第3話 里香の友人参戦!

(里香視点)


その日の部活後、私は自分の部屋で今後の作戦を練ることにした。今日の堀尾先輩は普通だった。もっとテンション高かったりするかな?とも思ったけど・・ただ

「里香ちゃん!また新田君にお昼作るから、その時はまた言うね?♪」

という言葉には危険さを感じた。そしてこの先

3月にあるホワイトデー!お兄ちゃんは私にお返しをくれるのかしら?♪・・いやいやいや!そんなことよりお兄ちゃんの堀尾先輩へのお返しだ。

きっとお兄ちゃんの事だ。しっかりお返しを渡すだろう。そしてそのまま二人の距離は縮まり・・ってダメダメダメ!今度はお兄ちゃんの方に「堀尾先輩は友達としてチョコを渡したのだから勘違いしないようにね?」って刷り込んでおかないと!

ガチャ

「ただいま~」

お兄ちゃんが帰宅した音を聞いて私は夕食の準備に向かった。なんかモヤモヤした私は、能天気な顔して座ってるお兄ちゃんを睨みながら夕食の準備をした。



(康政視点)


堀尾と昼休みを一緒に過ごしてからというもの、尾ひれのついた噂が流れため、その後は大人しくしていた。何でも僕に堀尾を取られると勘違いした非公式堀尾ファンクラブの奴等が毎日のように堀尾に付いて回ってるとか・・

その影響なのか僕の靴箱にカミソリが入れられていたり(ただ安全カミソリだったのは謎だ)、僕のノートに落書きされていたり(ただ美味しいハヤシライスの作り方だったのは謎だ)といろいろあったので目立たないようにしていた。

しかし、今日はホワイトデーだ!ちゃんとお返ししないと・・

一応里香には「堀尾先輩は皆にあげててお返し沢山貰うだろうから、小さめの物にしなさいよ?あと勘違いしてアメとか渡さないように!兄さんはその他大勢なんだから!」と言われていたので小さめかつクッキーや飴など色々入った物にした。これなら変に思われること無いだろうし・・てか里香が僕をキモ兄から普通に兄さんって呼んだのに驚いた。まぁ別にいいけど・・そーいえば今朝里香にもお返しを渡したらキモがられずに「ありがと」と受け取ったのにも驚いた。ちょっとピンク色放ってたし・・里香が照れてた?

「なぁ、お前堀尾にお返し渡すんだろ?」

他のクラスの女の子達にお返しを渡しに行って戻ってきた毒島と仲口が僕の耳元で小さく聞いた。とにかくこの問題はデリケートなのだ。

「今行くなよ?他の奴等が見てるし、また変に噂が立つと大変だろ?」

「確かにな・・また机の中に育成中の豆苗キット入れられたりしたら嫌だろ?」

そんな嫌がらせも受けたな

「あれは確かに困ったな。水換えたり日光に当てたりお世話が大変だったし・・」

「世話したんだ・・だから弁当のサラダがボリューミーだったことがあったんだな!」

「とにかく!女バスは今日通常通り練習があるから渡すならその間だ!」

「間?練習前とか後じゃなくて?」

「そんな時渡したらまた誰かに目撃されるだろ?女バスの休憩時間になったら連絡するから体育館横の通路に来い!」

なんか不良の呼び出しみたいだな・・

「いや・・そこまでしなくても・・毒島が代わりに渡してくれればいいし・・」

「お前な・・堀尾がお前だけに勇気だして渡してくれたんだろ!?お前も直接渡せよ!」

「あれ?里香に聞いたら堀尾さんは他の人にも沢山渡してるって・・」

「え!?」

毒島と仲口が止まった。そして二人で小さく

「里香ちゃんか・・なるほど」

「まあ仕方ないか・・」

などとなんかゴニョゴニョ言ってたが結局

「とにかく、堀尾には直接渡せ」

と押しきられて放課後教室で待つことになった。待っている間、また机の中に豆苗キット入れられたりしてないか恐る恐る見てみたが大丈夫だった。ホッと胸を撫で下ろしていると

ピロン!

『女バスまもなく休憩。例の場所に来い』

と毒島から連絡が入ったのでお返しを手に体育館横の通路に向かった。行ったら怖い人とか出てきてカツアゲされないよね?(←ねえよ)

そんな不安をよそに通路に行くと堀尾がタオルを手にちょうど体育館から出てきた

「あっ、新田君!どうしたの?」

あ、僕が行くってのは伝えられてないのね・・

「いや、あの・・お返しを・・」

久々に話すってのもあって緊張してカタコト外国人のように要点しか言葉に出てこなかった。しかし堀尾はパァ!と明るい表情をしながら

「ホント!?ありがとう!」

と僕の差し出したお返しを受け取ってくれた。しかも僕を包む程のピンク色を纏いながら

「実はもう新田君帰っちゃったと思ってたから、貰えないのかな?って思ってたんだ」

「いや、他の人とか見てるし迷惑かけるかな?って・・」

「そんなことないよ!でもごめんね・・私を応援してくれてる人達が何かしちゃったみたいで・・」

「あー、いや豆苗美味しかったし気にしてないよ」

「豆苗?」

「あー!いや何でもない!また騒ぎが収まったら一緒にお昼ごはんしよう!」

パニクって豆苗しか出てこなかった

「うん、楽しみにしてるね♪それじゃあまた!」

手を振りながら堀尾が体育館に戻って行った。何とか渡せた!そう思いながら帰ろうとすると視界の隅に赤い煙のような物が少しだけ開いた体育館の窓から漏れでているのが見えた。

「・・赤色は・・怒りの色だよね?」

そーっと見ると少しだけ開いた窓から里香がジーッとこちらを見ていた。めちゃくちゃ赤色を放ちながら・・

「あー、うん。用事も済んだし・・帰ろうかな?」

僕は何も見なかった。そういうことして家に帰った。この日の夕食には久々にバッキバキの茹でる前のソーメンがレモンを添えられて出てきた。里香だけじゃなくてソーメンも赤色を放っていた。



それから春休みまで静かに過ごした。ホワイトデーは里香以外誰にも目撃されなかったが、まだ僕と堀尾がくっつくのでは?という噂は消えていなかった。この沈静化には毒島と仲口が力を貸してくれ、堀尾を含めた大人数を中庭で過ごしたりして、あれはたまたまそうなっただけという話で誤魔化した。そして春休み前になるとすっかりその噂は消えていた。


「お前さ・・春休みは何か予定あるの?」

終業式も終わり帰る準備をしていると急に毒島に聞かれた。去年は仲口と三人で釣り行ったりしたな・・今年もか?それも悪くない

「いや、何も無いけど?」

「実はさ、男バス女バス合同で遊園地に行こうって話になってるけど、お前もどう?」

「へ!?僕部外者だよ?」

「いや、仲口も来るぞ?」

仲口は自分のアゴにカッコつけて手を当てながら

「僕は女バスの下級生の子達から指名があってね♪」

僕は仲口にいつか外出先でズボンのチャックが壊れろ!という呪いをかけた

「それに里香ちゃんも参加するし、里香ちゃんが言うには兄さんを一人で家に残すと寂しがって死んでしまうので呼んで下さいって言われたぞ?」

おれはウサギかなんかか?

「それに・・あれから堀尾とは話せてないんだろ?今回の参加メンバーに堀尾非公式ファンクラブメンバーは居ないから大丈夫だ」

「そっか・・まあ暇だし行くよ」

あれから話せてないのも何かモヤモヤするし、一人で家に居るのも何か寂しいので行くことにした。やっぱりウサギなのかもしれない。

「オッケー!詳しい話は里香ちゃんに聞いておいてくれ」

こうして僕はアウェイ的バスケ部レクレーションに参加することになった。



それから数日後いよいよバスケ部の皆遊ぼう会(←何か名前変わってる)の日が来た。前日に堀尾さんから

『明日は新田君も参加するのよね?参加してくれてありがとう!一緒に楽しもうね♪』

とrineが来た。里香からは

「あくまでもバスケ部同士の交流だから兄さんは変にあれこれせずに静かにしててね。私の荷物持ちでもしててよ?w」

と言われたので気配を消して里香の後ろをついて待ち合わせ場所に行った。ワイワイしたノリは苦手だし、里香を盾にしておくのが楽なのだ。しかし着くと堀尾さんがすぐさま僕に気付いて

「あっ、新田君!里香ちゃん!おはよー」

とピンク色を纏いながら近付いてきた。

「いえいえ、こちらこそ兄がお邪魔しますけど、よろしくです!」

そう言いながらスッと里香が僕を後ろに隠した。やはり人が沢山居るところだ兄弟揃うと恥ずかしいのだろうな・・

「では全員揃ったようなので出発します!電車は10分後のに乗るので遅れないようにお願いします」

と3年生の部長が前に出てきて説明した。誰かと一緒に行動したいなーと思い辺りを見回すが、毒島は同じ部員同士で話ながら電車に乗って行き、仲口は女バス部員の1年生に囲まれていた。里香も堀尾さんと話していたので一人で電車に乗った。何か浮いてないか?そう思っていると

「あっ!里香のお兄さんですよね?」

と横から話しかけられた。可愛らしいワンピースに身を包んだ女の子だ・・確か里香が家に友達を連れてきた時に居たような・・

「あっ、家に来たことあるっけ?」

「そうです!1年の横田優衣です!挨拶ぐらいしかしたことなかったので一度お話したかったんですよー」

嬉しそうに横田さんは話し始めた。里香とは中学から同じでクラスも部活も同じだったらしい。さらに何回も家に来ていたらしいけど、里香は友達を連れてきても僕には会わせなかったので、偶然会ったときに挨拶をする程度だったらしい。

「里香ちゃんったらお兄さんは女の敵だから、あまり話さないようにって言ってたんですよ!」

そんなこと言ってたの!?そんなこと一度もしたこと無いのに・・

「でも話した感じそんなこと無いなーって。そうだ!今日は一緒に回りましょうよ!里香ちゃんは堀尾先輩とずっと話してるし、毒島先輩や仲口先輩は他の子達に囲まれてますし・・」

確かに・・こーいった集まりに行った時に一番怖いのは孤立!一人でポツンとするのは嫌だな・・

「そうだね・・そうしようかな」

と言おうとした瞬間に

「はい、着いたよ!堀尾先輩と話して兄さんが孤立しないように誰と回るか決めたから来て!」

と僕と横田さんの間に割り込みながら僕の手をグッと引っ張って里香が言った。

「えっ!里香ちゃん?私もお兄さんと回ってみたいんだけど?」

「ごめんねー!」

照れていたのかピンク色を放つ横田さんから離されるように僕は里香(赤色)に引っ張られながら電車を降りて遊園地入口に向かった。



「ああ、きれいな景色だな・・やっぱり観覧車はのんびりしていいよね。で・・何で里香と二人で乗ってるんだ?」

「いや・・お化け屋敷とか苦手だし・・兄さん一人に出来なかったから・・」

いや・・堀尾さんが僕に話しかけて来たタイミングでスっと引っ張られた気がするよ?

「まぁワイワイしたのは苦手だしな・・こういったのも悪くないか」

「えっ・・うん・・」

フワっと里香がピンク色を纏った瞬間に観覧車が一週回って地上に着いた。

「あっ、新田君!」

観覧車から降りると堀尾さんが僕を見つけたようで駆け寄ってきた。

「ジェットコースター乗らない?」

「僕と?」

「うん!乗ってみたいけどちょっと怖くて・・頼れそうな人が横に居たらな~って」

ピンク色を放ちながら堀尾さんが僕の横に来た

「ああ、兄さんヘタレだから役に立たないと思いますよ♪」

ニコニコしながら里香が赤色を放っている。今日の里香シ○ア専用ぐらいずっと赤い・・

「そうなの?それは逆に見てみたいな♪行こ?」

グイっと手を引かれて僕はジェットコースターに堀尾さんと乗ることになった


「新田君?何で今日は来てくれたの?」

「いや、毒島達に誘われたからかな・・」

カタカタカタとゆっくり上昇しながら堀尾さんが話しかけてくる。正直苦手なので会話どころではない

「そっか・・私が居たからとかじゃないんだ・・」

「えっ!?」

その瞬間勢い良く落下した。堀尾さんに袖を握られていた気もするが、気を失いそうになりながら情けない声を出しながらコースターに身を任せた



「兄さん?もう無理せずゆっくりしてて下さいね?」

ベンチで寝っ転がった僕に水を差し出しながらシ○ア専用里香がニコニコ睨んだ

「ああ・・そうだな」

さっきの堀尾さんの言葉の意味を聞きたかったけど、なんか気まずいからちょうどいいか・・堀尾さんも僕が毒島達に運ばれたのを見届けたらいつの間にか居なくなっていたし

「ちょっと他の人達に話してくるからそのまま寝ててよ?」

そう言って里香は行ってしまった


「・・先輩?・・新田先輩?」

「・・ん・・朝?」

いつの間にか寝てしまってたようだ。目の前には行きの電車で一緒だった横田さんが居た

「もうお昼ですよ?立てますか?」

「ああ、うん。大丈夫だよ」

立ちあがって手を伸ばした

「お昼は皆一緒ですよー」

「そっか、ありがとうね」

「いえいえ!・・先輩は何で今日参加してくれたのですか?」

なんかさっきも聞かれた質問だな

「いや、毒島達に誘われたからだよ?」

「・・そっか!堀尾先輩じゃないんだ・・」

なんかゴニョゴニョ言ってて聞き取れなかった。もう一度聞こうと思ったら

「先輩!観覧車行きません?少しだけ時間ありますし・・あれなら先輩も大丈夫でしょ?」

「・・うん?いいけど・・」

一人だけ乗り損ねたとか?まぁあれなら大丈夫か


「ああ、綺麗な景色だな・・やっぱり観覧車はのんびりしていいよね♪」

デジャブ?景色を眺めていると

「先輩!?」

急に手をギュッと握った横田さんが僕をジッと見ながらピンク色を放った

「あの・・てっきり先輩は堀尾先輩と付き合ってるって思ってました!噂もありましたし・・」

「ああ・・あれは噂だよ?そんなこと無いし」

「はい、だから私にもチャンスあるかな?って・・」

「ん?チャンス?」

その瞬間横田さんが見えなくなるぐらいのピンク色に包まれた

「はい!・・先輩!私を彼女候補にしてくれませんか?」

「えっ!?彼女候補!?」

もうピンク色で横田さんは見えなかった。ピンク・・照れてる時の色だよな?

「いきなり付き合って下さいとは言いません!でも彼女候補として見てもらえたら嬉しいなって・・返事もすぐ欲しいって言いませんから考えて下さい!」

「え!?・・う、うん」

凄い気迫とピンク色の波に気圧されて思わず返事をしてしまった。・・横田さんって僕を好きなのか?そう考えてるうちに観覧車は地上に着いた

「さっ!先輩!行きましょ?」

「あ・・うん」


皆が揃ってるレストランに横田さんと遅れて一緒に入った僕を迎えたのは、またしてもシ○ア専用ぐらい真っ赤な里香だった。

「兄さん!優衣と何してたのですか?」

「いや、ちょっと一緒に観覧車に・・」

「はぁ!?待ち合わせ時間があるのに?」

「ごめん・・」

「はぁ・・もういいです。午後は皆さんに迷惑掛けないように私のとこに居てもらいますから」

一応外向けの優しい(?)説教を受けながら昼食を取った。


「兄さん、子供の頃以来ですね♪」

「ああ・・」


「兄さん?風が気持ちいいですね♪」

「ああ・・」

午後は何故か里香と一緒にメリーゴーランドに乗り、さらにグルグル回りながら上下するやつに乗った。その途中

「兄さん?優衣と何を話したのかわかりませんが、あのコは最近気になる人が出来たって言ってたので邪魔しないようにして下さいね?」

と他の人がいると敬語になる里香に若干恐怖を覚えながら僕はコクコク頷くだけだった。

しかし・・横田さん僕に彼女候補にして欲しいって言ってたよな?・・気になる人って僕!?ピンク色を放ってたし、照れていたということは嘘ではないよな・・?

「兄さん?そろそろ帰りの時間だから集合場所に行きますよ?」

「あ、はい」

とりあえず考えるのは止めて集合場所に行くことにした。


「先輩?どこに行ってたのですか?せっかく一緒にジェットコースターに乗りたいなーって思ってたのに・・w」

集合場所に着くとニヤリとしながら横田さんが話しかけてきた。

「もう気を失いたくないからやめてね?」

「はは!・・さっきの返事、いつか聞かせてくださいね?」

コソッと僕に囁くと里香の元に走って行った。


「はい!揃いましたか?でははぐれないように皆で帰りまーす」

部長の合図でゾロゾロ駅に向かって歩き出した。

「おう、ヤス!楽しんだか?」

「ああ、半分以上は里香と居たけどな・・」

「ああ・・これは思った以上に里香ちゃん頑張ったみたいだねw」

「確かに・・堀尾に優衣ちゃんも参戦だしね・・」

毒島と仲口がコソコソ話している。

「何?僕のこと?優衣ちゃんって横田さんのこと?」

「ああ、一緒に観覧車乗ってたよな?何かあったのか?」

「えっと・・」

言うべきか言葉に詰まっていると

「なるほど・・よくわかったよ!」

なんかニヤニヤされながらこちらを見られた。あー・・なんか気付かれてるっぽいな・・ちょい遠くから里香もこちらをジッと見てるし

「まぁなんだ・・じっくり考えてみるよ」

「おう、何かあったら相談しろよ?」

そんな会話をしながら帰った。家に着いたら夕食に再びレモンを添えられたバッキバキの生ソーメンが出てきた。やはりソーメンも赤色を放っていた。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る