七魔 狂った彼女

「うん。わかった。こうなったからには説明しないとだよね」


 そう言うと、彼女は話してくれた。

 今がどんな状況なのか。

 とりあえず、現状の時間が停止してるということは間違ってないらしい。

 ただ、この世界にいる人間は人間であって人間でない。

 時間が停止する前、元いた世界の人間は既に動かなくなって干渉することもできない状態にあるとのこと。

 そして、本来であれば、俺も今いる世界に干渉することはできないはずだった。

 けど、この世界に来る直前、彼女、未空みくに触れていたことで俺はこの世界に干渉できているのだとか。

 それから、彼女、宮ノ下みやのしたももがなんなのかも教えてくれた。

 彼女は学校の後輩だった。

 そして、未空みくは彼女のことを気に留めたこともなかった。

 けど、ある日彼女に接触された。

 彼女はそのときから大分狂っていたらしい。

 私は先輩が好き、そして愛してますと。そんなことを言われたと。

 もちろん、というか、彼女がそっちのことには興味がなかったのと、俺のことが好きだったということも相まって、丁重にお断りしたんだと。

 けど、彼女はその後豹変し押し倒してきた。

 そして、それから少しの間されるがままになってると、唐突に世界が一変した。

 それから、次の瞬間には彼女はピンクのフリルの付いた衣装を身にまとっていた。

 ただ、世界は時間停止なんてしてなかった。

 けど、周りには彼女以外の全てがなくなっていた。あるいは別の空間にでも飛ばされたのかと思ったと。

 そして、それから未空みくは彼女の空きをつくと、逃げ出した。

 一心不乱に逃げていたら、気づいたときにはそこから抜け出していた。

 いつもの見慣れた街に戻っていた。

 それから何日も彼女とは会っていなかった。

 そもそも、彼女は既に学校を辞めていた。誰なのかは知っていても、接触しようとも思ってなかった。

 それから、俺の家に来る前々日のこと、久しぶりに彼女と会った。

 未空みくももう彼女のことなんてそこまで覚えてなく、誰? とか思っていた。

 というか、その時会った彼女は、最後の記憶と繋がらなかった。

 だから、気を抜いていたし、彼女のことも思い出せなかったのだろうと。

 そして、未空みくは気に留めることなく、誰だろう? なんて思いながら話してると、彼女は手を掴んでこういった。


「私、先輩と一緒になるために、頑張りました。先輩のこともちゃんと観察して、愛してもらえるように変わりました。だって、先輩はこんなにも話してくれたのですし!」


 そこで、やっと彼女のことを思い出した。

 あのときの子だと。あのとき初めて会って、狂っていた子だと。

 それから、やっとの思いで未空みくが口にしたのは、「具体的に頑張るって、なにしたの?」だった。

 観察がどういうことかとか、愛してもらえるよう変わったとか、そのときはどうでもよく、ただそう聞いた。

 意味なんてなかったけど、そう聞くのがいい気がした。

 だって、観察ってきっとストーカー行為だろうし、変わったってのもきっと……。

 それから、彼女が一呼吸おいて言ったこと、それは「殺しました。たくさんたくさん殺しました。私に関係する人を先輩だけ残して殺しました。あっ、でも先輩のご両親とかは殺してないですよ? 私の身内は全員殺しましたけど……。あと、先輩に近寄ろうとするゴミ虫も一緒に殺しておきました。先輩、褒めてください! 私、先輩と会いたい日も先輩のことを思い出して頑張りました。先輩と一緒にいられる日を夢見て頑張りました。私にはもう先輩しかいないんです。そんな私とずっと一緒にいてください」


 彼女は早口でそうまくし立てた。

 完全に狂っていた彼女は、もはや手のつけられないレベルにまで成長していた。いや、成長と言っていいのかはわからないけど。

 俺は話を聞きながらそんなことを思った。

 そして、そんな彼女に対して未空みくの言ったことは簡素で簡潔していた。


「私にはもう婚約者がいるから、無理。私はあなたを愛せない」


 俺はそのあと、彼女は発狂したのだろうと思ってた。また、一心不乱に逃げてきた。

 そのことが原因で俺のところに来たのかとも思った。

 けど、そうではなかった。

 彼女は少し涙目になりながらも、


「そう、ですよね。わかってました。知ってました。先輩にそう言われるの、わかってました。けど、私は少しの希望にかけてみたかったんです。先輩ならもしかしたら、優しさで同情してくれるかもって」


 そう言ったと。それを聞いて、俺は少し感動した。彼女は確かに狂っていた。

 けれど、そこにはちゃんと少女らしい感情を残していたんだと。

 けど、そんな彼女に未空みくは、またも端的に答えた。


「そんなことに同情なんてしない。そんなことで私はあなたと仲良くなんてできない」


 それから、彼女は未空みくに話しかけた。

 けど、それを未空みく端的に、ごく自然に返していた。

 それから、いくつかの問答のあと、彼女は言った。


「私は先輩のことが大好きなんです。これからもずっと一緒にいたいんです」


「今まで別に一緒にいない」


「そうですよね。なら、私が一方的に一緒に。ずっと勝手にそばにいます。先輩と一緒に死ぬまで、私は先輩の近くにずっといます。覚悟してください、先輩。先輩はどこにいても私のそばから離れることはできないんです。お風呂にいるときも、先輩が誰かとエッチしてるときも、先輩がご飯を食べてるときも常に私は先輩のことを見てますから」


 そう言って彼女はどこかへ行ってしまった。

 それから今日まで一度も会っていなかったと。

 そう言って、彼女は話を終えた。


「なるほど。けど、なんで今は時間が停止されてるんだ?」


「この空間は、元の世界の人間を守るためにうまれたもので、いわゆる擬似的に世界をもしたものなの。さすがに時間までは模倣まねることはできなかったけど」


「だから、この世界は時間が止まってるのか?」


「あとは、完璧に世界を模倣まねてしまったら、どっちが本物の世界なのかわからなくなるしね」


 そう言われて、納得した。

 確かにわからなくなってしまうかもしれないなと。


「とにかくここは、そんな場所。とりあえず、もとの世界に戻ることが先決だよ。それに、この世界に長いするのはあまりよくないし」


 そんなわけで、俺たちはもとの世界へ戻るため、家を出るのだった。

 彼女は俺の手を強く握り締めながら。


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 ──以下、最新話更新日前後にて削除


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 うーん、悪くないはずなんですけどね。とりあえず、この作品に関しては一旦おやすみしようかなと思います。

 次回投稿予定日は未定です

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前略、大人になったと聞いたので、あのときの約束を果たしてもらいに来ました アールケイ @barkbark

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