28.梅雨の時期は湿気対策が必須です
梅雨に備えて必要な現代の利器とは除湿機(衣類乾燥機、布団乾燥機等も含む)である。
昔ながらの家屋はそのほとんどが木でできている。昔の人たちは湿気対策をどうしていたのだろうと思い、おっちゃんや相川さんに尋ねたら炭を使うと言われた。そろそろググれって言われそうだ。
相川さんは元々あった炭焼き窯を修理して作っているそうだ。確かに材料ならいくらでもあるもんな。そこでこの山を管理していた元庄屋さんに、この山に炭焼き窯があるのかどうか聞いてみた。使ってはいないけどあると教えてもらえた。おっちゃんがやる気になって修理だの手入れだのしてくれ、無事炭を作ることができた。出来上がるまでにかなりたいへんだったし、一週間以上かかったが、かなりの量を作ることができたのでおっちゃんちやその近所にもおすそ分けをしたらものすごく喜ばれた。炭にはいろいろ用途があるらしい。みんなの役に立つのならまた作ろうと思った。(五月中のことである)
雨が降ると表ではやることがない。畑の周りは確認しに行くし、多少の見回りはするがほぼ引きこもりになる。
そんな雨の中でもうちのニワトリたちはパトロールに行くので、一日一回はついていくことにしていた。
小雨なので今日は近くの川を見に行った。明らかに増水している。
「……でもこの辺りってまだ水がキレイだよな。なんで下に降りると濁るんだろう」
呟いてから考える。増水することで土や石なども一緒に流れるから、下流に行けば行くほどカフェオレ色になってしまうのかもしれない。危ないのでどこか崩れていないか遠目で確認するに留めて戻った。
梅雨時はすぐにいろんなものがカビてしまうので家の中の点検も大事だ。特にトイレや風呂場はしっかりみておかないとあっという間にカビだらけになる。和室などは除湿器フル回転で、トイレや風呂場には炭を置き水滴などを見つければこまめに拭く。引きこもりは引きこもりでも意外と重労働だなと思った。ちなみに洗濯物も外に干せないので衣類乾燥機が役に立っている。山の湿気はハンパない。
炭をおっちゃんちの近所にも配ったことでお礼にと山ほど野菜をもらった。ありがたくいただいている。
「あーでも、肉がないなぁ……」
冷凍庫を開けてみたら在庫が心許なくなっていた。どうしても肉を食べないと力が出ない。
「卵もない……」
そう呟いてから一緒にいてくれるユマを見た。まだ卵を産むには早いだろう。それにポチがいるから産んでも有精卵だと思う。有精卵はあんまり食べたくないなと思う。今はまだ。
「買物に行くかー……」
「イクカー」
ユマが行く気満々だ。かわいい。
マムシ入りのペットボトルは今三本ある。雨が降っているせいか、一時期出てこなかったマムシがまた出てきている。そしてマムシだけでなくヤマカガシもポチが捕ってきた。食べていいと言ったらガツガツ食べていた。ヤマカガシも毒蛇のはずなんだけど大丈夫なのだろうかと食べ終えた後で思った。遅いよ、俺。毒があるだろう頭も頸部もなかったので食べたのかもしれない。(食べている姿はあまり見ないようにしている)念の為何日か様子を見ていたがポチはピンピンしていた。ホントうちのニワトリってなんなんだろう。
「今日村に行きますけどいますか?」
おっちゃんに電話したら家にいるという。この間通販で注文した荷物もつい先ほど届いたと言われた。ちょうどよかった。
「なぁ、お前んとこのニワトリにちょっと相談があるんだ。全羽とは言わないけど連れてきてくれないか」
珍しくそんなことを言われた。
「相談、ですか?」
「来てから話すよ。なぁに悪い話じゃねえ」
「TV出演とかだったらお断りしますよ」
うちのかわいいニワトリたちを見世物にしてたまるものか!
おっちゃんは笑った。
「ばーか、そんなんじゃねえよ。一羽だけだと話が通んねえかもしれないだろ? 話がわかるヤツを連れてきてくれ」
「わかりました」
というわけでユマにポチとタマを連れてきてもらった。びしょ濡れだった。寒くないんだろうか。
「なんかおっちゃんからお前たちに相談があるんだってさ」
濡れた羽をタオルで拭きながら話す。なんかこの図ってすんごく寂しい人みたいだなと思った。
コッ! とポチが返事をした。行ってくれるらしい。さすが頼れる男、ポチさん素敵です!
「タマは?」
フイッとそっぽを向かれた。留守番してくださるんですね。お願いします。
ユマも一緒に行ってくれるらしい。最初から出かける気満々だもんな。本当にうちのニワトリたちはかわいい。
「相談ってなんだろうなぁ」
楽しい話ならいいんだけど。呟いたら、内容ぐらい聞いてないのかよとポチに呆れたような目で見られた。だって来てから話すって言われたんだよ。最近なんとなくニワトリたちの表情がわかるようになってきただけに、ポチの視線が痛い。情けない飼い主でごめんなさい。ホント、どっちが飼い主なんだか最近わからなくなってきた。
タマに留守番を頼んで俺たちは軽トラを麓の村に走らせる。
そういえば今回は手土産がグレードアップしているのだ。マムシ入りのペットボトルは基本として(いやな基本である)、なんと今回は果物の詰め合わせもあるのだ。って、これから取りに行くんだけどね。しかもおっちゃんちに。わけがわからないと思うが、うちの荷物は全部おっちゃんちに届くことになっている。その荷物が届いたというから物は果物の詰め合わせに違いなかった。受け取った品物をそのまま渡すのはアレなので、一旦軽トラにしまってから出して渡すことにしようと考える。
帰りに肉と卵を買うのを忘れないようにしないととも思った。
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