第2話 啓蟄

3/6

また早起きして土手に行きました。目につかないような花が咲いています。


 啓蟄や小さき花から咲きたるか


 早起きす啓蟄の芝静かなり


啓蟄は冬籠りの虫が這い出るという意味だそうで、立春から始まる24節気の第3です。


 朝陽切る石を探さん啓蟄や


アメリカのビンテージものを扱える店あり、しばしば近所より遠くにて広告を出すを不審がりて、詠める(この言い回しがしたかったw)


 広告の多き商い鴨の春


3/7

翌日詠んだものです。昼食後、春物のパーカーでもと思い、ユニクロに行きました。

老人が店員を大声で怒鳴っています。つくづく日曜日なんかに来るもんじゃありません。


 迷惑の自覚なからん春鴉


その老人はこの冬に売っていたもこもこした赤いパーカーを着ていました。リタイアした男性は派手な色の服を着てる気がします。知らんけど。


 若作る老後長々と遅霜や


遅霜は立春から八十八夜経った頃の霜ですし、そもそも季語には取られていないようですが、頭の話なんでご容赦を。


寝落ちして4時に目が覚めたので、そのまま夜明けを見に行きました。


 シリウスや桜のつぼみを透かし見る


写真では⭐️は見えにくいですが、肉眼では歴然としています。いえ、もうちょっと下です。

金星だったかもしれませんが、その時はシリウスだと思ったので。


川辺まで行くと大地震のときの緊急用の輸送施設がありました。


 緩やかな春の川べり冷たき指


 マスクずらし春の匂いを嗅いでみる


ツイッターのトレンドで「プーチン打倒」を見ました。


 春うららプーチン打倒か習はどうする


ウィグルや香港のことを知らない人の方がこういうスローガンを気楽に使うような気がします。


たまたまおすすめに流れてきた「たった3つだけ‼︎咲かなくなったシクラメンもう一度咲かせるコツとは?」という動画を見て、やってみたらつぼみから花が咲きました。


 我が手より咲くやか弱きシクラメン


ウマ娘の新ツートップ、キタちゃん、サトちゃんできました!かぶったのを嘆いていてはバチが当たります。


 一万も割らずに来たる里の春


ガチャを回すのを石を割ると言います。石じゃなくてジュエルですし、サトノダイヤモンドですが。


ヘブバンおもしろいですね。七海ちゃん好きです。


 豊後の海弥生暖かき潮招く


弥生のカニの手を誰も突っ込まないのがいいですね。


3/8

久しぶりに焼肉を食べました。

前に来たときより多くの客がいました。


 客戻り黙して祝す春の宵


赤ワインとかwを飲んで帰る途中、若い女性とぶつかりそうになりました。


 白き顔春風ともに知らんぷり


閑話休題、気になる手荒れで一句。


 春なれど手荒れ治癒せずカーテン掻く


3/9

わたしの部屋はまわりに部屋がなく、あるのは2階だけです。


 春宵や隣戸はエアコン点けぬらし


正確には上戸ですが、彩さんが住んでると思われるのも本意ではないので。


 春暁のくしゃみ三発隣戸に詫ぶ


 日曜のルーティンも軽ろし春の風


お隣さんは日曜日に掃除と洗濯をします。


3/10

白木蓮の花を見ました。子どもの頃、大きな蛾が群れたようなあの花が怖かったです。


 暗がりに忍び寄るるや白木蓮


内田百閒の小説、随筆には若い頃ずいぶん熱中しました。彼は俳句もよくし、中野区の金剛寺に次の句碑があるそうです。


 木蓮や塀の外吹く俄風


テレビほどゲームの邪魔にならないかなと思って、ラジオを流しています。


 ラジオより桜の予想聞きにけり


ラジオを聞いているとドライブしてる気がします。


 あてもなき旅に出ようか春の色


 ドアを開け君の手を引き花束の香


3/11

今朝も土手に行きました。藪の中で若い(たぶん)うぐいすが一生懸命鳴き方練習をしていました。

思わず(心の中で)声援を送りました。


 うぐいすの藪の外より鑑賞す


ビデオを撮り終えて、身動きした途端、


 白鷺や波紋を引いて飛び去りぬ


3/12

今日も早起きです。細い道でいい出会いがありました。


 微かなる風を染めるや紅の梅


梅でいいんでしょうか。ご教示願います。

千葉県に行ってみます。こっちの土手には菜の花が咲いています。


 菜の花を我が住む方へ招きたし


木曜日に渡し場の写真を撮っていたのですが、うまく句にできませんでした。


 春暁や渡し場の渡さぬと告げる


色合いの違う梅も昨日撮ったものです。個性なんて言葉を使おうとして詰まってました。


 花咲いて梅それぞれの個性かな


同じ道を通るのが嫌だという、山行で遭難確率の高い性格です。人車の道はかなり間遠で、行って帰って2本の間に線路は4本もあります。疲れてくると記憶と幻想がごっちゃになってきます。


 春の神彼女の指に触れしこと


 春のビオラ目の輝きは信頼か


3/13

歳時記を見ていたら春の季語にはまぐりがありました。


 蛤の小さきを歎ず回転寿司


実体験です。

今日は自転車でちょっと離れた街へ行きました。なんか運動癖がついてるみたいです。


 人少なく咲く花多き街に住みたし


3/12の夜、東大寺の二月堂でお水取りが行われます。若狭の遠敷(おにう)明神が漁をしていて二月堂に遅参したのを悔いて、二月堂に清水を湧き出させたという言い伝えがあるそうです。

水を運んだと解釈されているようですが、閼伽井屋の中の井戸水を汲んでいるので、若狭と水脈が繋がっていると信じられてきたことが重視されるべきでしょう。かつて小浜を訪れた際もそう聞きました。運搬を言うなら魚との関係も注意すべきでしょう。「遠敷河を領して魚を取りて遅参す」と二月堂縁起には記載があるようですが。


 春の土深きを通り遥か都に


3/14

昔のサントリーのCMで、春に帰れなかった雁の枝を供養に焚いて、風呂にする風習が紹介されていました。青森の外ケ浜だそうで、季語に採られています。


 雁風呂の温きを喜ぶ民ならん


中国の北方民族がぶらんこ、鞦韆に乗って春の女神を呼んだので、春の季語になっているようです。


 ぶらんこや君さかさまに見えるまで


中国の北方民族がぶらんこ(鞦韆)に乗って春の女神を呼んだという伝承があるので、春の季語になっているようです。


 ぶらんこや君さかさまに見えるまで


桜餅が店頭に並んでいます。関東と関西で違いますが、みなさんはどちらがお好きですか。

わたしは両方味わうのがいいと思います。どちらもご利益がありそうですから。


 桜餅長命寺と道明寺


3/15

引き続き歳時記を見ながら詠んでいきます。和歌で言う題詠のようなものです。


 しらす干し目にさざ波を宿しけり


 しじみ汁証とばかりに黒き砂


 バタバタと風にはためく春コート


春昼という季語には、うとうとと眠りを誘われる心地よさと、どことなくけだるさも感じられるとのことです。ウマ娘に取材しました。


 春昼や楽し長し新育成


春の日という季語は春の一日という意味ですが、わたしが使っている歳時記には、明るい日差しが感じられると書いてあります。ヘブバンに材を採ってみました。


 春の日やダンジョン深く潜りけむ


春の暮れは、日ごとに日の暮れるのが遅くなり駘蕩とした気分が漂うとあります。


 春の暮れ古きドラマを流しおり


「春宵一刻値千金」というように、春の宵はどことなく艶めいていて、華やぎが感じられるとのことです。


 春宵や空想の果て香を焚く


3/17

古文では反実仮想と言いますが、簡単に言えば現実と違うフィクションです。


 春の灯や妹ありし記憶あらん


 陽炎やねえと言う声間を置きねえ


 再びまみえん世界ありや山笑う


句を考えている間に地震がありました。怖かったです。


久しぶりに早起きして土手に行きました。先日よりずっと明るくなっています。


 芽吹く葉の湿り気誘う柳かな


 桜より先立ちて咲く桜草


 君もまた春暁の句をひねらんや


写真の白い猫はじっと身じろぎもしないでいました。


3/18

カタカナの花でも多く季語になっています。


 サイネリア花束誘う笑顔かな


山盛りの花束を贈ったら帰る電車の中で衆目の的だったそうです。


 雨の午後アネモネとゆるり語るらん


 教室の後ろから見るヒヤシンス


3/19

今日は古いポップスをテーマにしてみます。この曲は時代の移り変わりを歌っていますが、今ならなんでしょう。ネット?スマホ?動画サイト?


 ポリコレの麗し中世春の闇


*THE VIDEO KILLED THE RADIO STAR* - THE BUGGLES - 1979


SLYという名前もカッコよく、I Want to Take You Higher(動画の6:10付近からです)のグルーヴ感がたまんないです。


 春疾風突然の知らせ多き頃なれば


「はるはやて」で季語です。


sly & the family live on Music Scene in 1969


大阪の厚生年金会館でのT.Rexのコンサートを見に行ったことがあります。一緒に行ってくれた先輩もマークボランも早くに亡くなってしまいました。


 剪定に合わせる鋏年バレか


T. Rex - Hot Love (1971)


カルロスサンタナの官能的なギターを始め、全員が恍惚の表情を浮かべながらも、きちっと演奏しています。


 少年の午睡の如し亀鳴くや


Santana - Soul Sacrifice 1969 Woodstock live


50年以上前に亡くなったジャニスの曲を小中学生が演奏してるのを見て、YouTubeって素晴らしいなと思いました。


 昼間の星求め鳴くや揚げ雲雀


小・中学生 女子4人でライブ一発撮り / Move Over - Janis Joplin


3/20

今日は魚介類をテーマにしました。


 いわきなる市場に並びし小女子や


震災後の見聞です。こうなごと読みます。


 白魚の皿のメインに鎮座する


 浅蜊見ぬ季節過ぎゆき酒残る


産地偽装の関係で近所のスーパーでは浅蜊がずっとありません。


 赤魚の粕拭いつつ飯を炊く





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ゲームの合間に俳句 夢のもつれ @goiuji7

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