第2話 変化は徐々に

 昼ご飯を食べに家に向かう三人。

 家に続く道は平坦になった土の道で、流石に街中のようなレンガで舗装されていない。

 でもそれがいい。土を踏んだ時のあの音がとても心地いいのだ。

 雨の日は音はいいんだがな。不愉快。泥だらけになるのがな。この気持ちは共感してほしい。

「お兄ちゃん」

 ミッタはシェイに不思議そうな顔をしながら問いかけてきた。

「うん?なんだ?」

「お兄ちゃんって魔法、瞬間移動しか使えないよね?」

「?、そうだけど。」

「じゃあ何でそこ、衝撃が発生してるの?」

 ミッタの言うとおり、シェイの横でドスドスと足踏みをしてるような現象が起きていた。

「うわ、なんだコレ!あ、もしかしてお母さんがy」

「おりゃ。」

 目に見えない速さでシェイに峰打ちをかました。シェイはMなのかな?

「全く。懲りないわね。自分の子に渇を入れるこっちの身にもなってほしいものね。」

 シェイは渇で動けなくなり、ティーナに担いでもらっていた。

 これが、家族か。いいなぁ。

 でも微笑ましいシーンはすぐに通りすぎる物。

 「!、ミッタ。」

 ティーナはミッタに真剣な声で呼んだ。

 ミッタは突然母親に真剣な声で呼ばれたのが初めてだろうか、ビクッと体が振動した。

「な、何?お母さん?」


 「家まで走るわよ。」



「な、何で?」

 ミッタは疑問を隠せずティーナに聞いた。

「話は家についてからよ。いい?走るわよ。」

「・・・うん。いいよ。お母さん!」

 返事を聞くと同時にティーナはミッタを担ぎ、走りの体勢に入った。カッケ。

「久しぶりだから訛るわね。よし!ちゃんと捕まってなさい?」

「???」

 ミッタは状況をよく掴めなかった。それもそうだろう、瞬きをすると同時に担がれているのだから。

 ちなみにシェイはぐったりのままだ。


 ティーナは、呪文を唱え始めた。

『我、風の力を身に纏い、切り抜ける程の速さをお見せする!

 ウィンドフットエンハンス!』


ティーナの足に風が集まって行き、周りの雑草が激しくなびくほどまでになった。


「ふん!」


 一歩踏み出した途端、地面が窪み、流れるように風景が街中に変わった。

 自分達の家の玄関前に着くのは8秒程だった。建物を壊さず、そして人を轢かずに移動できるのは、熟練度が高いからだろうか。

 一瞬の出来事ではあるものの、風の抵抗は受けるため、シェイとミッタの髪の毛はボハボハになっていた。これは面白い。

「す、すごい。一瞬だった。」

「?、?、?」

 ミッタはティーナに改めてすごいと感じ、シェイは風の抵抗で目を覚ましたが、少し錯乱?状態になっていた。

「ささ、早く入りなさい。」

 ティーナは急かすように二人を家の中に入れた。


「さて、無事に家に着けたことだし、今から大事な話をするわね?」

 リビングの椅子に座り、いつの間にか淹れたコーヒーを啜りながら、シェイ達に言った。

 早業の次元を越えた神業で淹れたコーヒーは、カフェオレとなり、二人が座る所の前にあるテーブルに置かれていた。

 最初に話に食いついたのは、

「それでそれで、話って何ー?」

 もちろんミッタだった。

「うう、頭が痛い。」

 シェイはなんか色々言っているがティーナは無視し、はなし始めた。良い判断だな。

「まず最初に、今日、今から何があっても家の外には出ては行けません。」

「えー!何でよー!」

「ちょっと危ない状況になってね、貴方達はとにかく引きこもって。

 ・・・って何でシェイは嬉しそうなのよ。」

「だってもう畑仕事しなくてすむんだろ?最高じゃんか!」

 ティーナはため息をついた。まぁ、でしょうね。

 「まぁ、とにかくそういうことで、じゃあ2個目は、」

 ティーナは少し溜めて言った。

 

 「もう、お昼ご飯はありません。」


 その言葉でシェイとミッタに電撃が走ったように驚いた。

「何で何で!もうお腹空いているんだよ!」

「そうだそうだ!俺だって、頑張って仕事したんだ!」

 「もう、うるっさいわぁ!」

 ワーワー言う二人に少しムカついたティーナは、怒鳴った。これはムカつくな。

 息を整えてティーナは喋り始めた。

「ちょっと端的すぎたわね。正確に言うとご飯はあるけど、お昼ご飯はなくなりました。」


「ちょっと言ってることがわからんなー。」

「それは、外を見れば分かるわよ。」

 それを聞いてシェイとミッタは窓から外を見た。

 そこには、大きな満月が輝く、”夜”だった。さっきまで太陽が真上にあり、明るくて暑かったのにも関わらず、不気味な静けさが漂う世界へと一変していた。


「な、なんでぇぇぇぇ!!」


「これで分かったわね?もう夜なの。そしてこの夜はね、


 ずっと続くのよ。」


 二人はティーナの言葉を聞いてやっとこの異常な事に気づいた。流石に遅くない?

 ティーナは、二人にあることを尋ねた。


「二人は、このお話は知ってる?」



 ”月帝ナイラム”の伝説を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナイトリレーション シフレー @shifure

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ