第4話 ピンク色の正体

遊園地で遊んでから数日後の春休み。

堀尾さんからrainは来ていたが、他愛もない会話だけに止まっていた。横田さんとはID交換してなかったから何も来なかったけど、里香のもとには色々来ていたようで

「優衣から兄さんのID教えて?って来ましたが、断っておいたので安心してくださいね?」

と言われてしまっていた。何が安心なんだ?まあ横田さんとは新学期が始まったら話せばいいか。あと堀尾さんとも・・

そんな事を考えているとリビングのテーブルの上に里香の弁当の入った袋が目に入った。あいつ今日は一日部活って言ってなかったっけ?運動部で昼飯抜きは・・辛いよな?

「仕方ない!行くか!」

僕は今後の夕飯バッキバキソーメン回避のために里香に弁当を届けることにした。


学校に着くとそーっと体育館の扉を少しだけ開けて気付かれないよう中を覗く。なんかバーンと開けて注目浴びるの嫌じゃないかい?

中からはダンダンダン!キュキュ!とバスケ音が絶え間なく聞こえてくる。仕方ない待つか・・。そう思って離れようとすると

「あれ?先輩じゃないですか?どうしたんですか?」

体育館に入ろうとしていたのか、後ろから横田さんに声を掛けられた。

「里香が弁当忘れたから届けに来ただけだよ」

「そうなんですか!もうお昼だから里香出てくると思いますよ?・・それよりも先輩?」

「ん?どうしたの?」

「rain交換しません?里香にお願いしても適当に誤魔化されてしまうのですよ・・」

里香・・なぜそこまで?

「うん、まぁ構わないよ」

スマホを近付けて交換する。

「まぁ・・里香も重度のブラコンですからね・・」

「ん?里香が何だって?」

「いえいえ!里香出てきましたよ?」

なんか言われてた気もしたが・・出てきた里香に弁当を差し出す

「おー!里香さん?はい、忘れ物!」

「えっ!あっ、その・・ありがとうございます」

外向け里香さんがモジモジしながら受け取った。その瞬間フワっとピンク色が辺りを包む。

やはり他の部員の前だと照れるよな・・

「じゃあ帰るから」

軽く手を上げて帰ろうとすると、横から横田さんにガッと手を掴まれた

「先輩?暇ですよね?お昼一緒にいかがですか?私のお弁当、とっても大きいので♪」

「ちょ!優衣!?何を?」

里香は手をバタバタして焦っている

「いや・・僕は・・」

「もちろん里香も一緒にね?それならいいでしょ?」

「うん・・まあそれなら・・」

里香さん?いいんだ・・

ともあれ二人と一緒にお昼を過ごすことになった


中庭に移動すると本当に大きな弁当を横田さんが出してきた。

「さあさあ、先輩?遠慮しなくていいですよー!ほら、あーん♪」

「ちょっと優衣!?何してるの!?」

グイグイ来る横田さんをガッと里香がガードする

「里香こそ先輩を縛りすぎじゃない?このままだといつまでも先輩に彼女出来ないよ?」

それは困る・・

「いいの!兄さんは私が面倒見るものなの!」

それは嫌だな・・

「ふーん・・でも、先輩は彼女欲しそうだよ?」

すごく切実だよ?

「兄さんにそんなもの必要ないです!」

そんなことないよ?

「でも少し前に堀尾先輩と噂された時、先輩楽しそうだったよ?」

それは・・そうかな

「そんなことない!兄さんが一番大切にしてるのは妹である私なの!」

「うーん・・まぁそれはそうかな」

「はっ!」

「えっ!?」

やべ、ここだけ声に出てた

「なっ!兄さん!?何言ってるのですか!?」

里香の周りからピンク色が溢れだして僕を包んだ

「良かったね里香?・・私にとっては良くない展開だけど・・」

珍しく横田さんがゴニョゴニョ言いあぐねていた

「うん、まぁいつも世話してくれてるし、僕を理解してくれてる人は大切だよ?」

「そうですよね!兄さんは私が居ないとダメダメですから!」

めっちゃ速い箸さばきで弁当を食べると顔を真っ赤にしながらピンク色を纏って中庭を早歩きで出ていった。照れてらっしゃる・・

「えっと・・先輩?」

「うん?」

取り残された横田さんが僕の手をガッと掴む。またしてもフワっとピンク色に包まれた。何か横田さんも照れてるのか?

「明日土曜日に買い物に付き合って貰えませんか!?」

「僕が?何で?」

急にどうした?なぜ僕なのだろう?

「いや、来月里香の誕生日じゃないですか?プレゼント選ぶのに付き合って貰えたらなーって・・」

ああ、なるほど。最近里香のハマってる物はわからないけど、好みではない物の判別はつく。

「わかった。今週なら空いてるからそれでいい?」

「はい!時間とかはrineで送りますね!」

「うん、わかったよ。」

「まぁ、これで当初の目的は果たしたからいいか・・」

「うん?何て?」

「いえ、独り言でーす♪」

横田さんがゴニョゴニョ言ってたけど誤魔化された。ともかく土曜日に横田さんと買い物に行くことになった。プレゼント選びなので里香に気付かれないようにしないとな・・



その後バスケ部の午後練習が始まったので気配を消して帰ってきた。もうこれ以上変な噂立てられたら嫌だしね。

ちなみにその日の夕食は里香が僕の好物トンカツを作ってそっと出してきた。何故かピンク色を纏いながら・・トンカツからも驚くほど肉汁のようにピンク色が溢れていた。

・・ん?トンカツさんが照れてらっしゃる!?どーいうこと?何か見える色の種別がわからなくなってきているのか?そんな事を考えながら夕食を終え、自分の部屋に居た時ピコン!とrineが入ってきた。


「堀尾です!急で申し訳ないのだけれど、今週末土日どちらでもいいので私の家に来ませんか?ちょっと見せたいものがあるので・・」


・・・・は!え!?堀尾さん?なぜ急に?見せたいもの?・・想像つかないな・・

とりあえず断る理由も無いので

「うん、おっけーだよ!日曜日なら大丈夫かな」

と返信した。土曜日は横田さんに日曜日は堀尾さんか・・なんかモテ男みたいだね♪

めったに無い良い気持ちになりながらその日は休んだ。


翌日、横田さんとの待ち合わせ場所に行くと満面の笑みで横田さんが待っていた。

「先輩♪待ってましたよ!さっ!行きましょー」

そっと自然に手を引かれた。その瞬間フワっとピンク色が二人を包んだ。照れるのなら無理しなくてもいいのに・・

「せっかくのデートですからね♪」

「デート!?」

そんな話しは聞いてないが・・?

「もちろん里香のプレゼント選びは本当ですよ?でも今は先輩の彼女候補でもありますから・・」

そんな話してたな・・返事は保留にしてたけど

「そんなわけで!まずはお茶しに行きましょ♪」

「おう?ああ・・プレゼント選びは?」

「それはもう少し後で!」

そんなわけでショピングモールのカフェでお茶をすることになった。



(里香視点)


お兄ちゃんは珍しく朝から出かけてしまった。優衣を誘ってみたけど用事があるみたい・・どうしようか・・

そんなことを考えながらお兄ちゃんの部屋に向かった。主が居ないので遠慮無くベットにダイブする。

「うん、落ち着く香り♪」

お兄ちゃんが居ない時にゴロゴロするのが癒しなのだ。昨日はっきりと私を一番大切って言ってくれたのよね・・

でも最近なんかお兄ちゃんがモテているという話を聞いた。・・この匂いに他の女の匂いが混ざるのを想像してみた。

「うん、○しましょうね♪」

そんなヤバい事を考えながらゴロゴロしていると、夕食の食材が少し足りないのを思い出した。

「買い物でも行こうかな・・」

部屋を出て外に出ることにした。



(康政視点)


「里香ってピンクとかよりブルーとかグレー色が好きでしたよね?」

「そうだな・・」

なぜかグッと腕を組まされ里香のプレゼントを選ぶ

「これって学校の知り合いとかに見られたら変な噂とか立たない?」

「ええ、それが目当てなので」

堂々と言ったな・・

「これとかどうかな?」

早々に買い物を終わらせる方向でいくことにした

「やっぱり!?このブレスレットはいいなーって思ってたのですよ!やっぱり先輩と私って気が合いますね!」

「・・そう?」

「はい!ちょっと買ってきますね♪」

横田さんが支払いをしているのを見ていると視界の隅に赤いものがフワッと見えた気がした・・

誰か怒ってた?色が見える時は自分に対する感情のはずだが・・知り合いがいたのか?横田さんのファンとかが偶然居て僕を見て不快に思ったとかかな?

「お待たせしました!行きましょー」

「うん」

とりあえずこの場を離れることにした。


「ここのケーキが美味しいのですよ♪」

「そんなんだ」

横田さんに連れられカフェに入ったのだが・・

ずっと視界の隅に赤色が見える・・気のせいじゃないよな・・

「なあ?横田さん?」

「もう!優衣って呼んでくださいって言ってるしゃないですか!」

「あ、うん・・優衣さん?」

「ええ!先輩が素直!?」

「堀尾さんや里香にファンが結構いるってのは教えてもらったけど、横田さんにファンっているの?」

「優衣です!・・うーん私は自分で気付かないだけかもしれないけど、いないと思いますよ?」

「そっか・・」

「何々?私にファンがいたら心配ですか?」

ニヤニヤされながら言われたが赤色の説明するわけにはいかないしな・・

「いや、なんかさっきから横田さんのファン的な人に睨まれてる気がして・・」

そう言いながら顔を上げると・・

「ふ、増えてる!!」

「へ?何が!?」

思わず声に出てしまったが、さっきまで左の視界の隅に見えていた赤色が右端にも見えるようになっていた。

「と、とりあえず目的は果たしたし帰ろうか?」

「えー!もっと遊びましょうよー」

身の危険を感じたのだよ・・

「じゃあ次は先輩からのお誘い待ってますからね♪」

そう言いながらそっと組もうとする腕を払いながら歩いていると、ものすごーく遠目に里香っぽい女の子が見えた気がした・・気のせいかな?

「あっ、堀尾先輩だ!」

急に声を上げた横田さんに驚いて顔を上げると里香っぽい人がいた所とは反対方向に堀尾さんっぽい女の子の後ろ姿が見えた

「そうか?そっくりさんじゃなくて?」

「堀尾先輩ですよ!あのカーディガンは着ているの見たことありますし」

「まぁ学校から遠くはないし、買い物に来てても不思議ではないんじゃない?」

「そっか!ちょっと声をかけてきますね!」

そう言うと走っていってしまった。コミ症の僕は知り合いを見つけたら隠れてしまうのだよ・・

声をかけられた堀尾さんは驚いた顔で振り向いたが、僕の顔を見るとばつが悪そうに目をそらした。そして一言二言横田さんと話すと行ってしまった。不思議そうな顔で横田さんが戻ってくる。

「なんか急に用事ができたって行ってしまいました」

いつともなら会えば挨拶ぐらいはしてたけど、なんかおかしかったな・・まぁ明日会うしその時にでも聞けばいいか・・

再び組もうとしてくる腕を払いながら帰った。

夕飯は再びバッキバキのソーメンだった。レモンが添えられていたがそーいう問題ではなかった。



(里香視点)


「ふーん・・兄さんも優衣も用事あるって言ってたけど、このことだったのですね・・」

買い物に出掛けたら兄さんを見つけたので声をかけるわけでもなかったが、そっと近くに行こうとしたら、横に優衣がいた。怒りを押さえながら気付かれないように尾行した。

二人で笑いながら買い物をしている。しかも腕を組んで!

「兄さんも優衣も何も言ってなかったのに・・兄さん!浮気ですか?(←違う)」

買い物を終えてカフェに入るのを確認すると、向こうからは見えないが二人が確認できる位置に座った。

「本当に付き合ってるのでしょうか?」

二人の雰囲気は恋人っぽいものでは無かったが、親しい間柄のようなも見えた。優衣に「今何してる?」とrineを送ってみようか迷っていると、私とは反対側に見知った顔の人がいた

「堀尾先輩!?」

明らかにそうだった。しかもちょっと怖い顔で兄さんと優衣を見ている。そーいえば堀尾先輩も兄さん狙いの疑いがありましたね・・

二人がカフェを出て歩き出したので二人と堀尾先輩に気付かれないように距離を取りつつ尾行した。しかし優衣はすぐに堀尾先輩を見つけたようでパタパタと走って行って何か一言二言交わしてから兄さんの元に戻って行った。バツが悪そうに堀尾先輩が帰ったのを見ると見つかりたくなかったのでしょうね・・

あの子はきっと空気を読まず私を見つけても話し掛けてくるでしょうから見つかる前に帰りましょう。夕飯のメニューは決まったので♪

私はソーメン売場を目指した。



(康政視点)


翌日なるべくシワの少ないシャツを着て堀尾さんの家に向かった。行きにスナイパー的な人に狙われないか警戒しながら行ったけど大丈夫だった。

ピンポーン

「はーい!」

笑顔で私服姿の堀尾さんが出てきた。めっちゃ可愛いやん♪

「わざわざありがとう!さ、入って?」

堀尾さんはピンク色を纏いながら僕を家に招き入れると階段を上がって堀尾さんの部屋に入る。やっぱ部屋に男を入れるのは恥ずかしいよね。

「あの!このコを覚えてますか?」

部屋に入るなり部屋にいた猫を抱っこして僕の元に来た。・・猫?少なくとも知り合いに猫はいないけど・・

「ほら?マロン?」

「プルニャーン!」

その子マロンっていうんだ・・。堀尾さんはマロンをそっと床に下ろした。するとマロンは僕の足に尻尾を上げながらすり寄って来た。懐いてるねぇ・・なぜ?

「ほら!やっぱり!新田君は忘れててもマロンは覚えてましたよ?新田君はこの子の恩人なんだよ?この子、コンビニ前で助けましたよね?」

助けた・・

「あーー!あの時の猫さんか!」

あの時はボコボコにされてて覚えてなかったけど、女の子が猫さんを連れていったって里香が言ってたっけ!それがこの猫さんなのか!

「思い出しました?」

「うん・・でもボコボコにされてたから情けなかったよね?」

「そんなことない!必死にこの子を助けてくれた新田君はカッコいいと思うよ?」

そう?面と向かって言われると恥いね

「新田君?」

「ひゃい?」

やべ、何か声が裏返った

「妹さんに優しくて動物にも優しくて、とっさに大切な人を守れる人は私の理想の人なの」

おおう?この流れは・・

「私その時からずっと新田君が気になってて」

ザッザッ

空気を読まずに猫がトイレ砂を掘っている

「横田ちゃんが新田君のことが気になってるってのは知ってるから、私ははっきり言うね?」

そういえば昨日横田さんといるところを目撃されたな・・

ザッザッ

猫は相変わらずトイレ砂を掘っている

「私は新田君のことが好きになりました」

その瞬間ブワッとピンク色が溢れだして部屋の中を包んだ。

「あの・・今すぐ返事が欲しいってわけじゃないから・・これから私の事を知っていった上で返事をもらえたら嬉しいかな?」

「うん・・」

「何か急にごめんね。できればマロンとも遊んでいって欲しいかな?」

足元にはトイレから帰って来たマロンが猫じゃらしを咥えて足元に居る

それから、しばらくマロンと遊んだりお茶しながら学校の話をしたりしてリア充っぽいお部屋デートらしいものを楽しんでから帰った。


部屋に帰ってから今日起きた事を思い出していた。あの堀尾さんに告白されたよ・・俺、もうすぐ死んだりしないよね?

それと同時に気になった事もある。堀尾さんに告白された時、ピンク色が凄い勢いで溢れだした。今までは照れてる時の色と思ってたけど、何となく違うような気がしてた。・・これは好きな感情が出たときに見える色なのでは?今までのピンク色発生時のシチュエーションを思い出しても辻褄が合うよな?そしてピンク色が沢山見えた相手は・・ん?里香・・じゃないのか!?













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人の感情が色でわかるようになったら、妹が一番俺を慕っていた 猫持ち上げると意外と胴伸びる @percussion0923

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