命の枝のその先に

 雨空の中、少女はフェンスを越えたその先でじっと真下を眺めていた。



 それからすっと踵を返した。


 

 心の内は、誰も知らない。



 神様の祈りは、多分、きっと届いてない。




 それでも少女は―――。




 「さむっ……帰ろ」




 そう言って、今日をまた生き始めた。




 また一つ枝を折って、道を一つ選び取る。




 明日も、明後日も、明明後日も。




 なんで自分が最後の最期で諦める気になれないのか。




 少し不思議に想いながら。




 少女はそっと歩き出した。




 暗く冷たい雨の中をたった独りで。




 それでも確かに歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どこかの神様の祈り キノハタ @kinohata

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ