第1話
❶当選報告
※
およそ一ヶ月前ー。
趣味も、好きなことも、好きなものも特になかった僕が始めたのは「一週間検証生活」。検証生活、と言ってもtwitterで一週間、リツイートしたら何かが当たりますよ系のツイートにRTしまくるだけと言う“生活”とはとうてい言い難いことをしていた(今となってはバカらしい)。
実際、最終日にはRT数が10件と激減していたのだが、何か一つぐらい当選を勝ち取らせてくれるのだろうと思っていた。でもそれは、ただの妄想で終わった。結局、何も当たらずじまいだ。何も当たらずじまいだ。
ただリツイートするという1秒かかるかかからないかくらいのことで現金やら商品が当たるのは不自然だと思ってはいた。一週間を無駄にしてしまった喪失感もあったが特にやりたいこともなかったのでどうでもよかった。
最終日の昼だったっけ、
僕は目の前に流れてきたツイートを見て、思わず笑ってしまった。
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AAB旅行会社100周年記念。
「謎の孤島」へ、3泊4日ペア1組(2名)さまをご招待!
参加費用はナシ‼︎
【参加方法】
①AAB旅行のtwitterをフォロー
②このツイートをRT
7/18日頃、当選者のみに連絡いたします。
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「謎の孤島」「参加費ナシ」「3泊4日」と言う衝撃の三段重ねに思わず声に出して笑いそうになった。よく見ると、すでにリツイート数は2万件を超えていたので当たるはずがないだろうと言う推測の元慣れた手つきでRTボタンを押した。
※
検証生活をするためにインストールしたtwitter、作ったアカウント、作った偽プロフィール。全てが異味のないものだったのか、と落ち込んだりするような自分ではない。
もうこの先使うことのないであろうtwitterのアカウントからログアウトしようとGoogleで「twitter ログアウト 方法」と検索した。何のためか誰のためか知らないが、どんなつまらないことでも検索すれば何でも出てくる時代になったのはいつ頃なのだろうか、と誰かに聞くよりもやっぱり検索する方が早かった。
スクロールする画面で一番信用のおけるページ(おおよそ)を開き、開いていたタブを閉じ、再びtwitterの画面と睨めっこを始めようとしていた。
そんな時、妄想で5〜6件来るのではと想像していたダイレクトメールに①と、新着メールが届いていた。
詐欺メールだろうか?なりすましだろうか?、考えるより見る方が早かったのでメールを開いた。
アカウント名を「AAB旅行【公式】」と名乗り、横には公式マークがついているそのアカウントからのメールに何度も目を通した。
《ご当選おめでとうございます。》
《あなたは、約3万名様からご応募いただきました「謎の孤島3泊4日ペア宿泊旅」の抽選に》
《見事ご当選されましたのでご連絡差し上げております。》
《注意事項をよくお読みいただき、ご理解いただけましたら kotoupea@eda.com までご連絡ください。》
《注意事項はこちら→ www.kotounosiro.jp 》
何度読んでも内容が変わることはなかった。嬉しいという感情よりも3万分の1に当たってしまった自分はこの先どんな不幸な人生が待っているのかと危惧していた。
ふと思ったのだが、これは“ペア”で行かなければならないのだろうか。僕にはペアでどこかに行くような友達や親友もいない、なおさら彼女なんてもってのほかだ。ただここでキャンセルするのは申し訳
ないと感じたので典型的なメールで参加を承諾した。
「
株式会社AAB旅行様へ
先ほど謎の孤島の件で当選のご連絡をいただきました、赤座省吾です。
twitterのアカウント名は 「@akazanoza 赤座ショーゴー」です。
参加の意向を伝えるためご連絡いたしました。
住所は
☆◇県巣筋市羅亜町⚪︎⚪︎-◇
です。
よろしくお願いします。
」
心音が少し大きくなっていることは感じたが、冷静さは保っていた。
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