二次創作(小説)のジレンマ
ユラカモマ
二次創作のジレンマ
「おまえ本当に俺のこと好きなのか?」
「好きに決まってんじゃん!!」
見下すような声の推しにギャンッと効果音の付きそうな声で叫び返す。握りしめたスマホ画面の推しは今ちょうど親友だと思っていたやつに殺されて死んだところだ。ちなみに原作ではなく自作の二次創作の小説である。
「俺を好きと言う割には俺のこと殺し過ぎじゃないか?」
「その件に関しては非常に申し訳ないと思ってます」
フローリングの冷たい床に土下座しながらも続きをぽちぽち打ち込んでいく。ちなみに今書いているやつでこのジャンルにおいては8作目の小説になるが推しはこの8作の内6作において死亡している。死亡率は実に75%。確かに高い。だがそれも愛あればこそそうなってしまうのであって好きじゃなければそもそも二次創作とか書かない。好き過ぎてとち狂った結果がこの死亡率なだけだ。
「推しだからこそメインじゃなかろうといっぱい登場させたくなるし見せ場を作りたくなる。けれど私の書く小説で見せ場をつくるということは往々にしてひどい目に合うということでして…!」
「作風変えるのはどうだ? 読む方ではハッピーなのも好むだろう?」
「読む方は、ね。読むときの趣味と書くときの趣味は違うから…なんなら自分が書いたやつでも読者として客観的に読んだときこれ地雷です! って叫びたくなるようなやつもあるから…私にとって二次創作とは自分で自分の首を絞めるものっていうか自分で自分の足元に地雷原作ってるようなもんだから…」
どうがんばっても避けきれない地雷原…書いているときは楽しいのに読み返すときにスンッて心が死ぬ。自分でも意味が分からない。
「どうしようもないやつだな…」
「うっ…引かれてショックな気持ちとご褒美ですみたいな気持ちが入り交じって辛い。エモい。尊い。次はもう少しハッピーになるようにがんばるから…ごめんなさいごめんなさい」
「毎度言ってるがよそ様で見るような心暖まるハッピー展開になったことないよな?」
「極力そのキャラクターらしさを発揮して死ねるように苦心はしてる!」
「殺すなよ。原作でも殺されてないのに」
「ごめんね、原作ではほんと死なないで。幸せになって。じゃないと安心して二次創作で殺せない」
「ほんっとうに頭おかしいな」
「推しに狂ってるからしょうがない」
まっすぐ気持ちを向ければ顔を隠す推し、尊いかよ。これだけでご飯100杯いけるわ。
「さぁ次の書ーこうっと」
今度はあの原作で仲の悪いやつとケンカップルになってもらった後病んでもらうとか楽しそうだ。ヤンデレとか死ぬとかは現実どころか二次元でも勘弁してよと言いたくなるときもあるが二次創作は平行世界がいっぱいあるので残機は無数。どれだけ推しを死なせても推しが死なない…むしろ輝くねじれた世界。この世界に足をとられたことで私の
二次創作(小説)のジレンマ ユラカモマ @yura8812
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