必殺! シャークバスターズ 小ネタ集

武州人也

名前ネタ

〇実在のサメからつけられた名前


葦切よしきり凪義なぎ 葦切→ヨシキリザメ

 メジロザメ目メジロザメ科ヨシキリザメ属のサメです。この属は一属一種です。

 成魚の全長は三メートルほどになります。体型は細長く、青く美しい色をしています。「最も美しいサメ」なんて言われることもありますが納得です。体型や色の美しさもさることながら、目がくりっとしていて可愛らしい顔をしています。

 美しい見た目と可愛らしい顔つきに反して気性は荒いようで、シャークアタック(サメによる人身事故)の例も報告されています。また、よく食用に漁獲されるサメとしても知られていて、ヒレはフカヒレに、身はかまぼこなどの練り物に利用されます。気づかないうちに食している可能性の高いサメでしょう。

 見た目の美しさと、「よしきり」という語感が気に入ったので、作中屈指の美形である凪義くんの名前にしました。


谷治深やじぶかしゃち 谷治深→ヤジブカ(メジロザメの別名)

 メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属のサメです。この属は多くの種が属していて、見た目もよく似ているためたいへん紛らわしいです。

 成魚の体長は二メートルほど。いかにもサメといった見た目をしています。メジロザメ属のサメは似たような姿の種類が多くたいへん紛らわしいのですが、本種は同属のサメと比べると大きい第一背びれをもっていて、そこで見分けられます。

 気性はおとなしめで、シャークアタックのリスクは低いようです。小さな餌しか食べないため、人間を捕食対象と見做す可能性もないと思われます。生息域の関係から、人間と接触する機会自体もあまりないサメでしょう。


・ドナルド・マコ マコ→Mako shark (アオザメの英語名)

 ネズミザメ目ネズミザメ科アオザメ属に属する二種(アオザメとバケアオザメ)をまとめた呼称です。Makoはマオリ語でサメを意味します。アオザメはShortfin mako shark、バケアオザメはLongfin mako sharkと呼びます。

 どちらも成魚の全長は四メートルほどになる大型のサメです。同じネズミザメ科だけあってホホジロザメと似た顔つきをしていますが、こちらの方がやや細長く尖った体型をしているように見えます。また、名前の通り青い体をしています。ちなみに英語でBlue sharkというと前述のヨシキリザメを指します。

 外洋に生息しており、魚類や海棲爬虫類、海棲哺乳類などを幅広く捕食しているとされます。餌の少ない外洋に住むという性質上餌に対しては貪欲と考えられ、人間を捕食対象と見做して襲う可能性もあります。とはいえ沿岸に接近してこないので、このサメに出くわす場面はほぼありません。シャークアタックのリスクは非常に低いでしょう。

 アオザメというと、映画の世界では名作アニマルパニック映画「ディープ・ブルー」の主役として知られているサメです。この映画は非常に面白いので未視聴の方は是非とも。「サメ=B級・Z級」のイメージを根本から裏切る優れた作品です。

 ちなみにドナルド・マコのドナルドの部分は一部界隈でカルト的な人気を誇るサメ映画「エクソシスト・シャーク(旧題デビルシャーク)」の監督ドナルド・ファーマーからとっています。

 漁師町の荒っぽい男である鯱くんにはおとなしいサメであるヤジブカの名を、気弱でへっぴり腰(だが実は強力なスピード系インファイター)なドナルドくんに荒々しいアオザメの名をつけたのは遊び心です。


黒縁蓮くろへりれん 黒縁→クロヘリメジロザメ

 メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属のサメです。同属のサメの多くが熱帯・亜熱帯の海に生息するのに対して本種は温帯域でよく見られ、日本の本州沿岸でも見られるサメです。

 成魚の全長も二メートルから三メートルと、メジロザメ属のサメの中では平均的です。シャークアタックの例はあるようで、オーストラリアやニュージーランドで死亡事故が報告されているようです。他のメジロザメ属と見分けるのがたいへん難しく、サメに詳しい人でも同定は困難を極めるようです。


頬白ほほじろ八千丞やちすけ 頬白→ホホジロザメ

 もはや説明不要ともいえる有名なサメ。ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属のサメです。一属一種ですが、絶滅した巨大ザメであるメガロドンを本属に加えるか否かで論争があるようです。

 成魚の全長は四メートルから五メートル。六メートルクラスの個体も確認されています。行動範囲も広く、亜熱帯から亜寒帯の海まで生息し、東京湾にも姿を現したことがあります。

 体が大きく、加えて肉を齧り取ることに適した三角形の牙をもつため、大型の魚類やウミガメ、海棲哺乳類など体の大きな動物を餌としています。高次捕食者であり天敵はほぼいないように思われますが、ホホジロザメよりも体が大きく、群れを成し、知能が高く、硬い骨をもつシャチにはかなわず捕食されてしまいます(シャチの成体は平均六~七メートルほどになる)。報告例は少ないですが、一九九七年にアメリカ・サンフランシスコ沖の海でホホジロザメを襲う二匹のシャチが目撃されています。

 大型で泳ぎも素早く、齧り取りに適した歯で大きな獲物を捕食し、気性も荒く、沿岸にも接近するという特徴のため、サメの中でシャークアタックが一番多く報告されています。

 「人間にとって最も危険なサメである」という面が(実態以上に)強調され、一九七五年に公開された傑作映画「ジョーズ」によって巨大な人食い怪物のイメージが人口に膾炙しました。数多くのサメ映画で主役となり、人間を食らった挙句(主に爆発物などで)退治されるのが定番となっています。

 知名度に反して水族館で飼育展示されることはほぼありません。(前述のヨシキリザメやアオザメもですが)長期飼育が非常に難しく、搬入しても数日程度で死んでしまうようです。前述のヨシキリザメのような長期飼育成功例(仙台うみの杜水族館が八七三日の飼育に成功した)もないため、水族館で実物を拝む機会は絶望的といえます。


天竺てんじく真帆まほ 天竺→テンジクザメ

 テンジクザメ目テンジクザメ科テンジクザメ属のサメです。ホホジロザメと並んで有名な「最大の魚類」ことジンベイザメや、「陸を歩くことができる」というサメ映画から抜け出てきたような能力をもつマモンツキテンジクザメ、大きな体格を持ちながら温和で無害であるため水族館でよく見られるトラフザメもテンジクザメ目に含まれます。

 テンジクザメ科は全長数十センチメートルから一メートルほどしかならない小型種が多いのですが、本種もその例に漏れず成魚の全長は一メートルほどです。肉食性ですが小型な上に性格もおとなしいので、人間にとって脅威となることはまずありません。

 余談ですが本種を含むテンジクザメ目のサメは、「サメ」という名で想起される凶暴で攻撃的なイメージとはかけ離れた可愛らしい見た目のサメが多く、サメファンの間で独特な地位を築いています。言うなればサメ界のアイドルのような存在ではないでしょうか。マモンツキテンジクザメが水槽の底を這う姿は本当に可愛い。

 さらに余談ですが、「天竺」という苗字は日本に実在しています。香川県や近畿地方にいらっしゃるそうです。


尾長おなが陽葵ひなた 尾長→オナガザメ

 「オナガザメ」というサメは存在せず、ネズミザメ目オナガザメ科オナガザメ属に属する三種類のサメ「マオナガ」「ハチワレ」「ニタリ」の総称です。

 名前の通り尾びれが非常に長いという共通点があります。体も大きく、一番大型になるマオナガは全長七メートルという記録があります。この尾びれを水面に叩きつけて獲物となる小型魚や頭足類などをおびき寄せ、群れごと一気に捕食する、という特異な捕食スタイルをもつようです。

 どの種も主に外洋に生息していますが、ニタリのみは沿岸にも接近し、運が良ければダイビングでも出会えるそうです。


谷治深やじぶか温田おんでん 谷治深→ヤジブカ(メジロザメの別名) 温田→オンデンザメ

 オンデンザメはツノザメ目オンデンザメ科オンデンザメ属のサメです。深海棲のサメであり、北太平洋に生息しています。

 同目のサメの中ではニシオンデンザメと並んで大型になり、全長は四メートルほどになります。また全長七メートルほどの個体が撮影されています。大型で肉食ですが、深海に棲むためシャークアタックのリスクはまずありません。

 近縁の深海ザメであるニシオンデンザメが数百年の寿命をもつとされていることから、本種も非常に長寿、かつ成熟の遅いサメであるとされています。深海という人間が手出ししにくい環境に暮らしているため、その実態にはまだまだ謎が多いようです。



〇それ以外


雪丘ゆきおか

 サム・クアリアナ監督作品「スノーシャーク 悪魔のフカヒレ」とマーク・ポロニア監督作品「ランドシャーク 丘ジョーズの逆襲」からとっています。いわゆる「Z級」と呼ばれる超低予算作品のひとつで、そうした映画を日本で配給しているコンマビジョン社によって二〇二〇年に日本上陸を果たしました。

 「スノーシャーク 悪魔のフカヒレ」はニューヨーク郊外の雪山に「雪ザメ」が出現するというシャークパニック映画で、サム・クアリアナ監督自らが主演を務めています。この作品がアメリカで公開されたのは二〇一二年のことで、実に八年もの歳月を経てようやく日本上陸を果たしました。

 「ランドシャーク 丘ジョーズの逆襲」は実験によって生まれた「ランドシャーク」が登場するシャークパニック映画です。ゆるふわな作り物のランドシャークや雑な合成などによるチープな絵面は、同監督の作品らしさを感じさせます。こちらもマーク・ポロニア監督自らが出演しています。このとき作られたランドシャークは同監督の映画「エイリアンVSジョーズ」にも流用されています。


二頭にとう

 アサイラム社製作のサメ映画「ダブルヘッド・ジョーズ」からとっています。「多頭系サメ映画」の鏑矢となった作品で、「トリプルヘッド・ジョーズ」「ファイブヘッド・ジョーズ」「シックスヘッド・ジョーズ」という三つの続編が作られました。


・葉栗鼠島

 前述したZ級サメ映画「エクソシスト・シャーク」(旧題デビルシャーク)に登場する湖、パリス・ランディングからとっています。テネシー州に実在し、州立公園になっています。


・網底島

 網底→あみてい→アミティで「ジョーズ」の舞台アミティ島からとっています。アミティ島は架空の島で、実在はしていません。マサチューセッツ州にあるマーサズ・ヴィニヤード島という場所がロケ地になっており、「ジョーズ2」「ジョーズ'87 復讐篇」もこの島で撮影されています(ただし「復讐篇」の舞台はバハマという設定になっている)。

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