お題のおかげで久しぶりに推し活をした話

黒いたち

お題のおかげで久しぶりに推し活をした話

 たのしいカクヨム誕生祭。

 お題の「推し活」を見て、久しぶりに推し活をしてみようという気になった。


 中学のときから好きなアーティストのライブDVDの、ひとり鑑賞会だ。


 再生した瞬間、とまどった。


――え、これ無料で見ていいやつ?


 もちろん、正規のルートで手にいれた円盤なので、購入時に定価を支払っている。

 しかし、ライブ=チケット代に、交通費や宿泊費などの遠征費用必須なので、脳がバグった。

 もちろん、それは理解している。だってこれはDVD。

 しかしまたすぐに思う。


――え、これ無料で見ていいやつ??


 開始3秒で、IQが3になった。

 



 現実時間で、19時開演。

 自宅の六畳部屋が、さいたまスーパーアリーナになる。

 ツアーの最終日。グランドファイナルだ。

 この前回と前々回は、緊急事態宣言のために公演中止になったらしい。


 オープニングはステージのスクリーンに映し出される映画――のような小芝居の映像。

 字幕で笑わせてくる。


 コロナ禍でのライブは、マスク着用と、歓声の代わりに手拍子だった。

 それでも観客の瞳はきらきらと輝いていた。


 そしてはじまったライブ。

 1曲目からすでに思う。

――生きていてくれてありがとう。


 2曲目。

 すこしむかしのバラード。

 その曲が発売されたころがあざやかに脳裏によみがえる。

 まるで走馬灯のようだ。

――え、私もう死ぬん? はやくない?

 

 アップテンポの曲で、汗をながしてテンションを上げる。

 むかしの曲が演奏されるたび、涙活じゃん……とおもいながら涙し、感嘆のためいきをつくたびに、体の中のいらないものが一緒に出ていく。


 動いて泣いて笑った二時間半。

 完走後は、とても清々しい気分だった。

 

 楽しむだけでいい時間は、肩書や役割を忘れて、ただの「自分」にもどしてくれた。

 いつのまにか背負ったものがあって、その時だけでも下ろせた今になって、とても重かったことにようやく気付いた――自分は、がんばっていたんだ。


 楽しまなきゃ損だ。

 推し活も人生も。


 些細なことをいつまでも悩みつづけ、ひどい自己嫌悪にまみれ、毎日うまくいかなくて、恥ずかしかったり情けなかったり、疲れて疲れて笑えなくても、いつか必ず死んで終わる。


 それまで私は生きている。

 私にとって、書くことは生きることだ。

 何かを残せたとしても、何も残せなかったとしても。

 結果にとらわれず、書きたいものを書こう。

 

 ひさしぶりに自分のことを想った、いい夜だった。

 だから感想はこれしかない。


 ありがとう、推し活!!

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お題のおかげで久しぶりに推し活をした話 黒いたち @kuro_itati

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