僕と義姉の推し関係

葉素喜

推し活と推し活


 『推し活』。


  自分の好きなアニメのキャラクターだったりアイドル、俳優女優など、ある特定の何かを対象とし応援する活動のこと。

 それには鉄道や建築物などを対象に含まれることもあり、ある種一昔前に流行ったヲタ活と似通った活動でもある。


 そんな推し活をしている人物が僕の身近に一人いる。


 そしてその対象は僕。

 つまり僕の推し活をしている人物がいるのだ。


 別に自惚れているわけではない。もちろん勘違いでもない。

 何故なら彼女自身に直接僕を推していることを告げられたからだ。


 いや、彼女なんて他人行儀な言い方はダメだ。そんなことをすれば例え心の中でだろうと、彼女……義姉ちゃんは僕の元に飛んでくる。



「あーきー!!!!」


 そんなことを考えたのがいけなかったのか、やっぱりお義姉ちゃんが俺の部屋に突入してきた。

 即座に高校生になっても二つ年上のお義姉ちゃんより身長の低い所謂ショタ体型の僕は、お義姉ちゃんの膝上に乗せられ撫でくりまわされる。


「他人行儀な呼び方は感心しないぞー?」


 声に出していないのに何故彼女なんて言い方をしたのがバレたのかと思いつつも、こうなっまお義姉ちゃんを止める術はないのでしばらぬの間身を任せる。



 神影夏紀。

 僕の通う学園ではスポーツ万能、成績優秀、文武両道、品行方正、眉目秀麗などで有名の誰にとっても憧れの存在である完璧超人生徒会長

 だが、僕個人からすればお義理ちゃんの印象は残念美人のスーパーヲタクである。


 僕が小3、お義姉ちゃんが小5の時に家族になってから、仲良し姉弟として知られる僕ら。


 僕だってもちろん尊敬しているし、義理ではあるが家族としては大切で大好きな存在である。


 ただ、そんなお義姉ちゃんには僕以外が知らない秘密が存在する。


 それが僕の推し活をしているということだ。


 そんなお義姉ちゃんの秘密を知ったのは、僕が中学生の時。


 絶対に入るなと言われていた秘密の部屋、お義姉ちゃんの部屋に寝ぼけて入った時に、僕の写真がプリントされた抱き枕抱き抱えて寝ている姿を見たからだ。

 そしてそんなお義姉ちゃんは、僕に見られたと察知した瞬間に覚醒し、寝起きだというのに俊敏に動いて見せ、僕を制圧し、秘密にしていた推し活のことを告げてきた。

 それを告げてくるお義姉ちゃんは、いつもの自信に満ち溢れている姿とは似ても似つかぬもので、まるで親に怒られるのを怖がる子供のように見えた。


 だから僕はそんなお義姉ちゃんを抱きしめて、気にしていないと伝えた。

 もちろんまったく気にしていないということはなかったが、抱き枕にするくらい義理の弟を大切にしてくれていると考えれば悪いことでもないかなと思ったのだ。


 そこからお義姉ちゃんは僕の前でだけ僕の推し活を隠すことをやめた。


「推しが尊い」


 最初は意味の分からなかった言葉もお義姉ちゃんのおかげ? でわかるようになってきた。


 わかったところでどうということはない。


 それでもお義姉ちゃんが使っている言葉の意味を知れるということに意味があるのだ。


 何故かって?


 それは僕の推しがお義姉ちゃんだからだ。



 ミイラ取りがミイラになるように。


 僕は僕を推していたお義姉ちゃんを推している。

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僕と義姉の推し関係 葉素喜 @goto51022

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