41.尻尾で種類が判別できるのだろうか。引く手あまたで困ります
蛇の尾だけ、しかも写真だけではよくわからない。一応ネットで調べてみたが俺にはどれなんだかわからなかった。夕方おっちゃんがポチとユマを送ってきてくれたので写真を見せる。
「……これだけじゃわかんねえな。毒蛇だったとしたらあの大トカゲも無事ですまないんじゃないか?」
「どうなんでしょうね」
あまり気になるようなら明日村に持ってきてほしいとの話だったのでそれを桂木さんに伝え、もし毒蛇だったらドラゴンさんに異常が起きるかもしれないから様子を見ておくように言った。つってもうちのニワトリ、ヤマカガシ全部平らげてた気がするけど……。(はっきりと見たわけではないのでもしかしたら毒の部分だけ避けたかもしれない)
「明日の朝持って行きます」
と返信があった。朝おっちゃんちにニワトリを送っていくという話から、時間を合わせて来るということになったのだ。朝おっちゃんちで会って、終わり次第相川さんちに行けばいい。
あれ? 俺最近大人気じゃね?
とかなんとか考えた時視線を感じたのでそちらを見たら、ニワトリたちにじーっと見られていた。
「……え?」
ポチとタマにはフイッとそっぽを向かれ、ユマだけは……と思ったが時間差でフイッとそっぽを向かれた。
「えええええ~~!」
ひどい。むごい。愛されてない。せめてユマだけは、ユマだけはわかってくれると思ったのに。(何をだ)
へーへーわかってますよ。人気なのは俺じゃありませんよ。
火曜日の夜も騒がれなかった。今日は後で相川さんちに行くと言ったら、ポチが一緒に行ってくれることになった。今日はタマとユマが出張してくれるそうだ。そういえば昨日は卵だけ見つけたらしい。意外と卵が見つかるものだ。やっぱり増えているんだろうな。(毒蛇の卵とは限らないけど)
おっちゃんちに着くとまだ桂木さんは着いていなかった。
「今日はタマとユマか。女の子コンビだな、頼むぞー」
おっちゃんは心なしか嬉しそうだ。動物でもやっぱ女の子の方がいいんだろうな。
「今日はちょっと離れたところに行くからな。ナル山(桂木さんの山の通称)の、はまだ来てないか。タマ、ユマ、待っててくれるか」
ニワトリたちは適当におっちゃんちの周りで何やらついばんでいる。ニワトリにとって表は食べるものでいっぱいだ。おかげで特にエサをやる必要はないが、少なくとも朝ごはんだけは俺なりに用意することにしている。あとは状況を見てだ。
「……昼間いないとどんな塩梅だ?」
「まだ実感がわかないですね。普段から日中二羽はパトロールしていますから」
「いないことでなんかあればすぐに言えよ。まぁ日中だからそれほど変化はないかもしれんがな」
「? はい」
おっちゃんの言っていることがよくわからなかった。そんな話をしていると軽トラが入ってきた。桂木さんだった。
「おはようございます。遅くなってすいません!」
転がるように桂木さんが車を降りてくる。相変わらずだなと思う。
「おはよう。大丈夫だ」
おっちゃんが笑う。
「おはようございます」
挨拶をすると、桂木さんはあわあわしながらペットボトルの上を切った物を出してきた。中に蛇の尻尾が入っている。ペットボトルの上はラップをかけてゴムで止めてある。
「すいません、これなんですけど……」
桂木さんが嫌そうにペットボトルを差し出した。確かに嫌だろうとは思う。
おっちゃんが受け取った。
「これか……なんか柄だけ見ると、この辺りの蛇じゃなさそうだな? これ預かってもいいか?」
「どうぞどうぞ! できれば処分もしていただけると助かります!」
「わかった。わざわざ来てもらってすまないな」
「いえいえ! なんの役にも立てなくてすいません」
「んなの気にするこたあねえよ。じゃあ出かけるわ。なんのもてなしもできなくて悪いな」
「気にしないでください。いってらっしゃい」
出かけるということでおっちゃんと二羽を送り出した。ポチはマイペースにおっちゃんちの周りをまわっている。おばさんは畑仕事をしていた。
ドラゴンさんが荷台から降りてきた。長居はしないが身体を伸ばすのは必要だろう。なんの異常もなさそうである。よかった。
「佐野さん、今日は何か用事あるんですか?」
「これから西の山に行ってくる予定です」
「西の山って……相川さんでしたっけ」
「ええ」
心持ち離れて会話する。女子にはみだりに近づいてはならない。
「その……相川さんとはよく会っていらっしゃってるんでしたっけ……?」
「ええ、昨日町へ一緒に行きました」
「町へ一緒に……なんて羨ましい……」
なんか不穏な言葉が聞こえた気がするがきっと気のせいだと思いたい。
「……だめよ、私……惚れっぽいんだから近寄ってはいけないわ……」
ぶつぶつ何やら呟いている。俺には惚れられる要素は全くないんですね。わかります。
「佐野さん、明日のご予定は?」
「……ニワトリを送ってくる以外は特にありませんが……」
「ごはん作りますので是非来てください!」
「あ、ハイ……」
これ、俺には全く気がないよな。それでいいんだけど。いいんだけど……なんかもやもやしてしまう俺だった。
とりあえずそこで別れて俺はポチと共に西の山へ向かった。
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