第16話 決戦前夜

「ほら、こっちだぞ!」

「今度はこっちよ!」

「見てください! この私の五連射を!」

「うふふ、ショウヤ君! 行くわよ!」

「昨日より一人増えてるんですけど! サヤカさん、何やってるんですか!」



 見ての通り、今日もジミーな特訓をやっております。


 魔力感知の感覚を掴んだおかげか、魔力無しで被弾を受けることは少なくなりましたね……。



「じゃねえよ! タクヤさん! これいつまでやるんですか!」

「うん? もう終わってもいいけど」

「えっ!?」

「そこまて反応できるんなら、ある程度の戦闘には付いていけるだろうしな」



 なんだと……。



「そんな……、じゃあ今日のこの時間はいったい……」

「悪い、なんか面白くて、ついな……」

「ちょっとタクヤさん、流石にそれは」

「おい、そんなに怒るなって……」

「そうよショウヤ、これでより強くなってるに決まってるわ!」

「エルマ、ユミ! お前らも同罪だぞ!」

「ショウヤ様! 私はどんな罰でも受け入れます!」



 はぁ~。


 まぁ確かに、三日前までとは魔力の感じ方がまるで違う。


 それに、魔法を複数扱うこのスキル……。


 色々試しがいがあるな。



 こんな感じで、俺達一行は道中で魔物を退けながら、本日の移動も終わりを迎えた。



「よぉし! 明日は王都ダルムスに立ち寄る。そこで、詳しい状況を聞き、この馬車を預けて、早馬を借りて向かう!」



 なんで、馬車を置いていくんだ?



「馬車のメリットは荷物を乗せられる。長時間走るのに適している。が、それでは時間が掛かるので、一日走るくらいなら早馬の方がマシなんだよ」


 

 なるほど!

 ということは、いよいよ明後日には目的地に着くってことか。


 明日までに色々と試しておこう。


 俺はこっそりと抜け出し、少し開けた場所に座る。



「今のところ、ファイヤーボールなら複数出せるわけだけど、スキルでも同じ様にいくのか……」


 試してみとかないとな。


「遠隔暗殺!」



 空間に穴があく。

 あとは、これをもう一つ。



「開いた!」

 まだ開ける。


 まだ開ける。


 まだ開ける……。



 どうやら個数制限は数えれないくらいには出せるらしい。


 あとは、座標調整が問題だな。


 今みたいに、均等に一列出すだけなら、簡単だが、動く複数の敵に当てるとなると、ムズい!



 そして、このスキルと魔法は同時に出せるかだが……。



「ショウヤ様! なにコソ練してるんですか! ユミも混ぜてください!」

「うわぁ! そんなくっつくなよ!」



 くそ~!


 ユミのやつ、昨日からやたら距離が近い。

 あーもう! 昨日のアイツの顔が頭から離れねぇ!



「なぁユミ、昨日の事なんだけどさ……」

「ショウヤ様! それはまた今度、ムードの良い日にしましょ!」


 


 女ってわからん……。



 さて、そんなこんなで無事俺達は翌日、王都ダルムスへ到着したのだった。



「うぉー! これが王都か! 見ろよユミ! 外壁があって、その回りは川になってるぞ!」

「はい! これは想像以上に綺麗な街並みですね!」

「なに浮かれてんだか……」

「まぁまぁエルマちゃん、二人は王都は初めてだろうからさ」



 こんなに広い街なんだ。


 武器屋とか、道具屋とな見て回りたいな!



「あ、言っとくが観光してる余裕なんて今日は無いからな! 帰り道なら自由にして貰って良いぞ!」



 ガクーン!!!


 まぁいいさ、いつでもこれるさ。



「ほら、こっちだ行くぞ!」

「はーい!」



 俺達はタクヤさんに連れられ、王都騎士団の詰所へと向かった。



「おぅ、タクヤ! 来てくれて嬉しいよ!」

「久しぶりだなボブ、少し太ったんじゃないか?」

「相変わらずで何よりだコノヤロウ!」



 ここが騎士団の詰所か……。


 思ったよりも人が居ないな。


 勝手にみんなここで訓練してるイメージだったんだがな……。



「タクヤに依頼したのは他でもない。暴龍の件なんだが、これはS級冒険者並の使い手に頼みたい所だったんだが、みんな戦争で忙しくてな、どうか宜しく」


「それで、ヤバイのかこれは?」

「あぁ、ヤバイ……、先遣隊のラーズ隊がやられたらしい……」



「ラーズ達が! 平均レベル二百のエリート部隊だろ!」

「そうだが、生き残りが言うには、ドラゴンが八体も襲ってきて、それを操る魔族がいたそうだ……」

「そりゃまた、やばそうだな……」



「まぁ、お前ぇさんなら心配いらねぇだろ!」

「さぁて、どうだかな……」


 


 おいおい、本当に大丈夫なんだろうな!


 こちとら新米冒険者なんですけど!



「あっちに馬を用意してるから、いつでも持っていきな」

「サンキューボブ! いつも準備がいいな」

「お互い様よ!」



 詰所を後にし、俺達は今晩の宿に泊まる。


 明日は早朝すぐに馬で向かうらしい。



「さぁて、明日はいよいよフーレス村へ到着する! 危険な所だろうが、俺達ならできる! てなわけで、早く寝るぞ!」



 宿は男三人、女三人それぞれの部屋へ向かった。



「ショウヤさん、ショウヤさん! 結局どちらが好みなんすか!あの娘達、どっちもショウヤさんに気があるみたいっすけど」

「バッ!!! 何言ってんだよ、マサト! そんなわけ無いだろ!」



 そう、そんなわけない。


 でも、今では一名心当たりがある……。


 そんな事あってはならないのに……。



「おいおい、もうその辺にしとけよ、あまりショウヤを困らすな」

「そんな事言って、タクヤさんも、サヤカさんへの返事はどうしたんですか!?」

「なに!? バカ、マサトてめぇ、知ってたのかよ!?」

「まぁ、そりゃパーティーですからね。あんまり待たせると、サヤカさん可哀想っすよ!」

「ぐぬぬ、そりゃまぁ、そうするつもりだけどよ」



 ヤバイ、誰かこの会話の流れ止めてくれないかな。

 経験ないから頷くぐらいしかできん。





「ねぇねぇ、エルマちゃんにユミちゃん、ショウヤ君を狙ってるんだよね?」


「べっ! 別に私はそんな……」


「もちろんですよ! このユミは、ショウヤ様に身も心も捧げてます~!」



「その潔さ、惚れ惚れするわねユミちゃん。はぁ~私もそんな風にバカになれたらな~!」

「ちょっとサヤカさん、バカってなんですか、バカって……」


「サヤカさんはやっぱりタクヤさんを?」

「うん、でも希望は薄そうだけどね……」

「タクヤさんはモテそうですからね~」

「そうだけど、それだけじゃないみたい。あぁ~、いっそ悩殺して落とすか……」


「悩殺!?」


「タクヤや、ショウヤ君みたいな奥手には、こっちもバカになった方が効果あるかもしれないしね」


「バカになる……」

「ちょっと、エルマさん? なに考えてるんですか~?」




 翌日、俺達はフーレス村へたどり着く。


 しかし、そこには情報以上に何者かの思惑が蔓延っていたのを俺達はまだ、知る由もない……。



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異世界へ飛ばされた殺戮者~死刑が執行されたと思ったら陰謀で無敵の身体と魔王並の魔力を手にし異世界生活スタート~ @jioken

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