第2話

コンビニにチケットを発券するサービスがあったなんて知らず、なんて自分は狭い世界で生きてきたのだろうと痛感していた。チケットを発券したのはいいが、手元には2枚、使わない1枚もあった。それから二週間ほどどうしようかと悩んでいたのだが結論が出ることはなかった。というより、結論が出るまでに結果が出てしまった。

いつものように一人で、いつの間にか行きつけになっているカフェに入りチケットで手を仰ぎながらぼーっとしていた。

「一緒に行きません?」最近のカフェでは、会話の声が大きすぎる。

「横座っていいですか?」こう言うのはカフェではなくバーでして欲しいものだ。

「聞いてます?生きてます?」誰なんだよさっきから、と少し腹立たしくなってきた。

「あのー?」肩に少し衝撃が走った。

「え」、今まで自分に話しかけられていたのか、でも誰が?と頭の中で思考が巡った。携帯電話の登

録は、父、母、バイト店長、自宅、しかない自分に誰が、何をと。

「こんにちは、はじめまして、すいません。」本当に典型的な挨拶をしただけの彼女が隣の席に腰をかけた。

「はじめまして?」緊張しすぎて語尾が裏返ってしまった。でも今、そんなことはどうでもよかった。名前も知らない人と話すのは自分の最大の苦手分野だ。


この出会いが、コノサキのウンメイをサユウすることになるとは、神以外誰も知る由はなかった。


「私の名前は酷死。君の当たった孤島に一緒に行きたいなって。」

「コクシ? 一緒に孤島?」僕は戸惑いを隠せなかった。

「そう。残酷の酷に死去の死。よろしくね。」酷死が言った。

「すごい名前だね。」

「うん。よく言われる。」

「へー」

こういう時に「へー」じゃなくて「すごいねー」とか「こわっ」とか言えてたら僕の人生は変わっていたかもしれない。

「ちょっとだけ聞いて、」

そんなこと言われなくても聞いてる。

「ねえ、君彼女いる?」

「いない」

「彼女いたことある?」

「ない」

なんとプライベートなことを聞いてくるのだ。しかも初対面だぞ。反撃ではないが気になったので聞いてみた。

「君は、彼氏いるの?」

「もう、いない。」

「え、前はいたの?」

「少し前までね」

確かにあまり気にしてなかったが、目の前にすわっていたのはテレビでしか見ないような美女でしかも、顔は僕のタイプっぽい。そんなことを考えているとなんだか恥ずかしくなってしまった。

「ねえ、今私に一目惚れした?」

「何言ってんの。」

「したでしょ、」

「してないよ」

「つまんないな」

誰が最初に聞き出したんだよ。君だろ、と心の中で思う。

「忘れてた、一緒にそのー…孤島の城?行かない?どうせ行く人いないんでしょ?私が一緒に行くよ」

「え、ほんと?」

「うん。」

「3泊…二人きり…」

考えれば考えるほど興奮する。

「ねえ、今エロいこと考えてたでしょ」

「いや、考えてないよ」

「ホント?」

「ほんと」

そんな単調な会話が続いた。緊張であまり会話は覚えていないが決まったことは

・明日朝10時またここで

・一緒に、行く

くらいだ。

一様LINEの友達に追加した。やり方は、彼女に教えてもらった。酷死さんに。

また明日、と彼女に言うとうんと頷いてくれた。この時からだろうか、運命を信じ始めたのは。

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古城の殺人 @mannzigawa

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