす。あんまり天日に晒しておくと歪んでしまったりすると親が言っていたが本当だろうか。十分に乾かしてからプラスチック製の障子紙を張った。これで来年は張り替えなくてもいいだろう。のりをむらなく塗ったりと、意外と気を遣う作業だった。


「ユマ、もうつつくなよ。新しくなったからな」

「ワカッター?」


 なんかよくわかっていないような気がするがプラスチック製だから穴が開くことはないだろう。……開かないよな?

 ちょっとだけ心配になった。

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