推し活 エルヴィン・スミス
春秋 頼
第1話 推し活 エルヴィン・スミス
進撃の巨人で、調査兵団第13代団長のエルヴィン・スミスに対して多角的な角度から彼の発言、行動、思想等を分析してみた。
我々の世界でもエルヴィン・スミスのような人物は存在するが、人知れず消えていくのが現実である。
私たちのこの世界で、信じられないような事は、多々、現実に起きているが、
殆どの人にそれが気づかれる事は無い。
世界的に進撃の巨人は漫画であり、世界観も違い現実ではないが、人間という枠で言うのであれば、私たちのこの世界の人間と何ら変わりはない。
エルヴィン・スミスとリヴァイ兵長には、特別な繋がりがあった。それは二人にしか分からないが、確かな絆のようなもので、彼らは結ばれていた。
私は多くの漫画を読んできたが、この二人の関係性は通常では無い。それは敢えて作者がそう描いたのか、作者ですら、ある種の感情移入があったのかもしれない。
小説や漫画では、少なからず自らが描いたキャラクターが、予想外な方向に動くことがある。ハンターハンターの富樫氏の後書きに書いてあったが、天空闘技場でクロロとヒソカはどちらが勝つか、それを描く本人でさえ分からないまま描いたと書いていた。
私の予想では、お互いのキャラクターの特性を最大限に活かしながら、戦わせたのだと私は思う。富樫氏は非常に言葉も巧みで、良いキャラクターでも、その後の展開を更に面白くするならバッサリと殺す。
そしてクロロとヒソカの戦いに関しては、私が知る限り、富樫氏の中でも異例だったと推測する。それはひとつの戦いに対して、6話使っている事からそう私は判断する。ひとつの戦いで6話使うほど、お互いの力、特にヒソカの力を引き出す為、6話も使ったものだと言える。クロロとヒソカの関係性は単純だ。単純でもあり、非常に純粋でもある。
話をエルヴィン・スミスとリヴァイ・アッカーマンに戻す。
まず第一に言えるのは、リヴァイのエルヴィンに対する信頼感だ。
信頼感だけに視点を置くと、エルヴィンがリヴァイを信頼するよりも、別種のような信頼をエルヴィンに寄せている。
これは恋する女性が、彼氏を信頼するものに似ている。似ているだけであって、そういう関係では全く無い。それほどまでに、彼を疑わないという事だ。
私たちの世界でも、ファンタジーは存在しないが、アメリカにはCIAがあり、イギリスには英海軍情報部とMI6で、実際に工作員として活動していたイアン・フレミングがその活動の全貌は言えないだろうが、実際にそういった行為がある事を口にしている。
近年で世界中を巻き込んだのはやはり、エドワード・スノーデンの名前以外は上がらないだろう。2009年に現実に起きた事だ。映画化もされている。
彼は日本語も話す事ができ、日本のゲームの鉄拳のファンである。日本よりも海外での人気が高い私も好きなゲームである。
彼は実際、日本のニュースでもテロリストとして当時は、追われていた。私は当時、一連の流れを知っていた為、バーでお酒を飲みながら、逃げ延びて欲しいと願っていた。私以外誰一人として、そのニュースを見ている人はいなかった。
このように、現実的に世界観は違うが、非常に命の危険性が高い問題は、世界では起きている。
人は皆、自分自身の身の回りで起きている問題やトラブル等、どこまで把握しているのだろうか。私は規模は小さいが、母親の病的な支配欲のせいで、盗聴器やスパイは小学生の頃には、当たり前のようにつけられていた。
私が人に心を開くのが苦手になったのは、そのせいもあるのだろうと今は思う。
実際、母親は重度の精神病にかかっている。私はバー等に飲みに行くようになると、バーで飲んでいて真後ろにドアがあったが、振り向かなくてもガラスに映る人を確認していた。後ろに目がついているのか?と言われた事があったほどだ。
用心深くなると、それに対応するようになる。そして、自分を誰にも見せられなくなる。私や真に親しい友人たちも、似た様な状況の中で生きてきた。
エルヴィンが最後死ぬ前に、言った言葉に対して、リヴァイは驚きを見せた。
死ぬ前に地下に行きたかったというセリフで、リヴァイは問い詰めることは無かった。それはリヴァイが賢いからでもある。賢さが近しい人間同士には、相手がどんな
人物であるかが分かるからだ。
エルヴィンはある程度までは、予測はしていた。だが、それは真相では無い。
彼は確固たる真実が知りたかった。自分のせいで父親が殺され、それは触れてはいけないものだと分かってから、彼は調査兵団に入ってからは無口になった。
そしてこれは私たちの世界と共通している事である。私は昨夜それを知った。
エルヴィンもそれを知っていた。だからこそ、その真実を知る為に彼は生きてきたと言ってもいいほどだ。
私が昨夜、ある事に気づいたのは、十分に知っている事であり、理解も十分にしている事だった。しかし、昨夜、久しぶりにブラックホーク・ダウンという映画を見て
ある事に気づいた。あの映画は実話を元に作られている映画であり、戦争とは何かを
我々日本人が見ても理解できない世界の話だ。
しかし、私は多数の哲学者や、数学者、スポーツ選手などの多くの彼らの言葉は知っている。勿論、意味も理解している。
だが、全員と言ってもいいほど、最後の言葉は皆、頑張れという内容が大多数を占める。私はそれを理解していた。いつものように深々とその人の人生も調べ上げて、しっかり知った上で理解していた。
だが、ウクライナの問題からブラックホーク・ダウンの映画を見て、ある事に気づいた。それはラストのほうで会話する二人の言葉だった。
内容はごく一般であったが、私にとっては違った。
私は仕事は基本80%で事足りる。一度だけ難題な仕事の時でも120%ほどで問題は無かった。
しかし、私の一族との戦いでは、300%以上は出した。精神面も入れていくと1000%の力を出し尽くして、狂うほど苦しんだ。それは体験しなければ分からない世界だ。
私はPTSDになったが、あの戦いは心の中に鍵をかけて封印して、何とか復帰した。
時間もかかった。
映画の最後のほうで、地元の友人に、何故戦争にいくんだ? 戦争中毒なのか?等色々聞かれるが、特殊部隊のデルタ隊員は、聞かれても答えないと言った。
自分は仲間の為に戦っているが、彼らには理解できないから言わないと言っていた。
私はその台詞で、答えが見えた。何故、世界中の優秀な人達が、最後には頑張れとしか取れないような言葉しか残してないのか。
そう、つまりは言葉には出来るが、理解はしてもらえない世界の言葉だからだ。
私の力の限り戦った冷戦のような戦いは、アレ以上の事は死ぬまで、体験できないだろう。しかし、私は気づけた。
そして彼らも狂うほど、頑張っているのだと、気づかされた。昨夜は私にとって大きな、そして何よりも大事な言葉の意味を知った。
私が戦ったのは、あくまでも一族が情けないからだ。肩書だけで、周囲は誤解している。そうじゃなく、本当に大切なものを見ろというために、私はひとりで戦った。
あの戦いは私個人の為だけの戦いでは無かったが、真の頑張れの意味を知った。
そして私はそれを体験した。どれほど頑張るものかを知っていたからすぐに理解できた。彼らの言う頑張れは、通常の人には理解する事は決して出来ないものだ。
エルヴィン・スミスは個人的に私と似ている。彼は命令する度に、言い聞かせるしかない。それはこの頑張れと似て非なるものだ。おそらく死ぬであろうと分かりながらも、部下からの信任の厚さを利用して、命令を下す。非常に辛く苦しいものだが、それを知る者は少ない。我々の世界でも、漫画の中でも、彼は常に毒にまみれて生き抜いていた。
その心が分からない人は多いだろう。その辛さを知るには何度も経験するしかない。
殆ど、部下に命令を下す時の彼の心の中では、自分に何度も言い聞かせる。それ以外どうすることもできない。彼は最後まで仕事をやり遂げた。
避けるわけでも無く、まるで自分から死にに行くように突っ込んだ。
彼のその辛さを理解していたのは、リヴァイしかいなかった。
だから最後に、リヴァイは言った。新兵どもを地獄に導けと。
これはエルヴィンもリヴァイも同様に、部下に対して死の命令を下してきたから
エルヴィンが腕を上げて、注射を拒んだのだと、半分言い聞かせるように
リヴァイは自問自答した。その毒された心が分かるから、リヴァイは敢えて
エルヴィンを殺した。
このように人の心が分かるようになるには、当然苦しみも味わなければならない。
理解するには経験するしかない。状況を知るには体験するしかない。
私はエルヴィンの心は痛いほど分かる。予想し、おそらく90%以上の確率で当たっている。しかし100%では無い。彼の幼少期から調査兵団に入隊したての頃は
持論を話していたが、途中から何も話さなくなった。意味は多くあるだろう。
まず誰も信じてくれない。そして自分の命を捨ててでも、知りたい事があった。
父の死の真相であり、この狭い世界にしか本当に人間はいないのかという疑問。
そして、禁断とされてる事をあまり口にすると、父が消えたように、消されたように
真実を知る前に、自分も同じように、誰にも知られる事なく消える事を悟ったからだ。
エルヴィンの辛さはよく分かる。日々生きる辛さに、弱音を吐ける相手はリヴァイしかいない。しかし一人でも、理解してくれている人がいる事は、何よりの救いであっただろう。
リヴァイはエルヴィンとの約束を果たした。それはリヴァイの心の中ではエルヴィンが生き続けていたからだ。そしてエルヴィンが、最後の責務を果たした最後の約束を守る為だった。
お互いが最も、理解者であったためだろうと私は思う。
推し活 エルヴィン・スミス 春秋 頼 @rokuro5611
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